今日は「印刷博物館」に行ってきました。
そこで催された「もじもじカフェ 第46回 『とめる? はねる? はらう? つける? はなす?』」という公演を聴きに行ったのです。
「もじもじカフェ」というのは文字と印刷について市民と専門家・業界人がお茶を飲みながら気楽に話し合うというイベントだそうです。
毎回小さなテーマを設定し,それについて専門知識のある方をゲストとして招待し、最初に基調講演をし、それを受けてみんなで話をする感じで行われている様です。
テーマに関心のある方なら誰でも参加できるとか。
私がこの「もじもじカフェ」のイベントを知ったのは朝日新聞に掲載されていたからです。
新聞は一通り読むので、何か面白いイベントは無いかとかは、常に目を光らせているのですが、今回は「漢字の書き方 とめる? はねる? はらう? つける? はなす?」という非常に興味を引かれる内容だったので、これは行きたい!!と思って申し込みました。
今回のテーマの中心にあるのは文化庁の文化審議会国語分科会漢字小委員会において,「手書き文字の字形」と「印刷文字の字形」に関する指針の作成」の検討の末に出来た「常用漢字表の字体・字形に関する指針」でした。
講師は早稲田大学教授の笹原宏之さんです。
彼はこの指針作りにも参加したそうで、とても面白く、興味深い話が聴けました。
今回のイベントの様子はこんな↓感じで、笹原さんが話をし、左側の方が中央の画面の操作や、司会を担当をして進行する係として活躍されていました。
お話の中では例えばこの指針では例えば「『木』という字の縦画ははねても、はねなくてもどちらでも良い」など、常用漢字の字体・字形を幅広く認めるものがあるという話が出ました。
つまり「木」でも「木」でもどちらでも良い、という事です。
また、『天』の横の二本の線の長さは上が長いのが正しいと私は教わりましたが、昔は下が長いものも使われており、どちらでも良かったのです。
だから今でもどちらでもOK、という事なのです。
私は「天」の文字を小学校で習った際、、「天」の文字は「天国」の「天」だから、天国の方が地上よりも広いから上の横棒の方が下の横坊よりも長いんだ、と教わったのですが、あれはこじつけだったのだろうか?と思いました。
全ての漢字において「とめる・はねる・はらう・つける・はなす」をどちらでも良い事にしよう、という指針を出したところ、「長短はどちらでもいい」などの文言を見て、「漢字の成り立ちがないがしろにしている」などと問題になりました。
しかしこれは指針、それに留まらず漢字に対する誤った理解であったのですね。
昔の方が字に対して自由奔放だったんです。
それがカチッと「ここははねなくてはいけない」とか「ここの縦線はは斜めの線を飛び出してはいけない」とか、堅苦しく教える様になってしまった。
でもこれもまた教える先生によって違ったりしていて、「どっちが正しいの?」状態だったものもあったりして。
例えば「女」という字。
私は左側の様に書きますが、右側の様に書くと教わった人もいるんですね。
出るか出ないか。
PCで変換した文字では出ていませんね。
普段何気なくPCの文字を読んでいるけれど、自分が描いている字と違っていたなんて全く気付いていなかったです。
面白い発見(^o^)
こんな感じで楽しい講演でした。
私は書道をやっているので、はねる、とかとめる、とか、筆で書く時はすごく気を使って書くのですが、行書なんかは書いていてとても楽しいんです。
字が繋がっているから。
筆で書いた文字のはねた先がこっちに繋がって、こういって、ここで曲がってくるりと上に行って…とか、面白くて!!
