川越style「伊佐沼の蓮を咲かそう会」古代蓮を植え付け作業2016年4月3日 | 「小江戸川越STYLE」

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「小江戸川越STYLE」代表:石川真

川越各地の桜が見頃を迎えた先週末、

喜多院、中院、蓮馨寺、新河岸川沿い、川越の桜の名所は多くの花見客で賑わっていました。

川越の桜は市街地を離れれば、歴史ある古い神社や古刹などの桜も市民に親しまれ、

また、川越水上公園や御伊勢塚公園といった公園の桜の迫力も見事で、

公園と言えば、川越東部代表の伊佐沼公園の桜も見逃せない。


伊佐沼公園や歩道沿いに植えられた桜も週末に最盛期を迎えていて、

川越のBBQメッカとなっている伊佐沼公園には

BBQに桜にと、春を楽しむ人でごった返していました。

かたや公園の賑わいを背に、これからの季節のために今から作業する人たちの姿があった。

伊佐沼の風景は、自然のものであり、人の手によって作られているものである。

静かに水をたたえた伊佐沼は、時折風が吹いては水面を撫でて水紋を拡げていました。

 

伊佐沼といえば、7月の古代蓮。

 

可憐な古代蓮を見に、写真に収めに、毎年多くの人が訪れている、伊佐沼の夏の風景です。



(7月最盛期の伊佐沼の古代蓮)

 

農業用溜め池である伊佐沼は、冬の間は水が抜かれ沼底があらわになります。

 

水が無くなると底にいた生物たちが姿を現し、それを狙って水鳥たちが集まってくる。

伊佐沼の冬の風景です。

だんだんと肌寒さが緩んで伊佐沼沿いの桜が満開を迎える4月始め、

伊佐沼はまだ水が抜かれていますが、しかし、

これから始まる今年の田植えを着々と待ち構える時期でもあります。

この週のうちには入間川の水が入り、カラカラだった沼は水で満たされていく。

伊佐沼の春の風景です。

もう水が入れられる直前というこの時期を狙って、伊佐沼の北端に集まっていた人たちがいました。

繋ぎの作業着に軍手、長靴、これから農作業を始めるような格好で

遊歩道の柵をまたいで蓮畑の底に下りていきました。

今の伊佐沼は昨年の蓮が枯れた残骸が沼底にあちこちに残り、

まさに林を掻き分けていくように、蓮の間を沼の中へ中へと進んでいきました。

 

 





 

この歩いている地面が、本来伊佐沼の底であり、今週には水が注がれるという。

底を歩いていると、ここが伊佐沼だという感覚がなくなりますが、

ただ足で踏む底の感触だけは独特で、柔らかく、靴が沈んでいくのを持ち上げながら歩かねばならない。

まるで雪原を歩いているような感覚です。

「ほら、これ」と見せてもらったのは

種がびっしり詰まっていたであろう蓮の花芯、花屋でオブジェとして売られているあの形でした。

 

 



(こちらは昨年伊佐沼で採れた川越産レンコン。唐揚げにすると良いとのこと)

沼の内側まで進んできた面々は、甘酒を口にしながら今日の作業の段取りを確認しています。

2016年4月3日(日)9:00から始まったのが、

「伊佐沼の蓮を咲かそう会」の活動、古代蓮の植え付け作業でした。

(沼底から歩道沿いの桜並木を見る)


 

 

(この日植えつけられる古代蓮)

