川越style「TAD視聴会」開催2015年11月22日小江戸蔵里大正蔵 | 「小江戸川越STYLE」

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「小江戸川越STYLE」代表:石川真

14時を過ぎた頃に酒蔵の中に入ると、ランチを楽しむ方でこの日もレストランは賑わっていました。

蔵独特の空気感に、やはり吸い込まれていくよう。

ステージではすでにTADLの技術者がオーディオ機器のセッティングを終了させ、

ようやく一段落したところでした。

この日の準備を伺うと、朝9時に機器を蔵に運び込み、

現場の状況を見つつ手を叩いて音の反響を確認し、床の台を外したり、

機器を設置する位置を調整するなど、ずっと準備に追われていたのだそう。

このイベントを成功させたいという想い、

なにより、いい音を響かせたいという情熱が伝わってきます。

あとは無事に開場の時間を迎えるのみでした。

 

 

 

 


ここは、本川越駅近くにある小江戸蔵里にあるレストラン「八州亭」。

大正蔵と呼ばれるその蔵は、その名の通り大正時代に建てられたもので、

もともとは旧鏡山酒造が酒蔵として使用していた場所。

蔵は音の反響がいいというのはよく言われることですが、

音の専門家であるTADLの技術者川村さんからすると、この大正蔵の反響は、

「天井の梁がむき出しになっていることで、音の反射が良いです」だそうで、

話しながら梁を見上げていた。

例えば、真っ平らな壁に囲まれた空間だと、

音は直線的にぶつかり帰ってくることでグワングワン反射してしまい、いい音環境とは言えない。

平坦な空間よりもこの大正蔵のように、

あちこちに物があったり、斜めになっている場所があった方が音は乱反射するのだそう。

さらに、何本もむき出しの梁が頭上に張り巡らされている蔵内は、

あたかも森の木々の枝が交わるような状況と似ていて、音の反射の仕方が自然なのだという。


スピーカーから出された音は、直接人の耳に入ってくる直接音の割合は実は低く、

多くの音は床や壁、天井で反射したものが耳に届きます。

格子状になっている梁は、梁で反射する音もあれば、格子を抜けて奥で反射する音もある、

その先の梁でまた反射する音もあれば、すり抜けた先の天井で反射する音もあって、と

自然の乱反射がここにある。

もちろん反射する素材も重要で、蔵の土壁、太い柱に天井の梁、

同じものを作ろうとしても作れないからこそ、この建物が貴重なんです。

普段から居心地のいい八州亭の空間は、

会話している時の音の抜け方、反射の仕方、そんな音環境の良さも大きく影響しているかもしれません。

当然、音楽がかかったら堪らない空間になる。


この日TADLが持ち込んだスピーカーは一番コンパクトなもので、

プレーヤーにパワーアンプに、スピーカー二つ。

「コンパクトだけど音はしっかりとしたものが出ます」と話す川村さん。
最近のシネコンなどでは5チャンネル、7チャンネルというように

場内中にスピーカーを配置して迫力を出そうとしますが、
それと比べると二つのスピーカーに心配になるかもしれません。
しかし、そもそも思想が違うというか、
「TAD」が目指しているのは、自然の中でリラックスしながら聴いているという自然の感覚。
2チャンネルだからこその、音の反射を利用して心地よい音環境を作ろうとしていました。


(ちなみにコンパクトといってもアンプだけで100万以上のシステムです)

 

川村さんは朝店内に誰もいない状況で音の反射を確認したそうですが、

 

そこからランチの時間帯になり、人で蔵内が埋まると

「人が着ている服などが音の吸収材となって、音の反射の仕方が変わってきた」

と話していました。

もともと蔵自体音の環境にはいいそうですが、

そこに人が集まることで、より自然環境に近い音になる。

まさしく、機器が作る音だけでなく、蔵という空間、そして人が集まることで成り立つイベントでした。

だから一人でも多くの人で蔵が埋まることを願っていた。。。

2015年11月22日世界最高峰のオーディオで聴く「TAD視聴会in蔵里」

会場 小江戸蔵里大正蔵(八州亭)

料金 無料(1オーダー制)

主催 パイオニア株式会社川越事業所・株式会社TADL

共催 株式会社まちづくり川越

 

日本を代表するオーディオシステムTAD。

 