・・・、ってあまり万人に分かってもらえないんですけれども、書いていて気持ちいいもんです。
だから私ははねたりはらったりとか、普段のペンでの文字でもけっこう書きますけれど、書道の延長線上ですね。
笹原さんは大学教授でいらっしゃいますから、学生にレポートを書かせてそれを読む事も多々ある訳ですけれども、その中で面白い現象を紹介してくださいました。
それは文字を横書きにする際に右側にはねる、というものです。
上↑の字は「テストの 事が」と書かれているのですが、「事」という文字の最後のはねが右にはねているんです。
これは次の「が」に繋げて書くには本来の左にはねるよりも断然効率は良いですよね。
こんな事が起こっているなんて「アリエナイ」と叫びたくなりました((((;゚Д゚))))
この学生の方以外にも右はねしている学生さんがいて、この書き方がスタンダードにならない様にと願うばかりです。
それにしても、笹原さんの方が紹介した学生さんの文字はみんな下手くそでげんなり…。
もっとましな字を書いて頂きたいですね。
せめて教授に提出するようなものぐらいは。
太いマジックペンを持ってくるように、と言われていたので持って行ったところ、会場の最寄り駅から会場に来る途中にある何だったか忘れちゃったんですけど何か「火」が付く用語に使われていたのはどんな「火」という文字だったかを書いてください、というお題が出まして、入場の際に配られた画用紙に聴講している方々がそれぞれ思う「火」という字を書きました。
「火」の一画目と二画目の点々の部分にやはり皆さん特徴がありまして、いろんな「火」がありました。
上の写真を見て頂ければ分かるように、7種類の「火」という文字が聴講者の皆さんからは挙げられました。
私は上の一番右の字を書きましたが、下段の左から二番目の文字を書いた人が一番多く、そしてまた、正解もこの文字でした。
でも、PCの「火」の文字って点々が変な方向を向いてますよね。
普通にペンで書く時にこんな風に書く人って滅多にいないんじゃないかな、って思います。
不思議なものですね。
あとは和菓子の「ようかん(羊羹)」の「かん(羹)」の下の部分の所はどんな風に書くか、というのもやりました。
正解は「美」なのですが、案外「天」とか「大」とかも日常の中で平気で使われている、というお話でした。
そういう細かい所はだいたいでいいよ、っていう感覚が働くんでしょうね。
これもまた面白い発見でした。
さて、休憩をはさんで第二部。
PCではさいたまの『さ』の字の二画目と三画目が繋がっているのは気付いていましたか?
普通は『さ』って離して書いてますよね。
『さ』と『さ』はデザインの違いと捉え、同じ字と考えます。
どっちかだけが正解じゃありません。
「さいたま市」の「さ」は繋げる「さ」を推奨している様ですが、でも笹原さんに言わせればどっちでもいいんだそうです。
デザインの違いです。
角張った字と丸文字との違いとおんなじ様な問題です。
あと、個人で文字を作ってもいい、というお話もありました。
何かを表すの適当な言葉が無い場合、個人文字として自分で文字を作っても良いのだそうです。
例として「腺」という文字を挙げていましたが、これは元々は江戸時代後期に蘭医の宇田川榛齋(玄眞。1769- 1834年)が訳に用いた造字・造語で自ら使用した文字だったのを、広く皆が使う様になり、公認の文字になったそうです。
だから自分でも公認の文字になるような新しい漢字を作ってみる、何てのも面白いかもしれないな、って思いました。
まあ、PC時代なので、変換できない文字はなかなか使われそうにないですけれど…(^▽^;)
そんなこんなであっと言う間に時間が過ぎていきました。
新しい発見がいっぱいあり、とても刺激のある内容で、久し振りに頭を使ったなあ、と感じました。
「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告) (案)」は見てみるとかなり面白いです。
ブログでもいくつか画像を使わせて頂きました。
実際にはこの指針の話はもっとたくさん書ききれないくらいあって、本当に面白かったです。
「もじもじカフェ」の聴講者には文字を専門に扱うプロフェッショナルな方々が多くいて、ただの何の特別な職業にも就いて無い私が同じ場で聴講できた事はとても有り難いことだと思いました。
私は今は書道を習う身ですが、いつかはもっと上手くなり、書道家になれれば、と思っています。
いつになるやら・・・ですが。
たまたま今日(2016年6月26日)の朝日新聞の36面に「書道のあした」という記事が掲載されておりました。
タイミング良いですよね。
これを追い風として精進していこうと思います。
佐々木宏之さんには本当に貴重なお話をして頂けて有り難く思いました。
「もじもじカフェ」、また面白そうなイベントがあったら参加したいです。
充実した一日が過ごせてとても良い一日でした。
↓ブログランキングに参加しています。よかったらクリックお願いします。