川越style「長峰園」茶農家だからできること。そして特別な空間 和芳庵(わほうあん)へ | 「小江戸川越STYLE」

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川越のヒト・コト・モノ、川越物語りメディア、小江戸川越STYLE。
川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

緑色の空間でいただく緑色のお茶。

茶碗を持ち上げる、口に近づける、

少し口に含ませる、ほっと息を吐く、

すべての所作が癒しに繋がるお茶。

 

茶をいただくなら畳の席がいい。

 

それもゆっくり落ち着けるような

喧騒から離れた場所があればなおいい。

 

「色の静岡 香りの宇治 味の狭山」

 


一口、一口、すするごとに

地元にこんなに美味しいお茶、茶畑があることを改めて実感しました。

隠れ家的な異空間で、特別な時間に浸ることの幸せ。。。


川越の一番街。
 

蔵造りの町並みを眺めながら歩くと、ふと、通りに漂う香ばしい香り。

いつの間にか一番街の北の端、

札の辻交差点まで歩いて来たことに気付きました。

 

香りが鼻をくすぐり、我に返り香ばしい元を探る、

 

辿った先にあるのが

店頭で炒りたてのほうじ茶を提供している「長峰園」さんです。
 

札の辻交差点にあるお店は、もともとあった旧呉服店を改装した建物で、
明治の建造物をそのまま生かした造りです。
1階が店舗売店、2階が喫茶室。

一番街に来る人にとって、今やお馴染みとなった長峰園さんの炒りたてほうじ茶。

通りを歩く人が「いい香りね」と足を止める光景は見慣れたもの。

香りに癒され、この香りに癒しを感じることで、自分が日本人であると再確認するよう。
 


  
ほうじ茶の香りに誘われてお店に足を踏み入れると、

充満している癒しの香り。

長峰園さんには、様々な種類の茶葉に狭山茶を使ったお菓子が並び、

お茶を愛する人が集まる空間です。

ここで扱うのは、自分たちの畑で作る狭山茶のみ。
 

長峰園さんは、創業60年以上で3代続くお茶農家。

茶畑は、鶴ヶ島・日高に6町歩(東京ドーム1.7個分ほど)広がり、

埼玉県の中で、一所有者が持つ畑としては最大です。お茶の年間生産量はなんと8万キロ。

畑で作った茶葉を販売する店舗が、ここ川越と鶴ヶ島の2店。

一番街のお店は、2011年3月にオープンしました。

お茶屋さんというのは一般的に、全国の産地の茶葉を扱うお店が多い中、

地元の方にも意外に知られていないのが、

ここ長峰園は自分たちの畑で作り、茶葉にし、自店で販売する

「自園・自製・自販」という形をとっているということ。

他産地では、栽培と販売は別々の会社に分かれることが多いそうですが、

自園・自製・自販という一貫した流れは、意外にも埼玉独特なんだそう。

埼玉は人口も多く、大きな消費地なので、

結果的に狭山茶は地産地消が成り立って

どこで誰が作ったのか、生産者の顔が見える形になっています。

改めてですが、すぐ身近に畑があって、

こんなに美味しいお茶がある地域に住んでいることに感動。

お店は川越最大の観光地にありますが、

観光客に地元の人に、このお店の本当の魅力が伝わっていないかもしれない、

それにあの特別な空間。そこで初めて体験したお茶のことも。至福のお茶体験でした。。。

 

やっぱり香りの効果で・・・と納得したのが、

 

お店の一番人気がほうじ茶であると長峰さんから聞いたとき。

通りに漂っているこの香りのお茶が欲しい、そう言って買う人がやはり多いそう。

ほうじ茶だけでも数種類あって、

店頭で炒って売っているのが炒りたてほうじ茶。

他にも、玄米入りほうじ茶や高級なほうじ茶もあります。
 

そして、壁際に並ぶ煎茶の種類の豊富さに特に目が引かれる。

煎茶だけで、その数なんと20種類。。。

この細分化こそ長峰園のこだわりでもあります。
 


 

