One piece (巻44) (ジャンプ・コミックス)/集英社

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尾田栄一郎さんの『One Piece』を読んでいます。今51巻、スリラーバークを抜けて二回めのレッドラインにやって来たところですね。

今までなかなかブログには書けなかったのですが、そろそろまた感想を書こうと思います。でもこの『One Piece』という作品、いろいろな意味であまりに巨大な作品なので、料理の仕方が難しいなと思うところがあります。今回は、今まで読んだところまででの私のお気に入りのキャラの一人、「ニコ・ロビン」について書いてみることにしました。

それは、ツイッターで『One Piece』のキャラクターで誰が好きですかと聞かれて、特に何も考えずにロビン、と答えたのですけれども、考えてみたら「何でだろう?」と思ったからなのですね。

確かにニコ・ロビンは、美人です。設定では、28歳だと言うことでしょうか。ルフィたち主要キャラは17歳くらいのようなので、かなり年上だということになります。西の海・オハラと言う「考古学者たちの島」で起こった20年前の事件のときに8歳だったので、計算上28歳だな、と思っています。この作品に出てくる考古学者と言うのは、古代文字=ポーネグリフを解読できるということなので、普通の意味では考古学者というより歴史学者だと言っていいように思います。ちなみに、『One Piece』の作品世界では姓、名の順に書くことになっているそうなので、ニコが名字でロビンが名前だということになります。作中の回想場面に出てくるロビンの母親はニコ・オルビアです。

『One Piece』に出てくる、ルフィの『麦わら海賊団』のうち、女性陣はみな「過去のある女」たちなのですね。最初に加わったナミは魚人のアーロン海賊団の測量士をやっていたし、次に乗船したアラバスタ王国の王女・ビビは敵・バロックワークスの内部事情を知る為にミス・ウェンズデーとしてバロックワークスに潜入し、上から9番めのメンバー・Mr.9のパートナーを務めていました。そしてそのバロックワークスのボス・実は七武海(世界政府公認の7人の海賊)の人であるクロコダイルのパートナーを務めていたミス・オールサンデーがニコ・ロビンなのです。そして途中降船し、王女に戻ったビビはともかく、ナミもロビンもそれぞれ背負っていた桎梏、縛られていた鎖をルフィたちに砕かれて仲間に加わっているわけです。そういう意味ではこれは「とらわれの姫君を救う英雄」という物語の黄金パターンを取っているわけですね。

そう、ちょっと脱線しますがこの物語の大事なところは、「麦わら海賊団」は「ボス」と「手下」の関係ではなく、「船長」と「仲間」の関係なのですね。「仲間」になることで「自由」になる。その構造が、この『One Piece』という作品が幅広い支持を得、国民的なマンガになった理由だろうと思います。海賊王になる、というルフィを始め、仲間たちはみなそれぞれに自分の夢を持っているわけです。

ロビンは、ルフィやゾロ、ウソップなどいつもバカばっかりやっている仲間をお母さんのように仕切るナミとは違い、ロビンはいつも冷静沈着、その笑いの渦の中にとけ込むというよりはそれを外から見て楽しんでいるようなところがあります。ナミが太陽であるとすればロビンは月のような位置なのですが、実は結構臆病で普通の人っぽさが基調になっているナミとは違い、多少のことでは動じない冷静さと度胸のよさをもっていますし、「悪魔の実」の一つハナハナの実の特殊能力、どこにでも自分の手足を生やせると言う能力を持っていることで戦闘力も高いわけです。

しかし、なんだかんだ言っても過去の傷=トラウマをに明るく乗り越えて行けるナミとは違って、ロビンは8歳のときにオハラを襲った世界政府=海軍による『バスター・コール』の攻撃の恐ろしさを身を以て知っていて、足がすくむこともあります。「村を救うために」、つまり「人のため・みんなのため」にアーロン海賊団の測量士となったナミにはない、「自分自身が生き延びるために」多くの組織の一員となり、徐々にその組織の恐ろしさは増し、様々な闇を背負い込んで行ったロビンの、複雑な性格がそこに現れているのだなと思います。

考古学者、いや歴史学者であるということは、どういうことなのでしょうか。『One Piece』の世界には、「知ってはならない歴史」があります。そして、そこに秘密がある以上知りたくなるのが歴史学者としての夢であり、知らなければならないと思うのが歴史学者としての使命感だと思います。ロビンはそれに忠実です。しかし何度もくじけそうになります。「私の夢には敵が多すぎる」と。自分の夢、自分の使命を果たすためには、世界を敵に回さなければならない。自分だけならともかく、それに仲間を巻き込ませるわけにはいかない。そう思って、ロビンは自分の夢を諦めるのと引き換えに仲間を助けることを望むわけですね。

ウォーターセブンでロビンを探すCP9に出会うまでは、ロビンは半ば客分として少し距離を置いてルフィたちと付き合っていた感があります。しかしウォーターセブンでCP9に降って、自らの命と引き換えにルフィたちを助けることを望んだとき、隠されていた死への願望が表に出て、ルフィたちの救いを一度は拒みます。しかし自分を懸命に救おうとするルフィたちを見て、初めてロビンは心の底から生きたいと思う。そこが大きな転換点になっているわけです。

次の戦いの地であるスリラーバークでは、それまであまり必要以上に出しゃばろうとしなかったロビンが、積極的に自分の役割を果たして行くようになっています。それは大きな変化ですね。しかしその分、彼女の抱えている「生々しさ」、「闇の感触」は薄くなったかな、と思いました。

しかし49巻では仲間が合体して巨人に対抗すると言う馬鹿馬鹿しい(面白い)作戦には「死んでもイヤ」と加わらなかったり、ここに来てわがままな女王様っぽい、バロックワークスのミスオールサンデー時代のような言動が出てきて、またそちらの方向に性格がはっきりして来て面白いなと思いました。

確かに、麦わら海賊団に加わってからは自分の意志をあまり出さず、おとなし過ぎ、しおらし過ぎ類ん証はありました。そういうプライドの高いところを出して来るのが庶民的なナミとの対比で際立って来て魅力的なんだなと思います。

おそらくは冷静な観察者役として、あるいはルフィたちに足りない知識を披露する役回りとしてのロビンの役回りは変わらないだろうし、ナミとはまた違う女性の怖さ、とそれ故の魅力のようなものを見せてはもらえるのだろうと思います。

『One Piece』のニコ・ロビンの魅力について考えてみました!