伊佐沼の夏の風物詩、薄い桃色が咲き誇る古代蓮畑の風景が、

地域の人の手によって作られているということを知っていたでしょうか。

桜と違って、いや、伊佐沼沿いの桜ももともとは植えられたものではありますが、

古代蓮は今でも人の手によって毎年のように面積を広げ、豊かになっている途中である。

今年も沼が水で満たされる前に、新たな場所に古代蓮を植え付け、夏に咲かそうとしていました。

会の活動であり、誰でも参加できるという形にしていて貴重な自然体験となっていました。

すでに会の方で半分ほどの蓮を植えて、残りを一般参加の人に体験してもらおうという内容。

甘酒で温まるといざ作業開始です。

沼底のあちこちに植えつけ用にスコップで穴が掘られ、そこに蓮を入れていきます。
田植えや苗植えと同じく、地道な作業です。










「伊佐沼の蓮を咲かそう会」というのは、

伊佐沼に隣接する自治会の会員が中心になり、
伊佐沼の水質浄化や古代蓮の復活・増殖に努めている任意団体で、22年目を迎える。

100人ほどの会員がいます。

伊佐沼の古代蓮畑は、ひとえに会を中心としたボランティアの人たちの尽力の賜物で、

今年はここ、次の年はここに植え付け、と

つまり、22年かけて伊佐沼の古代蓮畑を作ってきたのです。

蓮が生育しやすい環境を作るために草刈りを行うなど試行錯誤を重ねた結果、

今では水面の1ha 余りが蓮で覆われるようになりました。 

昨年7月の川越市の広報には「伊佐沼の蓮を咲かそう会」の活動が紹介され、

また会の活動は、2016年2月8日には第17回彩の国埼玉環境大賞の優秀賞も受賞しました。





かつての伊佐沼は農業用の貯水だけではなく、泳いだり、蓮の花を取ったり、

地元の人々にとって生活の場でした。

伊佐沼の古代蓮は遡ると、江戸時代に殿様が見に来た記録が残るほど水面を覆っていましたが、

戦後の食糧難で食用にされ激減。

絶滅の危機に瀕していた45年ほど前のこと、

あるきっかけから、古代蓮が見直される契機となりました。

それが、現在伊佐沼公園西の問屋町に拡がる卸売団地建設だったのです。

 

 

(問屋町の卸売団地より。「伊佐沼工房」奥野さんの織物のアトリエから

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11906123312.html

もともと田んぼだった土地の上に建物を建設するため、

伊佐沼の土をさらって盛り土することになった。

港湾・河川・運河などの底面を浚(さら)って土砂などを取り去る土木工事に使われる

浚渫(しゅんせつ)船が沼に入り、

土砂を浚う過程で沼底に眠っていた蓮の種が潰れて芽を出したのだそう。。。

(蓮の実)

それはそれは近隣住民は驚いた。

浚渫船が沼と伊佐沼の歴史を掘り起こし、そこから一時は蓮の花が伊佐沼に増えたのだという。
だが・・・
昭和の終わりごろから水質の悪化などで蓮の根が腐り、壊滅状態に。

平成6年ごろ地元の有志約30人を中心に伊佐沼の蓮を再生させようと、

「伊佐沼の蓮を咲かそう会」を発足して、蓮の花の復活にむけて活動を始めていった。

沼の土を掘り起こし、蓮が発芽しやすい環境を考えて作り、水質改善などを行ってきました。

さらに実験として、伊佐沼北にある農業ふれあいセンター裏の畑を利用して

蓮の種から育てる試みを始めた。

そこで育てた蓮を伊佐沼に移植しましたが、当初はまったく伊佐沼に根付かず苦悩の日々だった。

毎年少しずつその面積を増やしてきました蓮畑は、

移植した苗が波で流されないよう周囲にヨシを植えたり、

根腐れしないよう密集した根を切ったり、

酵母菌・麹菌・乳酸菌・EM菌など微生物による水質浄化実験など地道な活動を重ね、

22年をかけて、今の蓮畑を作ってきたのです。

今では、かつては伊佐沼に多数生息していたタナゴが再び見られるようになってきたのだそう。

 

会としての活動は、蓮の植え付け作業のみならず、

 

伊佐沼周辺の草刈作業は年間を通して行い、小学生の蓮の植え付け体験、

定期的に行っている草刈作業とゴミ拾いは大事な活動で、

綺麗な状態を保っているからこそ、桜やBBQが気持ちよく楽しめることは知っておきたい。

この日も沼に捨てられたゴミを多数拾っていました。

 