TADとは川越市で製造され、国内外で称賛を浴びている世界最高峰オーディオブランドで、

パイオニアから生まれた会社です。

パイオニアはオーディオから始まった会社だけあって、今でもその重要さは変わらず、

特に今主力となっているカーオーディオやカーナビのオーディオには技術がいかんなく注がれています。

もともとパイオニアのオーディオブランドは1975年にスタート、

アメリカのレコーディングスタジオ・放送局など業務用スピーカーから始まりました。

長らくプロ向けに製造していましたが、一般向けにスピーカーを展開しようと、

2007年に立ち上がったのがTADです。

その機器にはCDに収録されている音源を100%再生するための匠の技が凝縮されています。

川越の山田にあるのがパイオニア川越工場。

製造メーカーの一般的なイメージとして、

工業製品が製造ラインで大量生産されている絵を思い浮かべますが、

TADの工房では、匠によって機器がハンドメイドで製造されているという

大企業らしからぬ?ギャップがあります。

ネジ一つ締めるのも手で、全ての工程を手で行うため、

アンプなら一日に作れるのは・・・たったの一つなのだという。。。

 

川越の人はあの場所でそのような世界に誇る工芸品が作られているなんて

 

まったく知らなかったのではないかと思います。

少し前にイベント開催までの経緯を記事にしたところ、

「川越で作っていたなんて!」と少なからず反響があり、

まず、川越の人に知ってもらったという意味ではよかったと思います。

 

 

 

 

 

 

(世界最高峰のオーディオで聴く「TAD視聴会」2015年11月22日(日)小江戸蔵里大正蔵

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12095943163.html

一つ一つの部品から手作りで作られている機器。

TADが作った製品はすべて験聴室と呼ばれる上の部屋で視聴され、

専任の技術者が音を確認し、合格を出された製品のみ世界に出荷されていく。

会社として出荷検査室という大事な場所です。

そこで開催された視聴会の音体験は上記に記しましたが、

完全に、平原綾香にフジコヘミング、ベン・E・キングが目の前で歌って、演奏していました。

普段家で聴いているCDや携帯プレーヤーのMP3とは全く別世界の音。

普段聴いているのが、ぺらっとした表面的な音だとしたら、

TADのスピーカーから出てくるのは立体的な音でした。

 

いや、TADから聴こえてくるのも元はCDはCDなんです。

 

ただ、CDにこれだけの音、情報量が入っていることに驚愕する。

逆に言うと、CDに込められたものは普段の音響機器では再現できていないことも実感させられます。

音楽家がここまで細かい部分の音にこだわって曲を作っていることが、

TADだと100%再現されるのでよく分かりました。音楽家の深い想いに触れられたよう。

 

TADLは、川越でいいものを作っているという自負を持ち、

 

川越の街中でこのシステムを使ったイベントなどを開催して身近に感じてもらいたい、

川越を盛り上げたい、音楽文化を発展させたいというのはずっと思っていたのだそう。

そこへ、パイオニアからしたら飯島さんという人と繋がることができ、両者の想いが合致して、

「実際に音を聴いてもらおう」

と視聴会を開催する流れとなりました。

 

飯島さんがこのTADの音に初めて触れ感動したのが、2013年のことでした。

 

川越の人に知ってもらいたいと願いながら、あれから二年、

いよいよ最高の形で川越の街中でお目見えさせることができました。

「どれだけの人が来てくれるだろう。。。」

ハラハラしながら準備を進め、台本を確認する飯島さん。

正直、開催しているこちらにしても参加者数は読めない部分。

場所として最高の酒蔵八州亭の協力を頂きつつも、

本当に席が埋まるのか、数えるほどだったらどうしよう、という不安もありました。

オーディオ好きの人が来るのか、一般の人が興味を示してくれるのか、

初めてのことで掴みにくいところでした。

八州亭のランチ営業が一旦終わると、イベントのための会場設営に取り掛かっていく一同。

 

 


 

 




 

開場の15時が近づいてくると、レストラン八州亭に続々とやって来る人たちの姿が。。。

 

