ARiA5月号に掲載された、新城一『毒のカナリア』を読みました。

新城さんは、ARiAでデビューした作家さんで、掲載は2作目のようです。ARiAは基本少女マンガ誌なので私が普段読んでいる雑誌とは傾向が違うので的確な批評はしにくいところがありますが、少し同人色があって、でも明るい感じの、割合私が好きな感じのお話を描く方だなと思いました。

他に少女誌で定期的に買っているのは『コミックゼロサム』ですが、私の感じとしてはゼロサムは同人色は弱くて、どちらかというと中二病的な?スケールの大きな話が多いように思います。ゼロサムもすべてを読み込んでいるわけではないのでいろいろ言うのは難しいのですけどね。

新城さんは軍服や19世紀ヨーロッパ的な世界観がお好きなようで、ある意味週刊漫画Times連載の真鍋譲治さんの『重機甲乙女豆だけど』への方向性もあるかもしれません。

舞台はイギリスっぽいどこか架空の国のようです。主人公は舞台女優の金髪のキャメロット。緑髪の幼女のメイド(紅茶マニア)・犬千代と黒髪の背の高い美女(らしき)志摩と暮らしています。異なるタイプの書き込まれた美女を三人出できて、「美女を描きたい」タイプの作家さんなんだなと思います。

キャメロットは舞台では髪をアップしていますが普段は床まで届く三つ編みのツインテール。巨乳で大の骨董マニアという設定です。

犬千代は実は魔女が作った「殺戮人形=人形屋の娘」なので、撃たれても死にません。

「カナリア」というのは人を癒す歌声を持つ金髪の少数民族なのだそうですが、一部黒髪のカナリアがいて、その歌は聴いた人を殺す力を持っているのだそうです。志摩は実は男で、この黒のカナリアだったのです。(つまり女装男子)

この世界では骨董店のオークションでカナリアを人身売買しています。志摩は以前の主人たちをその歌で死なせてきたのですが、志摩を殺人の道具としてでなくまた観賞用ペットにするでもなく人間として扱うキャメロットのために、キャメロットを襲った貴族たちの前で歌うのです。

世界観キャラクターとも設定が複雑で読み切りでは生かしきれてない感じがしますし、もう少しコマの密度が上がるといいんだけどなあ、という感じはしたのですが、とにかく楽しく描いている感じに好感を持ちました。力を入れて描いているコマの美女たちはとても魅力的ですし、明るい雰囲気のキャラクターもいいです。ちょっと描きたいように描きすぎてるんじゃないかという気はしますが、その分作家さんの本質が現れていてそこもチャームポイントになっているように思います。

もう少し初めて読む人にもわかりやすい心理の説明やキャラクターのイラスト的なベストショットがあると、もっと魅力的になるように思いました。

一読者としての感想です。ご自身のサイトを見るとスケジュール的にも不本意な面もあったようなのでもっともっと面白い作品を描ける方なんじゃないかなと思います。

とても可能性を感じさせてもらえた作家さんでした。

ARIA (アリア) 2014年 05月号 [雑誌]/講談社

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