平行植物の環世界
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聞いてくれ、アリを食べるクモは思ったよりも少ないんだ

 一日に2種類、蟻を食べるクモを見たのでとりあえずメモメモ。


ガザミグモ
ガザミグモの幼体(?) Pistius undulatus 群馬県前橋市
 おそらくガザミグモの幼体だと思う。蟻を食べるとは知らなかった。
カニグモというのがいて、その中でちょっと横幅があってイガイガしていて、カニの“ガザミ”るから「ガザミグモ」。なんたる短絡的な命名かと思ったら、最初にとある方が「カザミグモ(風見蜘蛛)」と命名したのを、後で「ガザミグモ」に変えたらしい。(ネイチャーガイド 日本のクモより)
 似た種類に「ワタリガニグモ」というのがいるらしく、こちらの命名もすごい。


ボカシミジングモ
ボカシミジングモ Yaginumena castrata 群馬県前橋市
 画面左上にいるのがクモ。こちらは蟻を専門に狩る蟻スペシャリストのクモで、色合いも蟻のよう。こうしてクロオオアリを襲っているのが定番となっている。
発見されたときは大抵この状態なので、蟻をどうやって仕留めているのかが良く分からないらしい。僕は過去に微妙に動いているアリの足先に噛み付くのを見たことがあるのだが、それが最初の攻撃だったかどうかは分からなかった。飼うと分かるのかもしれない。


ボカシミジングモ
 過去に見た捕食シーンでは、足先を噛んで動きが止まったところで、頭に回って触角に噛み付いていた。このボカシミジングモはこの状態で発見され、その後もずっとこの状態だった。

 タイトルの話なのだが、蟻を食べるクモは結構少ない。いや、昆虫にも少ないわけでその理由はやはり蟻酸にあるのだと思う。蟻は捕食者が少なく襲われにくいので、蟻に擬態する虫は多い。蟻酸を持つ蟻の真似をして安全を獲得する、インチキみたいにみえるが強かな生き方だ。僕も治安の悪そうな裏通りを歩くときは、気持ち顔つきを険しくしてヤバイヤツに見えるようにしているから、気持ちが分かる。

牛骨星人は旬の味覚

エゴヒゲナガゾウムシ


 森の中。エゴノキの実がたくさんできている。これを見ると、盛夏もピークに差し掛かっているなと実感する。小さなハエほどの大きさの虫が実の上に集っている様子が見える。もしやと思って近づく。うむ、やはりエゴヒゲナガゾウムシである。じつは生きているのを初めて見る。


エゴヒゲナガゾウムシ
エゴヒゲナガゾウムシ Exechesops leucopis
画面右がメスで、その後方にピッタリと張り付いているのがオス。横から見るとオスメスそんなに変わらぬように見えるのだが。

エゴヒゲナガゾウムシ
オスの顔貌は極めて特徴的。まるで牛骨のようである。オスの眼はシュモクザメのような感じに、左右の出っ張りの天辺についている。

エゴヒゲナガゾウムシ
どうもオスの個体数の方が多いらしく、メス1匹・オス2匹という組み合わせをよく見かける。

エゴヒゲナガゾウムシ
こうなれば当然、オス同士の争いが起きる。牛骨のような頭をぶつけ合うのかな、と観察してみるのだが、多くは「触角を真横に広げて長さ比べをして、長い方が勝つ」という、ぱっと見で結果が分かる予定調和な消化試合ばかりであった。この2匹はかなり体格差があり、結果は言わずもがな。

エゴヒゲナガゾウムシ
当地では個体数が多い虫な様で、秋に向けて育ち盛りのジョロウグモたちにとっては旬の味覚となっている。

クモの世界にも回転寿司はあった!

《クモの世界にも回転寿司はあった!》
 暖簾をくぐって入ると、ガラスケースに入った新鮮な寿司ネタ、その奥には気難しそうな大将が鉢巻をして立っている。そんな寿司屋はデフレで敷居が高くなり、大衆が赴く寿司屋といえばもっぱら1皿100円の回転寿司店である。長引く不況で外食産業が低迷する中、回転寿司店の業績だけは右肩上がりだという。そんな不況の味方、回転寿司がなんとクモの世界にも波及してる。
 クモの回転寿司店は、アミメアリが引っ越しをする際に、期間限定でオープンする。アミメアリが引っ越しの際に作る行列には、時折蟻の幼虫を咥えたアリ(皿)が通るのだという。普段から蟻を専門で食べているアオオビハエトリ氏は、週に5度はこの回転寿司店を訪れるという常連だ。「クリーム色の大きい皿がきたら、すかさず横からとるんです。逃しはしません。普通の蟻よりおいしいですよ。」普段はクロヤマアリやクロオオアリを襲って食べているのだというが、大きな蟻は捕えるだけで一苦労。アミメアリの回転寿司店ならば、リスクなく簡単に、高カロリーがとれるのだそうだ。
 だが、この回転寿司店はいつまでもあるわけではない。アミメアリの引っ越しが終われば、店は畳まれてしまう。アオオビハエトリ氏は新しい店が見つからなければ、またいつものクロヤマアリやクロオオアリを食べる生活に戻るのだという。「ひと時の祭りだと思って楽しんでいますよ。」夕刻、そう言って回転寿司屋を後にするアオオビハエトリ氏の頭胸部縁には、その名の由来であるライトブルーの青い帯が明るく光っていた。(終)

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