ランチに来た方なのかと思いきや、それがTAD視聴会の参加者だと分かると、

飯島さんから「えええ!こんなに。嬉しい!」と声が上がる。

事前の杞憂をよそに、

15時から予約者と当日参加者合わせてどんどん席が埋まっていく。

気が付いたら満席となって、残念ながら断るくらいまで人が殺到していました。。。

まさかここまでとは。。。

席に着いたお客さんは、料理やドリンクをオーダーし、

イベントがスタートするまでの時間を寛いでいました。

その光景に、これが実現してよかったね!と飯島さんと頷き合った。

なぜ視聴会が小江戸蔵里の大正蔵なのかというのは、ここに集約されます。

酒蔵の中で音楽を流すだけでなく、食事やドリンク・お酒を楽しんでもらいながらゆったりと聴いてもらう。

ブルーノートのような場になればいいと選んだ会場に、

その光景が見事に広がって胸を撫で下ろしました。



15時半、いよいよ開演となりました。司会を務めるのは飯島さんです。

 

「ただいまより、世界最高峰のオーディオTADの視聴会を開催させて頂きます。

 

本日はお越し頂きありがとうございます」

 

挨拶の後にTADLの川村さんとの掛け合いがあり、

 

「まずは一曲聴いてもらいましょう」と紹介してかけたのが、イーグルスのホテルカリフォルニアだった。

TADの視聴会第一曲目として、最も因縁深い曲と言えるものでした。

アメリカで業務用スピーカーを展開していた時代、

イーグルスのメンバーはそのスピーカーをいたく気に入り、PA装置のスピーカーに導入。

イーグルスのワールドツアーで初の日本公演の際、

彼らはそのスピーカーを持ち込み、日本に逆輸入を果たしたのでした。

アメリカで先に不動の地位を確立したスピーカーは、

他にもABBAなどのアーティストにも選ばれています。


ホテルカリフォルニア、曲が始まった瞬間・・・

臨場感ある音に蔵内のお客さんの様子が変わりました。

本物がそこにいるかのような感覚に驚く人、恍惚とした表情を浮かべる人に、

目を閉じて音を噛み締める人。

曲はだんだんボルテージを上がっていく。

お客さんの視線はスピーカーに集まっているのが、よく考えると不思議な光景、

誰もスマホなどいじる人がおらず、BGMとして聴いているのではなく、

イーグルスの演奏にじっと耳を傾けていました。

よそ見なんてしていられないような音の惹き付け、とにかく皆一音に集中していた。

皆が感じている、スピーカーから流れているのはCD音源のはずなのに、

イーグルスが目の前にいるかのようなギャップ。。。

この音に涙を流すのは、そのギャップに感動するのだと思います。


TADの実力をまざまざと実感し、続けて2曲目の解説を川村さんが始める。

「私たちが求めているのは音量、音像、音の正確さなんですが、

この3拍子が揃うことで感動が伝えられます。

その辺りが感じられる曲として次におかけるするのが、アリソンクラウスです」

 

これは始めのギターの臨場感からボーカルの唇の動きまで、

 

はっきりと再現されるところを聴いて欲しいという話しだった。
固唾をのんで見守る場内。

川村さんが再生した途端・・・
目の前に姿はなくとも「ギターの演奏」が始まった。。。

さらに歌は唇の動き、息づかい、溜め息、伸びる高音、ビブラート、体の動きまで伝わってくるようで、

スピーカーから届いてくる情報に脳は、完全にアリソンクラウスがそこに居ると伝えていた。


続いて3曲目としてかけたのが、

「新日本フィルが演奏する『スター・ウォーズ』のメインテーマをかけたいと思います。

これは迫力ある音の裏にトライアングルがチンチンチンと鳴っているので、

そこをぜひ聴いてみてください。通常のシステムではまず聴こえてこない音なんです」

 

小さい音でも全て再現するTADの実力が感じられる曲でした。

 

 

3曲ほど聴いた後に、司会の飯島さんから

 

「お持ちになったCDがありましたらおかけしたいと思います」と案内される。
この視聴会では、お客さんが持ち込んだCDをかける時間も用意していました。

普段家で聴いている音楽が、TADのシステムで聴くとどんな風に聴こえるのか??

それは好きな曲かもしれないし、思い出の詰まった一枚かもしれない、

来場者の多くはCDを持ち込んでいて、次々に手が上がる。
バイオリンの曲、カーペンターズの「Sing」、

「エルガーの愛の挨拶」のバイオリンにうっとりし、

サザンオールスターズの「いとしのエリー」の桑田さんの声に驚愕する。

TADでボーカル曲を聴くと、人の生身感が凄い。

特に桑田さんの歌だと際立つようで、最後の叫ぶ部分など鳥肌もの。

あの有名なCDに、本当はここまでのものが詰められていたなんて。。。

さらにCMでお馴染み「伊右衛門」の曲の重層感に圧倒され、

持ち込んでもらったことで、いろんなジャンル、多種多様の曲がかかっていきました

 

