戻ってくる時が一番危ない。 | Fuck Boredom Let's ××!

戻ってくる時が一番危ない。

気がつくと病室にいた。

まだ麻酔は効いているはずなのにひどく体が痛む。


近くのイスに配偶者が座っていた。

赤ちゃんがどんな様子だったのかを訪ねる。

「子供は元気だった、顔は自分とそっくりだった。」 と答える。


まだ自分は顔すら見ていないし、抱いてもいない。

早く子供に会いたくて仕方ない。

やってきた看護師さんに 「子供に会わせて欲しい。」 とお願いする。

しかし待てど暮らせど子供を連れてきてもらえない。

そのうちに面会時間が終わり、配偶者は帰ってしまった。


1人になると不安が襲う。

『今日はもう子供に合わせてもらえないのだろうか…。』 などと考えていると

夜遅くにやっと子供を連れてきてもらって抱かせてもらった。

部屋が暗くてハッキリとは見えなかったけど、

目を閉じて眠っているようだった。

確かに配偶者によく似ている、というか全然自分に似てない。

『確かに自分が産んだんだけどなぁ…。』 と思っているうちに

看護師さんが戻ってきて、子供は新生児室へと連れて行かれてしまった。


仕方がないのでもう寝ようと思ったが、痛くて全然眠れない。

知らなかったのだがお産の後には後陣痛というものがあり

個人差はあるが痛みを感じるとのこと。

帝王切開の人は子宮収縮剤を投与するので

痛みを強く感じる傾向にあるらしい。

不運なことに自分はこの後陣痛が強いタイプだったようで

痛み止めを点滴してもらっても

丸2日間は眠れないくらい地獄のように痛かった。


しかも次の日になっても子供に会うことができない。

帝王切開の人は産後2日間は新生児室で赤ちゃんを預かり

母子同室はできないという病院のルールがあって

ベッドから一歩も動くことができない自分は

もちろん新生児室にも授乳室にも行くことができず

出産当日の夜に10分くらい抱かせてもらった以外は

2日間子供の顔すら見ることができなかった。

(後で聞いたのだが、この週は連休でスタッフが少ないのに

分娩が立て込んでおり、動くことすらできず

子供の世話ができない自分には子供に会わせるしても

看護師さんが最低1人付きっきりにならないといけないので

可哀想だけど会わせることがとても対応できる状況になかったらしい。)


自分と同室の人たちが看護師さんに授乳へ呼ばれたり

赤ちゃんを連れてきて一緒に過ごしたり

自由に子供と会ってるのを見ているのは羨ましくて辛かった。

一刻も早く子供に会いに行きたいが

体の痛みがひどくベッドから起き上がることすらできない。

不甲斐なさや、こんな体で子供を育てることができるのかという不安

痛みはいつ良くなるのかという焦りなど

いろんな感情が溢れてきて辛くて1人になると泣いていた。


帝王切開が楽だなんていう人がいるようだけど

全然そんなことなかった。

あんなに痛い思いをしたことなかったし、

食事はともかく水分が取れないのも地味に辛い、

何より子供に会えなかったことが本当に辛かった。


1人の時はずっと 『今どうしてるのかな、元気でいるのかな、

寂しくないかな、泣いてないかな。』 と考えていた。

自分がいつまでも痛みに勝てないせいで

子供を1人にしていると思うと堪らなかった。


もう二度とこんな経験はしたくない。

しかし、もし次回妊娠することがあったら帝王切開にするよう

先生から強く進められてしまった、絶望だ。