パッケージは、鶴ヶ島市に縁のあった切り絵の神様「百鬼丸」さんのデザイン。

もちろん、先に述べたように、様々な煎茶は自社で細かく作り分けていて、

自社で製造するから、微妙なテイストの違いをお茶に表現することができ、

例えば「深蒸し茶」も、新芽の時期によって種類が分かれ、

茎茶に、粉茶、造り込み茶、玄米茶、棒茶、ティーパック、パウダーもありました。

自園・自製・自販ならでは、

まさにお茶の芽を味わい尽くすバリエーション。

 

お茶のお店というと、茶葉の種類は産地で分かれるのを見ますが、

 

一つの畑で、狭山茶だけで、これだけ作り分けている茶農家がいることは衝撃の事実です。

繊細で、奥の深いお茶の特性を熟知しているからこその作り分け、

煎茶の種類の多さに驚きました、率直にそう言うと長峰さんは、

「葉っぱは蒸し方ひとつで味わいが変わるんです」と。

お茶には機械に頼れない製造工程もあり、

長峰さん自身が何時間もかけて手で揉んで作る手もみ茶もありました。

 

幅広く展開するのは、日本人にとって遠いものとなってしまったお茶をまた、

 

身近な飲み物に復権したいという思いがある。

「昔の日本人は、食後は必ずお茶、という方が多かったですよね。

それが日本の文化だた。それがだんだんと急須がない家も増えてきて、

お茶を飲む機会が減っている。このお店が狭山茶の魅力の発信地になればいいなと思っているんです」

 

お茶をもっと身近なものにするために、

 

りんご、いちご、みかん、、ゆず、ピーチ、緑茶のフレーバーのティーパックを開発。
 

 


ハーブ狭山茶もありました。

 

チョコレート、キャラメル、スイートポテト、などほうじ茶のフレーバーティーパックもありました。

全て自身で開発したもの。

こういう発想と行動力が、他のお茶屋さんにない面、狭山茶の伝道店のような存在です。


長峰園の茶畑は、

 

有機肥料の施用、低農薬化など減農薬・減化学肥料と
茶園管理を行った畑で育成栽培した茶葉を使用しています。
自社の持つ製茶工場で揉みや火入れなど全ての製造工程を行う一貫生産です。

(店内に掲げられている茶畑の様子)

 

 

狭山茶畑の一年とは。

 

新茶は、この地域だと4月下旬から5月初旬に採れるそう。

「新芽の香りは特にいいです。癒されますよ」

収穫が終わると、茶の木を膝くらいの高さまで刈り落として肥料を入れ、

夏には堆肥を入れ、害虫駆除。

「暑くて倒れそうになります」と苦笑いしつつ、

35度を超える野外でコツコツと除草を続ける。






 

寒い冬を越え、お茶は1年間育てると170センチくらいにも伸びるのだそう。

 

温かくなれば葉っぱの付け根に新芽が出て、

今年の4月にまた収穫が待っています。

摘んだ葉っぱは、蒸して揉んで乾かして、

これが一次加工品で荒茶になる。

荒茶を大きさ別に分別し、重さが軽いものを飛ばして茎を取り除く、

それで残ったものが煎茶と呼ばれます。

煎茶を火入れして、旨みを香りを高めたものがお店に並ぶことになる。

さらに、これに二次加工の仕上げが加わるお茶もあり、と細分化していきます。




 

 

 





 

 

 

 

 




 

長峰園さんでは、販売しているお菓子も

 

「必ず狭山茶を使うようにしている」というこだわりで、

狭山抹茶を使った五家宝は特に人気商品。

狭山茶ドロップ、狭山茶入りチョコ・ケーキ・クッキー、

フィナンシェ、レーズンサンド、全部長峰園考案のオリジナル品です。
 

 

 

 

