「イノベーションとは何か」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート


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情報産業では特に、イノベーションは100人の常識的な秀才よりも1人の変わり者の天才によってもたらされます。

ただ、ドコモのiモードも、ソフトバンクのADSLも、APPLEという会社も、様々な条件が揃って"(本書によれば)奇蹟的"に成功した。なので、狙ってイノベーションを起こすというのはやはり難しい。

少なくとも、みんなで話し合ってコンセンサスを取って、という進め方ではイノベーションは不可能。イノベーションどころか経営スピードで勝負にならない状況になっているように思います。


一勝九敗を許容(むしろ推奨)できる組織と財務基盤をいかにつくるか。




備忘(抜粋)

必要なのは、既存の組織の中で、「発想を転換する」ことではなく、まったく別のフレーミングをする変人が、最後まで自分の思い込みを実行できる環境をつくることである。もちろん、その大部分は失敗に終わるだろう。シリコンバレーのベンチャーでも、成功率は10社に1社もない。しかしその1社が、グーグルやフェイスブックになればいいのだ。

科学の理論が帰納から生まれるのではなく科学者の直観から生まれるように、イノベーションを生むのも統計や分析ではなく才能だから、それを作り出すハウツー的な方法はない。アップルの経営理念は何かという質問に、ジョブズは「本当にいけてる(turn us on)製品をつくることだ」と答えている。要するに「おもしろい仕事をする」というモチベーションによって、アップルは統合されているのだ。

イノベーションの価値が高まっている情報産業では、日本企業のようなコンセンサスで意思決定を行うガバナンスが没落し、アップルやグーグルのように創業者が独断で決めて、彼が間違えたらつぶれるという19世紀型のオーナー企業の優位が顕著になっている。これは最先端のビジネスでは、品質の高さよりデザインの独創性や統一性が重要になっているからだ。

製造業では需要の存在は確実であり、供給側の規模だけが問題だったのに対して、情報産業では供給側の設備の規模よりも需要やイノベーションの不確実性が問題になるのである。こういう場合には、あらかじめ特定の目標を設定して大規模な投資を行うよりも、多くの「実験」に分散投資し、事後的に見直して失敗したプロジェクトから撤退するオプションを広げることが重要になる。


成長のためには「科学者」と「起業家」と「労働者」が必要。(ジャン・バティスト・セイ)








イノベーションとは何か/池田 信夫

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