忘れられていた弁天横丁に灯った一つの灯り。
それまで荒れていた建物も、改修し人が住むようになると
弁天横丁に生まれたGALLERY「なんとうり」。
一番街の札の辻交差点から、少し北に進むと右に入口が見える弁天横丁。
その通りを進んだ先に五軒長屋が現れ、
その一軒がGALLERYなんとうり。
大正初期に建てられた長屋を改修し、ギャラリー兼工房として生まれ変わりました。
この建物の改修の様子は、
「弁天横丁 五軒長屋『GALLERYなんとうり』復活までの軌跡 」で伝えさせてもらいました♪
2014年6月25日(水)~6月30日(月)11:00~18:00で開催されているのが、
studio羽65による布展です。
なんとうり完成後の初となる企画展、
studio羽65は、この長屋の改修に参加した山本さん、
そして飯田さん二人によるユニットです。
二人でテキスタイルの活動を始めて30年になります。
Studio羽65の布。
それは、自然の美しさをたたえ、人の心に寄り添うスピリチュアルな布
80年よりユニット『Studio羽65』として活動を開始。
NY、東京・鎌倉・岐阜・島根、山形など全国各地で個展・グループ展多数。
手織りを中心とした布作りと布によるインスタレーションを試みている。
最近では子供、障がいのある人、地域の人を中心にしたワークショップも展開している。
「Studio羽65は布による空間造形をを追求してきた。
私は日々の暮らしの中で自然が持つ簡素な美に驚き、
そして畏敬の念を抱く。その美を翻訳者のように忠実に訳し、
ある時は模倣した。その一枚の布のかたちは、霞のようにもなり、
またある時は粗い樹皮のような表情を持つ。私が求める布空間は、
スピリチュアルであってほしい。
また、それらの布は人々の心象風景に深く寄り添う布であってほしいと願っている。」
これまで、山本さんは狭山緑地の東大和に工房を構え、
飯田さんは軽井沢で、とお互いに工房を構えていましたが、
山本さんは川越に移り住んで、ここがギャラリー兼仕事場兼住居となります。
今までは「森」がテーマに工房を構えていた。
そして呼ばれるようにしてやって来たこの場所では、古い町並みがキーワードになるでしょうか。
作品は基本、ギャラリーでの企画展で発表してきたstudio羽65。
最近まで銀座で企画展を開き、これから伊勢丹新宿店でも予定されています。
川越で上質なテキスタイルを織りなす作家さんが
活動拠点を構えてくれたことが嬉しい限りです。
しかもそれが、古い建物が建ち並ぶ弁天横丁。
古い建物に住みたいという思いと、ちょっとした縁で、
この地に辿り着いたのでした。。。
横丁を歩けば、きっと織る音が漏れ聞こえてくるかもしれません♪
企画展の最中は、ギャラリーとして仕事道具は片付けられています。
二人が織る糸は、絹、麻、ウール等の天然素材です。
糸によりをかけたり、練ったりしてオリジナルの糸にして、
渋木、くるみ、梅などの植物で染めたものを織りあげます。
絹は扱いが大変で高価なイメージがあるかもしれませんが、
二人が織る絹は中性洗剤で洗えて、乾きやすく、なにより丈夫。
バッグやショール、
普段の生活での使い心地の良い布が展示されています。
お二人のテキスタイルは、軽くて手触りが気持ち良くて、そしてセンスがとてもいいです。
作品を見て、これが山本さんの本領発揮なのだと思いました。
今までは、一緒に改修工事をしてきた方で、
和紙を貼ったりする表情ばかり見てきたので、
改めて作品を見ると、遠くの存在に感じてきます。。。
梅やクルミ、その時の季節のものを使って染める。
今までいた東大和は自然溢れる場所だったので、染めに使う材料は山のようにあった。
軽井沢の工房も、大自然の中にある。
糸を染めては干してを繰り返し、一週間くらいかけて色を付けていきます。
それを手作業で織って、完成させる。
一階には休憩スペースがあるので、
企画展の期間中は、ゆっくりしお話を聞くのもよしです♪
山本さん自身が改修に参加しているので、貴重はお話聞かせてもらえるはず。
山本さんが最も深く改修に関わっています。
(この格子がなんとも粋です)
テーブルに敷かれたマットも二人のテキスタイル作品。
なんとうり、やはり、単なるギャラリーとしては見れない。
あの場所がこんなに素敵なスペースになるなんて、と
どうしてもBefor Afterの目線で見てしまいます(*^o^*)
あんなに荒れ果てた状態から、何ヶ月も掛け改修してこの空間が出来上がった。
壁一つ見ても、こんなに綺麗になって・・・や、
ここの左官大変だったな・・・など
作品より気になってしまうくらいです。。。
一番見てもらいのは、入口はいって左右の壁。
左は黒漆喰、右はべんがら漆喰、最高に素敵です。
なんとうりは、企画展以外の時は山本さんの仕事場、住居でもある。
普段は朝から晩までここで制作しています。
すでに住んで一ヶ月にある長屋、住み心地はどうなんでしょう??
