『デカメロン (中)』 第四日 | 手当たり次第の本棚

『デカメロン (中)』 第四日


四日目といえば、十日間もよおされるデカメロンの、ちょうど中盤にあたるわけだが、そのためだろうか。
今までと流れが少し変わってくる。
たとえば、ここにきて初めて、男が主催者(王)となる。
また、二日目、三日目の、幸せな結末を迎える物語とかわり、テーマを悲恋と指定するのだ。

もちろん、この貴婦人や紳士たちは、ペスト禍から逃れてきたという背景があるから、あまり不幸な物語は喜ばれないだろう。
あくまでも、恐ろしいペストを忘れる事ができるような物語を望んでいると思われる。
しかし、実際の読者にとっては、ハッピーエンドばかりだと飽きてしまうかもしれない。
それゆえの、テーマ「悲恋」ではないかと思うのだ。

また、一方、悲劇というものは、常に心に訴えるものだ。
盛り上がるものなのだ。
だから、ここにも印象的な物語はいくつも語られる事になる。
また、悲劇といっても、血みどろなものではなくて、そこは紳士淑女の物語る内容であるから、それなりに雅やかでもある。

もっとも、愛する者の一部を食べさせるというようなシーンは、日本人にとっては充分残酷ではあるけれど。
心臓を取り出すというようなところは、狩猟を王侯貴族の趣味として行う文化圏では、それほど珍しくもない。


デカメロン〈中〉 (ちくま文庫)/G. ボッカッチョ
1987年12月1日初版