BABYMETALがLEEDSのステージで見せた小さな変容 | たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

趣味的なことを中心に,いろいろと思ったことを徒然なるままに語ります。映画/本/スポーツ/世の中/旅行/音楽(ヘヴィ・メタル)/BABYMETALなど。

2015年8月31日 Text by たろ a.k.a. TAROMETAL

BABYMETALにとって2015年最大のチャレンジと言っていいREADING & LEEDS FESTIVALが終わった。

何の前触れもなく「配信の神」さくらめたるさん(@yui4yuiyui)さんが現地の最前列に降臨し,periscopeという神器を用いて日本で歯がゆい思いをしていたメイトたちにライブ中継してくれたおかげで,およそ4,000人がリアルタイムでBABYMETALのパフォーマンスを目の当たりにすることができた。


BABYMETAL公式Twitterより

2日間に渡るフェスで最も印象に残っているのはLEEDSのステージで3人が見せた積極果敢な「煽り」だ。 これは単に「煽り方が変わった」というレベルの話ではないと思う。「台詞を変えた」「回数を増やした」というだけでは済まされない「特異な空気」が,画面の向こう側には確かにあったように感じた。

そもそも,煽り方を変えるだけなら1日目のREADINGから変えてくるのが自然な流れ。なぜLEEDSで突然変えたのか。しかも,最初からではなく終盤の3曲から。たたみかけるかのごとく観客を煽りまくるBABYMETAL。そこには,明らかに今までとは異なる姿のBABYMETALがあった。

これは一体何を意味するのか。

以下は,そんな変化を目の当たりにした直後の考察である。Twitterに投稿したものを加筆・修正した。

--------------------

超攻撃的なセットリストで,しかも随所に煽りを入れるという演出。きっちりと作りこまれたBABYMETALのライブが変容を遂げた瞬間を目撃したのかもしれない。観客を盛り上げ,自分たちのペースに強引に引き込もうとするその手法は,定型化しつつあったBABYMETALのライブに生々しい臨場感をもたらした。

ライブの魅力の1つは文字通り「ライブ」,つまりライブ感にある。その点で従来型のBABYMEALには物足りなさを感じる人がいたのかもしれない。「いつもの部分」で「いつものように」発生するコール&レスポンス。たしかに盛り上がるし,筋書き通りにすべてが進行するライブに安定感があるのは事実だ。しかし,よくよく考えてみれば,それは「そうなること」があらかじめわかっている演出にすぎない。そこに「魂を揺さぶられるような感動」は生まれるだろうか?「我を忘れて轟音に身を委ねる恍惚感」が得られるだろうか?ちょっと強引かもしれないが,答えは「否」だ。

2015年1月の「LEGEND "2015"~新春キツネ祭り~」を思い出してほしい。"Road of Resistance"でSU-METALが「かかってこいよ~!」と絶叫したシーンに鳥肌が立つのは,それが(おそらくは)SU-METALの内面から自然発生的にほとばしった叫びだったからだ(もちろんそれだってシナリオに沿った演出だった可能性はある。でも私はそうじゃなかったと思いたい)。

観客の様子をほとんど無視してシナリオ通りに進むライブは,時と場合によってはステージと客席との間に透明の壁を築く危険性がある。ステージ上は一見すると熱いが,客席にはどこか冷めた空気が漂っていたりすることがあるのだ。

たしかにBABYMETALのパフォーマンスは圧倒的な求心力を持つため,ほとんどの場合は型通りの進行でもそれほど問題はなかった。しかし今回,REDING & LEEDSという超巨大規模のフェスに出場するにあたり,BABYMETALはテンプレートに乗ったライブでは対応しきれない客層に直面することになったのではないか。特にLEEDSのステージで強くそう感じたのかもしれない("BABYMETAL DEATH"~"メギツネ"と進むにつれて)。

そこでBABYMETALがとった戦略は,3曲目の"Road of Resistance"から親しみやすい感じの煽りを徹底的に入れることだったというわけだ。

"ギミチョコ!!"でのいつもの煽りはバージョンアップし,RoRでもIDZでも3人は観客を煽りに煽った。もちろんそれだって事前に決められたセリフだった可能性は否定できないが,それでも今までのBABYMETALのライブとは明らかに様相が異なっていたのは明らかだ。セットリストだけでなく,メンタルも超攻撃的。ここまでアグレッシブなパフォーマンスを叩きつける3人の姿は見たことがない。

しかもその煽りが自然体。テンションは高いが,その言葉を発する本人の気持ちが乗っていることが聞き手に十分伝わる雰囲気を伴っていたので,観客も自然と盛り上がったのではないか(この辺りは現地の様子を実際に見ていないので想像でしかないが)。

BABYMETALはLEEDSの地でマイナー・モデルチェンジを果たした。

シナリオ通りに進む「MC一切なし」というBABYMETALのステージがマイナー・モデルチェンジし,観客とのライブ感と一体感をより重視した方向へと舵を切ったーー。あるいは,予定調和的なライブから一歩前進し,客席の反応を見ながら押したり引いたりする駆け引きを身につけつつあると言ってもいいかもしれない。いずれにしてもLEEDSでのBABYMETALは,刻一刻と変化する状況に柔軟に対応する,ある種老獪とも言える柔軟性を発揮したのだ。

この小さな変化がこれからのパフォーマンスにそのような影響を及ぼすのか。その答えは12月の横浜アリーナ2days,そして来年4月のWembley Arenaにあるに違いない。