落ちた流星を探しに… | 写真家・小澤太一の『logbook』

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小澤太一のなんでもない毎日の記録集

ふたご座流星群で、たくさんの流星が地球に降り注いだ夜のこと……。

 

僕は夜の1時過ぎに宿を抜けたし、月が沈んだ後の真っ暗な中、星の撮影に行きました。

朝6時過ぎまで地面に寝そべりながら、寒いのと眠いのダブルパンチに加え

そろそろ明るくなり始めたので宿に戻ってみると…

 

「流星を探しに行くけど来るか?」

 

ぇ??なんて???

 

流星なんて砂粒とかの大きさがほとんどで、せいぜい大きくても数センチ…

それが地球の空気との摩擦で光って「流星」になるのですが、

それもほとんどが空気中で燃え尽きちゃうんですよね。

 

たま〜に通常の流星よりも明るい「火球」と呼ばれる、

空が一瞬明るくなるほどの流星もあったりするのですが、

それでも全部燃え尽きちゃうんです。

地面まで燃え尽きないで落ちるなんて、本当にすごい低い確率なことだと思うのですが…

 

流星が落ちたって!?

 

たしかに世の中には隕石が存在するので、地球上に燃え尽きないで落ちちゃうのも

ホントにごくたま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜にあるようですが、

まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか…

昨夜のたくさんの流星を見た中での勘違いだろうと思ってその男に聞いてみると、

「昨夜9時頃に、飛行機が降りてくるようなほど明るい流星があり、

ここから30分ほどのところに落ちたようだ。

まだ真っ暗な中から、すでに何人もの人が落ちた流星を探しに行っている。

テントを貼っている人もいるようだ。そうそう、このSNSの写真を見ろ!」

 

と言って見せてくれたスマホの画面には、できそこないの花火写真のような、

なんだかわからない光が写っていました。

たしかに通常の流星とは違う巨大な何かがあったようです。

そして近くに落ちたようだ、というのは、多くの人の情報で周知のことのようでした。

 

まだ夜明け前にもかかわらず、その男にはいろんなところから電話がかかってきて、

どうやら落ちた流星についての情報交換が頻繁に行なわれているようでした。

 

なんだかわからないけれど、とにかく乗るしかないね!!

まだ夜が明けきらない中、車に一緒に飛び乗り、

流星が落ちたとされる方向へ車を走らせました。

人のまったく住んでいない、見渡す限り、草と石がどこまでも続いているエリアを、

いくつかの車が同じ方向に向かって進んでいます。

 

聞くと、すべての車が落ちた流星を探しに向かっている、ということでした。

といっても、どこに落ちたのか誰にもわかりません。

そしてすでに夜通し探していると思われる、テントの団体もチラホラいました。

 

まもなくして太陽が昇って、明るくなってきました。

 

この広大すぎるエリアで、落ちたちっぽけな流星を探すなんてのは、

砂金よりもうんと難しい作業のように思えました。

 

「あちらの方向に見えた」というノマドの情報があれば、多くの人がそちらに移動し、

今度は逆の方向を指しながら「あちらの方らしいぞ!」という情報を得て引き返す…

 

ところどころに停まっている車…すごくゆっくりと進むモーターバイク…

下を向いて歩く人たち…この広大なエリアで、全員が落ちた流星を探していました。

「あの村の住民は、西の方に見えたと言ってた。

そして、西の山に住んでいたノマドは東の方に見えたと言ってた。

つまり、この半径20km以内のどこかに落ちたのは間違いない!!」

 

というかなり大雑把なところまでは特定できたのですが、

そこから先は、見渡す限りの広いエリアに、

10人くらいが散り散りになって下を向いている…のがどこまで続いている謎の光景。

 

 

「とても品質が良い流星は、1kgで300000ユーロで売れるからね。

この車もいくつか買えちゃうよ」

と言うだけあって、たしかに人がいるのが不思議なエリアにいる人全員が

宝探しに夢中です。

 

そして隕石のような石は、見渡す限りに何万個も何十万個も落ちていました。

そもそもこの中で、どれが隕石なのか??どうやって探すのかを聞くと…

「まずは地面に落ちた時に跡が残るから、それを探せ。

そのあとはその周りを探して、黒くて丸くなっている石を探すんだ。」

 

なるほど、たしかにそれっぽい。

 

車を停めては、その周辺を30分ほど探し、

また車を大きく移動させて停めて…の繰り返し。

 

「あそこのノマドがすでに小さいのを見つけたようだけど、

どこで手に入れたのかは教えてもらえないんだよな。

なにせすごく高価だから…」

 

なんていう、まさに都市伝説のような情報もすでに蔓延していて、

なかなか宝探しは思うようにいかないようでした。

 

僕らは昼過ぎまで探したけれど、なんの欠片も情報も得ないまま、退散することに。

思い出といえば、一攫千金の可能性を、万に一つ味わったのと、

ガスボンベで沸かした熱々のミントティーと、

サバの缶詰をパンに挟んだ朝食がたまらなく美味しかったこと。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

夜に再びその男に会ったので情報を聞いてみると、

「まだ誰も見つけてないようだ。

これから1週間も1ヶ月も、みんな探し続けるだろうね」

 

 

果たして隕石探しはいつまで続くのか?

最後には誰かが見つけてくれるのか?

…そもそも流れ星は本当に落ちたのか?

 

流星にはいつも夢があります。