すべての患者が抱えているもの | 本好き精神科医の死生学日記 ~ 言葉の力と生きる意味

本好き精神科医の死生学日記 ~ 言葉の力と生きる意味

「こんな苦しみに耐え、なぜ生きるのか…」必死で生きる人の悲しい眼と向き合うためには、何をどう学べばいいんだろう。言葉にできない悩みに寄りそうためにも、哲学、文学、死生学、仏教、心理学などを学び、自分自身の死生観を育んでいきます。

「すべての患者が抱えているものがある。
患者のその心を知ることが、患者に優しく接する源となり、医療の原点を思い出させてくれる。
病院で働く者は、その職種に関係なく、全員が知っておかなければならない。
すべての患者が抱えているもの、それは不安である。」


患者は、みんな不安を抱えている。

それは、意識してみると一層よくわかります。

私達はまず、その不安を少しでも和らげる接し方をしなければならない。
最近、そう思います。

そう心掛けることで、多少患者さんが起こっていたり、気むずかしくても、
その背景にあるであろう不安に想いを馳せれば、接し方が変わってきます。



ということで、「不安」について調べてみました。

興味深いのはキルケゴールの、
「不安とは、自由のめまいである」という名言。

「不安と自由」の関係について、次回以降考えてみたいと思います。



以下は、備忘録。




英語版Wikipediaで「Anxiety(不安)」を検索すると、
「Existential(実存)」の項目に、
3人の説が紹介されています。

1つは、デンマークの哲学者、セーレン・キルケゴール。
2つは、ドイツの神学者、パウル・ティリッヒ。
3つは、「夜と霧」で有名な精神科医、ヴィクトール・フランクル。



The philosopher Søren Kierkegaard, in The Concept of Anxiety (1844),
described anxiety or dread associated with the "dizziness of freedom"
and suggested the possibility for positive resolution of anxiety
through the self-conscious exercise of responsibility and choosing.

哲学者のセーレン・キルケゴールは、「不安の概念」の中で、
不安や慄きは、“自由のめまい”と関連していると指摘し、
責任と選択を自覚的に行うことで、その不安は前向きな解決を得られる可能性があると述べている。




The theologian Paul Tillich characterized existential anxiety
as "the state in which a being is aware of its possible nonbeing"
and he listed three categories for the nonbeing and resulting anxiety:
ontic (fate and death),
moral (guilt and condemnation),
and spiritual (emptiness and meaninglessness). (後略)

神学者のパウル・ティリッヒは、
“いつまでも生きていられない、という事実に気付いた”実存的不安を特徴づけ、
やがて必ず死なねばならないことと、そのための不安を3つに分類した。
・存在にかかわる不安(運命と死について)
・道徳的不安(罪悪と、その報いについて)
・霊的な不安(空虚さと無意味さについて)



According to Viktor Frankl, the author of Man's Search for Meaning,
when a person is faced with extreme mortal dangers, the most basic of all human wishes is to find a meaning of life to combat the "trauma of nonbeing" as death is near.

フランクルの著書「Man's Search for Meaning(邦訳:夜と霧)」によると、
人は極度に致命的な危機に直面した時の、
全ての人の最も根源的な願いは、
“生きた意味がない苦痛”と闘うための、生きる意味を探し出すだとしている。