夏の草刈は、身長より高く伸びてしまう草も多く、決して楽な作業ではありません。

 



(夏の草刈 松郷の杉浦自動車さんが撮影したもの)

 

伊佐沼周辺の63haの農地や環境を保全するために、

 

2007年には「伊佐沼周辺田園環境保全組合」が発足。

構成員は伊佐沼の蓮を咲かそう会のほか、

荒川右岸用排水土地改良区・伊佐沼作業受託集団・沼周辺の4自治会が参加。

沼を中心とした水質浄化対策、環境対策に地域住民が一体となって取り組んでいます。 

特色ある活動としては、沼に自生していた蓮・ヨシ・マコモの再生のための移植、

沼に生息していたマシジミの養殖、一部農地を利用した向日葵やレンゲの栽培などを行っており、

各活動は地域の交流の場ともなっています。 

また、地元の小学校と連携した稲の栽培体験、ハスの栽培教室、

生きもの調査なども実施しており、地域の子供達の環境教育にも貢献しています。

水質保全対策では、用水路で採取した地場産マシジミによる水槽実験で

水質浄化に大きな効果があることが分かり、昔は伊佐沼にも生息したことから、

伊佐沼内に実験場を設けマシジミを放しました。


伊佐沼周辺というのは川越の原風景が残っている地域。

川越の中でも特に穀倉地帯で、五穀豊穣を願う数々の伝統行事が今でも続いています。
平安時代からのお祭りもあり、古尾谷八幡神社のほろかけ祭、

南田島の足踊り、南田島氷川神社の春祈祷、下老袋氷川神社の弓取式、万作、

伊佐沼に川越ありと言っても過言ではない。

(南田島の足踊り)

 

 

 

 

(「南田島 春祈祷と足踊り」川越の原風景 田植え前に五穀豊穣を願って

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11821079320.html

ちなみに今年の南田島氷川神社の春祈祷は、2016年4月16日(土)です。

伊佐沼に水が入り、これから田植えが始まろうとする時期に、今年の五穀豊穣を願って行われます。

2年に一度山車が地域の人によって曳き回され、今年は山車が出る年。

 

 

(「老袋の弓取式」弓に願いを込めて

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11771637443.html

 

川越のヒーロー「龍忍カワゴレッダー・刃(ジン)」は、
伊佐沼に住む伊佐沼龍の力を現代で受け継いだ戦士、という設定、いや、というヒーローです。

 

(「小江戸蔵里キャラクター祭りReload!」2016年3月19~21日蔵里にキャラクターが勢揃い

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12142912504.html

ちなみに以前、伊佐沼を舞台にして行われた写真の撮影会がありましたが、

その時には伊佐沼公園をはじめ、咲き終わった蓮畑も被写体にしていたことが懐かしい。。。

 

 

 

 

 

「伊佐沼で空と海?の撮影会~@川越」それはまるでアムステルダムのように

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11937659256.html


蓮の植え付けの後は、蓮の実を鋏でカットし、種蒔きも行いました。

 

 


 

これから今週~来週くらいには伊佐沼に水が入れられ、

 

川越は2016年の本格的な田植えシーズンの到来です。

水で満たされると蓮は水面に浮き上がって4月下旬頃に芽を出し、
順調にいけば7月上旬から中旬の見頃を迎えます。

蓮の花は涼しい時間帯の午前7時ごろから10時ごろまでが見頃です。

4月29日には伊佐沼の農業ふれあいセンターで毎年恒例の

「かわごえ春の農業まつり」が開催されます。

「かわごえ春の農業まつり

http://www.city.kawagoe.saitama.jp/jigyoshamuke/business_nogyo/nogyofureaicenter/nogyomatsuri2016.html

伊佐沼の自然を感じながら、蓮の生長を確かめてください。



 

 



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