「だんだん生活にも慣れてきました。住み心地も良いですよ。
隙間風はあるけれど、ひんやり涼しい感じ。
目の前の通りが学校の通学路になっているので、
朝は小学生に中学生が通って賑やかな通りですね」
と、これまでの生活を話してくれます。
そして、ここに住み始めて地域の方の歓迎の声をよくもらうと言います。
「真っ暗だった長屋に灯りが灯る。地域の方はそれだけでも安心するみたいなんです。
住んでくれてありがとうって言われるんですよ」
だそうです。
確かに、今までの弁天横丁は、かつては夜の賑わいは相当あったでしょうが、
今は夜になれば真っ暗で、近寄りがたい雰囲気だったかもしれません。
そこに人が住み、温かい灯りが付き、生地を織る音が聞こえてくる、
活気的な横丁の変化です。
去年から続いてきた改修工事の様子を見ている方が、
企画展にふらっと立ち寄る光景がありました。
地域の方にも、どんな風に生まれ変わるんだろうと、見守られてきた建物。
山本さんが、「入口に網戸みたいなものがあればいいね」と口にしました。
扉を開くとそのまま外より、網戸があれば雰囲気いいかも、と。
「それなら、これ下げようか」と
入口に下げた絹のスクリーンも自身の作品。
風が通る様子が気持ちいいです。
暑い外から一歩中に入ると、ひんやり涼しい空間。
入口から裏口に風がよく抜け、川越の避暑地と言いたいくらいの気持ちよさ。
こうこうと照らすのではなく、最小限の灯りで照らされる証明がまたいいです♪
古い建物独特な薄暗さを生かしつつ、濃い陰影が癒されます。
外から見た中の薄暗さに足が引かれ、
中から見た外のまぶしさに目が引かれる。
内と外が真逆にくっきりしていました。
静かな時間。居るだけで眠くなる空間。
お二人のテキスタイルは、生活で使えるものの他に、
作品として制作しているものも多数あります。
現代アートのような作品は、一枚一枚の生地を重ねた柱。
二人は職人であり、さまざまな価値を提起していこうとする姿勢はアーティストでもある。
この場所から、作品を通して何通りものメッセージを街に届けていくと思います♪
お茶をいただきながらまったりとし、
ふと、気になっていたことを思い出し訊ねてみました。
GALLERYなんとうり、なんとうりってどこからつけたんですか??
なんとうりという名前、いろんな意味を込めているように感じました。
「私のお祖父さんが俳句をやっていて俳号が『なんり』だったの。
川越には蔵里(くらり)という施設もあるし、同じような語感でいいかなと。
でも、それだけだと面白くないので、みんなでもう一ひねり考えました」
いろんな名前が候補に上がるも、なかなか決まらない状況に、
外を見やると花桃の木が。
ちょうど長屋の目の前にある花桃の木。
この木は川越の隠れた名所で、春になると訪れる方が数多くいます。
この花桃を名前に入れると面白いかも、
なんりに桃を足して、なんとうり、となりました。。。
そして、ここが何通りもの使い方ができる、という意味も込めています。
これから楽しみになる弁天横丁となんとうり。
ここから川越に、いろんな価値や提案を発信していく場所になるはず。
何通りもの道へ展開していく空間です。。。♪
2014年6月25日(水)~6月30日(月)11:00~18:00で開催されているのが、
studio羽65による布展です。
そして、今後の予定は、
2014年7月3日(木)~7月7日(月)で開催される
「My favorite things.」。
これは、改修にあたった川越蔵の会のメンバーが、
それぞれのMy favoriteなものを出品し、展示する企画展です。
個人的にも一品、出品させていただきます。
限られた大きさの「箱」という空間、その中に参加者がそれぞれの思いで
My favorite things.~お気に入りのもの~を表現します。
様々な個性の集まりである川越蔵の会という運動体
その個性が集まったひとつの空間はいったいどんなものになるだろうか?
温かな空気?儚い思い?懐かしい記憶?・・・・
いずれにしても、それはその人のMy favorite things.
お楽しみに♪