==================
「百年文庫(007) 闇」 コンラッド、大岡昇平、フロベール 著
出版社:ポプラ社 ISBN:9784591118894 値段:788円(税込)
- (007)闇 (百年文庫)/ポプラ社
- ¥788
- Amazon.co.jp
あらすじ:「アフリカに送り込まれた貿易会社の二人の社員。出世を夢見て交易所に寝泊りを続けるが…。辺境で「文明」を担った男たちが圧倒的な不安に崩れ落ちていく様を描いた『進歩の前哨基地』(コンラッド)。フィリピンの戦線を舞台に、戦友の心を歪めていく組織悪の根源に迫った大岡昇平の『暗号手』。残虐な欲望に身をゆだね、取り返しのつかない過ちを犯した男が清らかな愛をとりもどすまでの感動の物語(フロベール『聖ジュリアン伝』)。根源に浮かび上がる人間の裸像。」
==================
今回の題材は「闇」。闇というと、「暗い」というイメージが先行します。なにも見えないという感じに思われるかもしれません。今回の題材である「闇」はそういう「暗闇」というモノだけでなく、心情的な「闇」。心に巣くっている「闇」。そちらの方が趣が強いかもしれないです。それでは、簡単に紹介&感想を。
==================
・『進歩の前哨基地』…コンラッドの作品。ぼくの中ではコンラッド=「闇」というイメージが強いのです。闇と言えばコンラッド。コンラッド程「闇」というものが似合う作家さんはいないような気がします。色々と縁のある作家さんです。「闇の奥」という作品も「闇」をテーマにしているんですよ。今回の舞台同様こちらも「暗黒大陸」を舞台にしているんですけどね。暗黒大陸というのは未開の土地という意味で、主に「アフリカ」とかを指します。コンラッドは「暗黒大陸」というような「物理的な闇」(というのも変な言い方ですが)と心理的な闇(発狂とか負の感情)の2重の意味を「闇」というものに持たせていて、今回の短編でもそれがいかんなく発揮されている。
2人の社員が段々と発狂していく様は、短編ながらもぞっとさせられます。これをさらに発展させているのがおそらく「闇の奥」。コンラッドの作品とかもそうなんですけど、作品の根幹に触れたと思っていていざ言葉にするとすごく軽くなってしまうので厄介。何故、ヒトは暗黒大陸を目指したがるのか、何故そこに行くと発狂するのか。きっとこの作品を読めばその「正体」が分かるはず。しかし、それを言葉にするとなんか「違う」様に感じてしまう。コンラッドの作品は相変わらず難解だと思う。
==================
・『暗号手」…大岡昇平の作品。読みやすかったと同時になんだか戦争とかいう特異な環境下での人間の感情の動きというのは人間の本質がハッキリと出る最たるものだというのを改めて思いました。組織の中にいるとこういう煩わしさっていうものが常に付きまとうのかと思うとなんだか嫌になりました。結果、「偉くなればなるほど、苦しい立場になっていく」というのがなんとも皮肉です。
改めて、戦争っていうのはばかばかしいものだというのが本当によくわかりました。
==================
・『聖ジュリアン伝』…フロベールの作品。はじめて名前を聞く作家さんでした。なんだか、聖書を読んでいるようなそんな不思議な物語。なんだか読んでいて、「ほうほう」と頷きながら続きが気になってドンドン読み進めていくと、このジュリアンの受難の道にドンドンはまっていき、最後のページまで行った時、ジュリアンの人生が波乱万丈でもう何も言えなくなってしまった。
描写が細かくて場面が逐一想像できる。
なんと、この方はボードレールとも親交があったみたいで「ちょwww」となりました。まぁ「惡の華」が好きな自分としてはニヤリとせざるを得ないです。
==================
今回は、こんな感じでしょうか。
次回も、百年文庫でテーマは「罪」。
なんだか、重そうなテーマですが、それでは次回。