「グーグル・アマゾン化する社会」 | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

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この本の『はじめに』で提起された疑問
「商品の多様化で利益を得るロングテールは、その裏返しとして、ヘッドという一極集中を招くのではないか」
この疑問は、自分も以前から抱いていた疑問である。
この仮説を、この本は論理的に痛快に肯定してくれた。


当ブログ「ウェブ進化論」 ではこう指摘した。
本業があって片手間にやる仕事と、プロとして「飯を食う」ためにやる仕事、さらには巨額の富を得るに値するトッププロの仕事、にはそれぞれ大きな壁があるだろう。
ロングテール現象が流行っているが、再びトールヘッドに関心が回帰することもありえるのではないだろうか。

また、当ブログ「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン 」 ではこう指摘した。
トールヘッドに相当するベストセラーの販売部数をさらに底上げする事にもインターネットは活用できるはず。尻尾の先端の売れない本1万点を各10部たくさん売るのと、100万部売れる本を10%たくさん売るのは、それぞれ10万部の売上増と効果は一緒だが、後者のほうが案外簡単で現実的かもしれない。

そして、GMO熊谷会長のブログ「Web2.0時代の商売のポイント」
それは、「ナンバー1のサービス・商品を提供する」ということだと思います。「サービス」「商品」「価格」どれを取っても、最高のものを提供する!こんな極めて商売としては当たり前の事が、「Web2.0時代の商売のポイント」です。・・・
この指摘に非常に納得した。

また、本書では、パーソナライゼーションというWeb2.0の特徴の一つについて、ほしい情報を狭める一方で、セレンディピティ(思いがけないものの発見)をなくし、新たな出会いを失うことにつながる、と言う指摘にも、なるほど、と思った。

ただ、最後の最後に、悲観一色に染まることはないだろうと、Web2.0の肯定的な部分も指摘。専門知識を持った人がその知識を惜しげもなくウェブで披露し、情報を得ることが難しかった人たちが手軽に情報に触れられるようになる(知の裾野の広がり)。この傾向はWeb2.0=ユーザー参加型の時代にますます加速度を増していくだろう。と。


以下、個人的備忘録。

発言量の多さに意見が引きずられる
「人は不確かな状況下で何かしらの判断を下さねばならないとき、他人の考えを参考にする。(中略)『ある特定の集団で議論を行い、合意形成を図る場合、(中略)その集団に発言量の多い人がいると、その人の意見に引きずられることがある』」P.223から抜粋

沈黙の螺旋
「反論があっても、書き込む人が少ない。(中略)論争を招く要因になる。副次的に感情的な面倒を抱えることになり、いろいろと厄介な話にもなる。であるなら、コメントなど返さずに黙って流してしまったほうが楽だからだ。」P225から抜粋

多様な情報をすべて読み込むのは不可能

「検索エンジンで3ページ分、30項目以上を見る人はわずか2%にすぎないという。逆に言えば、98%の人たちは、検索結果の上位30項目しか見ていないことになる。いかに多くの人がウェブに情報を投稿し、多様化したとしても、そのほとんどは見られていないのである。」P.235から抜粋


靖国問題
「靖国問題」で検索し上位20件を見ると、(世論は参拝賛成が40-50%と見られるにもかかわらず)参拝擁護の内容が8件、反対・懐疑の立場は1件だった(中立的な内容は11件)。普段新聞やテレビを見ない人が、グーグルの検索結果だけを見て判断すると、世論は参拝擁護だと思ってしまう。P.239-240要約



森 健
グーグル・アマゾン化する社会