『光車よまわれ!』ファンタジイというより幻想文学 | 手当たり次第の本棚

『光車よまわれ!』ファンタジイというより幻想文学


 小学生の時に、確か、図書室でみつけたのが最初の出会いだったと思われる。非常にユニークな、子供向けの幻想文学で、海外のファンタジイとは雰囲気も、何もかもが違う。印象が強いというより、読むと衝撃を受ける、そういう感じがする。

そのせいか、復刊を待つ人は常時おり、古本市場では、プレミアムがついてるのだ。文庫版ですら、2000円、3000円という値段が平気でつけられている(^^;。

最初に読んだ当時は、ぜ~んぜん知らない事だったけど、作者の天沢退二郎は、詩人です。また、宮沢賢治研究家でもある。だからこその、イメージなのだろうなあ、と今にして思うのだけれども、水面下の別世界に潜む、恐ろしげな小人たち。その小人たちと裏でかかわりがあるらしい、謎めいた人々。それらを圧して輝く光車。

光車は、いろいろなところに隠されているのだけど、ともかく、闇夜にも豪華絢爛な、花火を精緻なモザイクで描き出したかのような美しさ。不思議な力を秘めていて、この光車をもってのみ、不気味な小人たちに立ち向かう事ができるらしい。

路上に点在する水たまりのむこうからのぞく小人、うねうねと銀のなめくじみたいな水脈が走り始め、怪しい敵が追いかけてくる恐ろしさ、暗い中、くるくると回される光車の壮麗なイメージ。

なぜか、小人たちと手を結んでいたらしい大人たちが何者なのかとか、光車が実際にはどのようなものだったのかという説明は最後までない。なので、余計に、怪奇かつ妖美なイメージだけが、脳裏に刻まれてしまうらしい。

日本のファンタジイまたは幻想文学で、何を一番にあげますかと言われたら、私は文句なく、これを第1位に推す!

光車よ、まわれ!』(天沢退二郎作 ちくま文庫)

著者: 天沢 退二郎
タイトル: 光車よ、まわれ!  2004年復刊