『女神さまと私 (2) 』 | 手当たり次第の本棚

『女神さまと私 (2) 』


世にも不細工な猫、ライラ。
異様に目がでっかく、骨張っていて、しかも毛は「けそけそ」。
お世辞にもかわいいとはいえないような猫。
しかし、彼女はエジプトの女神バステトの化身であり、この不出来な器の中にあって、日々、周囲に女神としての力を及ぼし、自らの神権を取り戻そうと、奮闘しているのであえる!

なんといいいますか。
かわいい猫なら、誰でも描く事はできる。
多少の絵心があるならばね。
ゆえに、不細工な猫を愛すべきキャラクターとして描き続けるには、かなりの実力が必要だと私は思う。
ああ、もちろん、ギャグは別。
コミカルな漫画をめざしているなら、もっとやりようはあるだろう。
しかし、これはあくまでも、少女漫画ベースの、シリアスで(たぶん)おしゃれなストーリー漫画なのだ。
そこで、不細工な猫ですよ。
だんだんと、その猫が、美猫になるというのならともかく、ずうっと不細工なまんまなのだよ。
これは、凄い。

一方、ライラが活躍するのは、エジプト学盛んな頃のイギリスであり、その当時エジプトだ発掘だ、といれこむ人々は、大学関係者+金持ち。
ただの金持ちというより、ディレッタントの上流層、多くは貴族だ。
ツタンカーメンの墓の発掘のスポンサーをしたのが、カーナヴォン卿であったように。
このあたりの英国風景といえば、作者の十八番であり、ちょっと風変わりな上流のお嬢さんを、ライラが、「巫女」と定める事によって、ちょっととんちんかんで、なんとも不思議なファンタジイが語られる事になる。

また、イギリス、ことのほかロンドンという街は、どうも「不思議」と縁が深いらしい。
数々の幽霊屋敷があるように、異界と通じやすい場所なのかもしれないな。
だからこそ、ライラのような猫、もとい、女神が活躍できるのかもしれないね。


女神さまと私 2 (フラワーコミックススペシャル)/波津 彬子
2010年7月14日初版