その後はまた、TADセレクトの曲をかけていくことになり、

 

「TADは全ての音を出し切ると謳っているので、こんな実験をしてみようと思います」と話す川村さん。

そう、面白い試みをこの日用意していて、

それは、利き酒ならぬ利き曲。

お客さんが普段聴いているであろうMP3の音とTADの音、

同じ曲を続けてかけて、どれだけ音質が違うのかというのを感じてもらうものでした。

MP3のような圧縮音楽は、どこでも手軽に聴くことができるという利便性がある一方、

圧縮する過程でいろんな音を消して、

大きく叩いている太鼓の横で小さく鳴っているような繊細な部分はばっさり切っている。

それは、元の音源を10分の一ほどまで圧縮しているのだという。

それに対し非圧縮のCDをTADでかけると・・・どう聴こえるか。

選んだ曲は皆さんどこかで聴いたことがあるであろう、中島美嘉の「雪の華」でした。

始めにMP3をかける。

次にCDをTADで。

先に聴くMP3も、音自体というより蔵の環境もあって、それはそれでいい音のように聴こえた。

しかし続けてTADでかけた雪の華は、まったくの別の曲といえるほど差がありました。

両者を聞き比べると、MP3は小さくまとまって広がりがない。。。

音量を下げているわけでないのに小さく聴こえてしまうほど。

それに対しTADでは、澄み、大きくしっかりしていて立体的な音を感じます。

音の体格差が全然違い、例えるなら、少年野球とメジャーリーガーくらいの差がありました。

耳で聴く音と全身で聴く音、両者はその違いがあるようでした。



その後も、また面白い聴き方の提案を。

今一般的なCDの作り方として、

いい部分だけのデータを繋ぎ合わせて一曲を作るというのが主流ですが、

アーティストによっては一発録音の臨場感、緊張感、迫力を大事にする人たちもいて、その例を紹介。

一発録音のヒリヒリ感が伝わってくる一枚として取り出したのが、「Mr.Bojangles」


確かに、他のCDとは何かが違う。。。

一発録音の緊張感は、やはりCDに込められていて、

それを再生することができるのだと伝わってきました。

 

最後の一枚に、ベルリオーズの幻想交響曲断頭台への行進。

 

 

いい音楽に酔いしれた時間もあっという間に過ぎ、一時間半になろうとしていました。

 

本当は他にも予定していた曲もあったのですが、

(石川さゆり天城越え、イルディーヴォ、A列車で行こう、など)

またの機会に、ということになりました。

17時。

最後の一曲としてぜひこの曲をかけたいと川村さんから紹介があったのが、

まさにこの日を意識したもので、来場者へのプレゼントといえるものでした。

 

「今日11月22日はいい夫婦の日ということで、最後にこの曲をかけたいと思います。

 

中島みゆきの『糸』です」

 

15時半から始まったTADの世界観が終わると、

 

17時半からはフリー視聴ということで、

レストラン八州亭のディナー営業時にTADがBGM的に音楽をかける予定となっていました。

しかし・・・

参加者の熱は冷めることなく、いや、終わってからこれからが本番とばかりに、

次から次へと「このCDをかけてください!」とCDが持ち込まれ、

気付いたらTAD視聴会が延長開催されているような雰囲気になっていました。。。

聴きに来ただけでなく、皆さん思い出の一枚を持ち込んでくれていた。

川村さんは受け取ったCDを、一枚一枚順番にかけていきました。

最高の音が大正蔵に響き、

CDに込められた思い出がさらに鮮やかになっていく体験となったはず。

コブクロの桜、美空ひばりの川の流れのように、情熱大陸・・・



TADの創設者が、ずっと願い続けてきたことがあった。

それは、『蔵でコンサートをしてみたい』。

2015年11月22日、

TADを製造するこの川越の小江戸蔵里大正蔵で実現できたことを、

きっと天国から感慨深く見て、聴いていたのではないかと思います。

TADの酒蔵コンサートは今回の大盛況を受けて、

また次回も開催して欲しいという来場者の声だけでなく、

TADLも、また開催したいという想いを抱いています。

今後の展開がまた楽しみです。

 

音楽に耳を澄ませる街、川越。

 

TADが川越の街と繋がっていくことで、川越の音楽文化はさらに高まっていくと思います。



 

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