『切羽』〈密命24〉 | 手当たり次第の本棚

『切羽』〈密命24〉



佐伯泰英という作家は、「晴れ」の舞台を描くことが、ほんとうにうまいのだと思う。
どのシリーズにあっても婚礼のような、女性にとっての晴れ舞台が実に美しく華やかに描かれているのだが、一方、男の晴れ舞台も、相応にかっこよく盛り上げていく。
剣術の上覧試合が行われる本シリーズではそれが顕著で、第二回目の上覧試合を前に、なんともかっこよく、物語が盛り上がってきている。

着目すべきは、やはり、惣三郎の愛弟子となった神保桂次郎の存在だろう。
一時は、壊れちゃうんじゃないかと危ぶまれたのだが、がぜんめきめきと成長をみせ、上覧試合を前に凄い武芸者ができあがったようだ。
一方、惣三郎はなにかにつけて、老い、衰えた者として描写されるようになってきていて、長い間父子鷹の様相を見せていた本シリーズは、おそらく上覧試合をもって、次のステージにきりかわるのではないかと想像される。

それにしても、密命といい、居眠り磐音といい、長大なシリーズになったものだ。
こちらも、すでに24巻め。
少年漫画の人気シリーズもかくやの続きようだ。
どこまでつっぱしっていくのか、興味のわくところだ。


切羽 ―密命・潰し合い中山道〈巻之二十四〉 (祥伝社文庫)/佐伯 泰英
2010年12月20日初版(発売中)