お菓子含めてお店に並ぶ商品の全てを、自分たちで考えていることが驚きです。

そこまでやっているお茶屋さん、なかなかない。。。

そして、ここからが

長峰園さんで過ごす特別な時間になります。

知られざる隠れ家cafe。

一番街の喧騒から、落ち着いた畳の空間へ。。。♪

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*

 

二階に上がるのは、一階で靴を脱いで階段を上がっていきます。

 

木の階段から二階に上がると、目の前に広がる開放的な空間。

木枠の隙間から光が射し込み、

床や座席の畳の上にに柔らかく注いでいます。

ふと聞こえてくるのは、水のせせらぎの音。

見上げると100年以上経つ梁が見え。。。

 

階段を上がった先、長峰園の二階にあるカフェが

 

「和芳庵(わほうあん)」です。
 


 

 

 

 

茶農家さんが・・・と何度も連呼していますが、

ここでもやはり、茶農家が直接カフェまで手がけているのが珍しい。(埼玉で2軒しかないそう)

ここでももちろん、長峰園の畑で作った茶葉を

お茶やお菓子に使って提供しています。

 

どこか茶席を思わせるような凛とした空間は、

 

着物で川越に来る人の間に『畳でお茶やお菓子がいただける』と

口コミが広がっている場所。

長峰さんが考えたのは、

「この空間のコンセプトは、お茶を通じてホッと一息くつろげる時間を提供したい」

靴を脱ぎ畳の上に、静かな空間にそっと響くつくばいの水の音。
 


 

 

 

 

カフェで提供しているお茶は、

「ここは、自分たち茶農家がお客様に直接お茶をお出しする場なので、

特にいいお茶を提供しています」。

生産者が自らそこまで言うからには期待が高まり、そして味は間違いありません。

日常で飲めるお茶なら、ここで飲まなくても、と

ここで提供したいのは特別なお茶と時間。

 
・「さやまきっさこ」は、

狭山茶とオリジナルスイーツの組み合わせ。

生チョコ、ギモーブ、クッキー、チョコバーがつきます♪

ちなみにきっさこ(喫茶去)は、

「よう来られた、まあお茶でもどうぞ」という意味。

 

・「さやままっちゃ きぬさ」は、

 

狭山抹茶と狭山茶を練りこんだ最中を合わせて。

 

・「かわごえ茶」は、和芳庵人気のお茶。

 

使用している茶葉は川越市内の畑で、

新茶初期にとれる、品質のいいものを使っています。

狭山抹茶五家宝との組み合わせが合います。

 

・「しずく茶 かなめ」「」火入れ茶 ことぶき」

 

香りが美しい2つを飲み比べできます。

 

頂いた狭山抹茶は、さすが茶農家さんが自信を持って提供しているだけに、格別です。
 

 


お茶請けの「五家宝(ごかぼう)」は、

きな粉ではなく、狭山抹茶が使われています。たっぷり振りかけられた抹茶♪

うん?これはなんだろう。。。

メニューで気になるお茶を見つけました。

「しずく茶」というお茶。初めて聞きます。

「しずく茶はすすりながら飲むんです。

そういうすすり茶は、良いお茶じゃないとできない頂き方なんですよ」

と話す長峰さん。

良いお茶じゃないとできない・・・?

通常のお茶は、急須に茶葉をいれますが、

これは「茶碗」に葉っぱをそのまま入れて、上から熱いお湯を注ぐ。

蓋をしたら、蓋をしたまま口に運び、

少しずらせた隙間からお茶を頂きます。

すするようにして飲むから、つまり、すすり茶。

飲み方も初めて、味も感動的な初めての味。

最初の一すすりは甘く爽やかさが広がり、

二口目には濃い余韻が残る、

すするごとに味の濃淡が楽しめるお茶でした。

 

一杯をあっという間に飲み干し、

 

茶碗の底に香りを放つ茶葉が残りました。

お湯を注いで二煎目をいただきます。

またすすり、すすり、緑の味のグラデーションが楽しめる。

 

長峰さん自身が作ったすすり茶は、特別な栽培方法で作られたものだそう。

 

