『ヴィンランド・サガ (8) 』 | 手当たり次第の本棚

『ヴィンランド・サガ (8) 』


トルフィンの少年時代は思いがけぬ時に、凄絶な終わり方を遂げる。
ある意味ではあっけない幕切れとも言えるし、所詮、復讐というのはそういうものなのだ、とも言えるだろう。
しかし、アシェラッドが苦笑したとおり、復讐のあとに人はどうするのか、それが難しい事だ。

肉親がただならぬ暴力で命を落とした場合、残された人間の悲しみや苦悩ははかりしれない。
場合によっては、生きる術や生きるよすがを失う事にもつながる。
そういう時に即効性の薬となるのが「復讐」というやつで、それは生きる原動力を与えてくれるが、反面、それに頼り切ってしまった時、「復讐のそのあと」が問題となるわけだ。
まさしく、トルフィンが、それにあたる。

それにつけても、アシェラッドは面白い男だった。
彼自身が複雑な背景を持ち、単なる「ヴァイキング」ではない、とんでもない男だったのだが、こうしてみると、彼はトルフィンにとって、ダークサイドの父親のようなものだったのかもしれないな。
物語が、そのアシェラッドと訣別した事が、残念でならない。
まあ、ストーリー上の必然であった、とは思うのだが。


ヴィンランド・サガ 8 (アフタヌーンKC)/幸村 誠
2009年9月23日初版