「覇王の家」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「覇王の家」(司馬遼太郎)


家康は、慎重で、狡猾で、計算高い、というイメージが先行しがちだが(実際、特長であることは間違いない)、大胆、図太い、時に勇敢、という面も印象に残った。


天下を取るだけの人物なので、やはりリーダーシップもトップクラスだったのだな、と改めて感じた。



以下、備忘



家康は信長のような卓然たる理想をもたず、日本の社会に何をもたらそうという抱負などかけらもない男だが、しかし自己を守るために自己を無私にするという右のような部分では信長よりもはるかに異常人であるといえた。



かれは不幸なほどに独創性薄くうまれついていた。つねに先人がやった事例を慎重に選択して模倣した。


家康はむしろ独創性をはげしくおそれるところがあった。独創的な案とは多量の危険性をもち、それを実行することは骰子(さいころ)を投ずるようなもので、いわば賭博であった。模倣ならば、すでにテスト済みの案であり、安全性は高い。



室町時代に日本を洗った大航海時代の潮流から日本を閉ざし、さらにキリスト教を禁圧するにいたる徳川期というのは、日本に特殊な文化を生ませる条件をつくったが、同時に世界の普遍性というものに理解の届きにくい民族性をつくらせ、昭和期になってもなおその根を遺しているという不幸もつくった。

その功罪はすべて、徳川家という極端に自己保存の神経に過敏な性格から出ている。その権力の基本的性格は、かれ自身の個人的性格から出ているところが濃い。