『竜騎争乱』 王と女王と小姓と侍女 | 手当たり次第の本棚

『竜騎争乱』 王と女王と小姓と侍女

『時の車輪』第8部、『竜騎争乱』。昨日も書いたが、『時の車輪』はどんどん読めてしまうのだ。

まあそれはともかく、2巻の冒頭近くで、元女王が、身分を隠して旅している途中、やむなく、とある貴婦人の侍女になるよう勧められるというシーンがあった(笑)。自らのプライドを傷つけながらも、それを受け入れる元女王陛下なのだが!

このシーンを見て、思い出した作品がふたつある。両方とも、同じハヤカワFTから出ているものなんだけれども、ひとつは、『リフトウォー・サーガ』。最初の方で、貴族の師弟はすべからく宮廷にあがり(王宮に限らない)、小姓または侍女として勤めながらいろいろな事を学ぶのが普通、という生活が描かれている。これは異世界ファンタジイだけれども、中世ヨーロッパの社会がモデルになっているようなので、中世ヨーロッパならさもありなん、と思ったのだ。

日本でも、平安時代の貴族の生活は、かなーりそれに近いところがあったんじゃないかと。(違うところも多いだろうが)。

で、もうひとつは、『騒乱の国ヴォナール』三部作。こちらはフランス革命時代がモデルというか、フランス革命を模した社会を舞台としたファンタジイだけれども、最初のところで、地方の貴族の娘がお供の小間使い(領地の百姓娘)を連れて、宮廷にあがり、侍女となる。すると、かの小間使いが、「お嬢様は、あたしがお嬢様に対してするのと同じ事を、宮廷でなさってるんですね?」と素朴なツッコミをして、お嬢様が猛然と否定するというシーンが、ちょっと印象的だったのだ。

日本では、召使いとか女中さんというと、なんとなしに「下の身分の人」とか、「その言葉を使うのは差別的」っていう意識があるのだけれども
 ↑本来、女中さんというのはむしろ尊敬語だそうだ。差別語だとか言われだしたのは、昭和に入ってから。

実は、召使いとか小間使いは、名門子女がつくにふさわしい仕事、という見方も、ヨーロッパにはあったようだ。実際、近年までも、貴族の執事などは、当主の親族がなったりしていた事もあるらしー。

『竜騎争乱』〈時の車輪シリーズ〉(ロバート・ジョーダン作 ハヤカワ文庫FT)
『リフトウォー・サーガ』(レイモンド・E・フィースト作 ハヤカワ文庫FT)
『騒乱の国ヴォナール』(ポーラ・ヴォルスキー作 ハヤカワ文庫FT)