※本稿は9月17日の續きになります。
 
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日本を愛した外國人 27

                  草稿  小林 隆



第一章 日本讃歌 その壱

ヴェンセスラウ・デ・モラエス編 25
 


 



モラエスの日本観  5

(併せてローエルの日本観)





*德島でのモラエス(モラエス記念館所蔵写真)



  

 
 しかし、翻って今の日本はどうでありましょう。


 ローエルやモラエスの言った
 日本芸術や文化は今まさに
 終焉を迎えようとしていると言えはしませんか。



 科学、科学と追いかけてきた
 戦後のツケが今になって未来の日本に
 大きな影を落としていると私は思います。



 モラエスは『日本精神』の中で次のように、
 日本が理想としている西洋文明を語っています。



「ああ、怖い、どんなに怖いことか・・・、

 西洋野蛮人、

 ヨーロッパ穴居人、

 巴里人は・・・・


 この陽気者はパリの生活と
 今の美しい自分の生活を
 とくに愛している。


 時代の移り変わるにつれて、
 われわれがアフリカやアメリカや
 アジアやオーストラリアで
 脅おびやかされる野蛮人は、
 確かにこのヨーロッパ野蛮人とは
 同じものではなかろう。


 ・・・・・・なんて怖いんだ
 ー 道徳的にも肉体的にも。


 肉体的には、
 このヨーロッパ穴居人
けつきよじん
 ひどい肥満、骨ばった長い四肢、
 恐ろしく大きい手足、・・・・。


 そのうえ誰にも会えないような、
 むかむかする悪臭がその手から発散する。


 この容貌は誇張ではないつもりだ。


 ひどい行き過ぎがいつも目につく。


 われわれ白人の多くが(男も女も)
 どんなに醜いか知るがいい。・・・・・・。」






 さらに、モラエスは續けます。



「道徳的には、もっと醜かったろう。
 ぶりぶりしていて、処置が粗暴で、
 しょっちゅう争闘に身構えしていて、
 生活の荒々しさで鋼鉄のように
 強くなっている筋力の自慢。


 風習が、たとえば、
 ある宗教の儀式が
 肯定するように思えるので、
 多分肉食を始める。


 それから、現在のような、
 単なる肉食動物、
 ひどい肉食動物となって、
 野獣を殺して皮を被服の為にしまい、
 残酷にもその肉を、
 まだ半煮えの赤い肉を悦んで喰う。


 まもなく、ある液を酒にする方法を発見し、
 性懲りもなく酔っぱらい続けてゆく。


 女に対しては、さかりのついた野獣で、
 すばしこくて、猛烈で、がつがつして、
 猶予できないし、牡牛のように
 一時の情に駆られて、
 両親から娘を、夫から妻を奪う。」




 これほど辛辣な白人批判を
 私はかつて見たことがありません。


 これに近い表現は
 幕末の志士達の中の
 詩にあるといえばあります。


 藤森大雅という儒者が瀕死の病床で創ったものに



 叱叱しっしっ、叱叱しっしっ

 叉叱叱しっしっ

 汝なんじ、西洋の犬いぬ

 咄とつ

 何なにすれど我が内地を

 横行おうこうする。
 叱叱しっしっ

 天山てんざん是れ絶筆ぜっぴつ




 これなどは、
 西洋人を犬に見立てて
 叱叱と犬を追い払うように、
 西洋人を侮蔑していると言えます。


 この幕末の人達の自らの国に対する
 強烈な誇りを感じられるではありませんか。





 次回に續く