日光を遮る「被ふく栽培」した茶葉で、

それは玉露や抹茶の作り方と同じ。

日光を遮ると、旨味であるアミノ酸を持ったまま葉っぱが伸びてくる。

それを手で摘んで、手もみして作った茶葉がこれなのでした。

「なにより茶葉の旨味はアミノ酸。

アミノ酸を育てるために丁寧に作った茶葉なんです」

そう力を込めて語っていました。

 

別のお茶請けに、生チョコを。

 

チョコに抹茶がふんだんにまぶしてあり、チョコと抹茶の二つの癒しでした。

 

濃厚な抹茶を感じられ、お茶屋さんと言いつつ、スイーツのレベルの高さに驚きます。

 

今後はかりんとうや、夏には狭山茶カキ氷なども考えているそう。

 

「狭山茶を広めるために、狭山茶を使ったものを増やしていきたい」

狭山茶に懸ける思いは、誰にも負けない長峰さん。

 

お茶を頂きながら、この空間を見回してみる。

 

カフェとして見て他のお店と違うのは、

テーブル・椅子が一個一個独立しているのではなく、

畳椅子が繋がっていて、他の人と椅子を共有して並んで座ること。

居ながらにして場を共に共有する感じになります。お茶の世界を感じられる。

 

畳の一室の奥は、小上がりになっていました。

 

「ここでお手前をできるようにしているんです」

そのために、椅子もテーブルも移動できるようにしている。茶席に早変わりです。

そのために、小上がりの高さまで考えられている細やかさ。

「もっと、お茶に親しんでもらいたいんです」

さらにお茶の淹れ方教室などをこの場で考えているそうで、

お茶を楽しむ初めの一歩として、

こういう場のお茶体験なら、気軽に参加できそうですね。

 

二階から降りる時に、靴を入れる袋をまじまじを見返したら、

 

6種類は川越唐桟で作られたもので、それもオリジナルで作ったもの、というこだわりよう。

思わず小物入れにしてしまいたいくらいの素敵さでした。


 

そうそう、ちなみにお店の暖簾も川越唐桟です。

 

自分たちの畑で作った狭山茶葉を、

お茶とお菓子に使用して提供する、

畑とお店が繋がった、この一貫した形が他にはない長峰園。


埼玉のお茶、狭山茶は、小さい頃から親しんでいました。

美味しい、と結局いつも選んでいるのが狭山茶で、

親しんだ土地で作られたものを美味しいと感じる、

やっぱりそういうことに行き着くんでしょうか??という個人的な話しをした時に、

「例えば同じやぶきた茶でも、他産地と埼玉では味が違う。

産地の製法、木の特性も違って、埼玉のお茶は旨味が強いんですよ」

と説明する長峰さん。

埼玉のお茶は、全国の品評会でも毎回上位に来るほど評価されているそう。

身近であり、質も高い狭山茶。

 

長峰さん自身が手もみしたお茶も、今回品評会で入賞したそう。

 

1キロ摘んだお茶を手もみして、水分を飛ばしたら残るのは200gほど。

「5~6時間手を動かして、残るのはたったそれくらいなんです。

これしか残らない。。。と思うけど、そういうものなんです」

手間はかかるけれど、極上の美味しさはそうして出来るものだ、と。

 

狭山茶カフェに居て思いました。

特別に意識しなくても、お茶を飲むことが癒しで、

お茶にまつわること全部が癒しなんだな、と。

お湯を沸かす、

湯を注ぐ、

しばし待つ、

茶碗を手に持つ、

口に近づけ、少し口に含ませる、

ほっと息を吐く、すべての所作が癒しに繋がる。

 

生活の身近なところに、簡単で最大の癒しがあること。

 

 

「色の静岡 香りの宇治 味の狭山」

 

 

伝統的な美しさ「倭美(わび)」と、

 

お茶のもつ様々効能が生み出す「茶美(さび)」、

地元にある素晴らしいお茶を知ってもらう、そのためのここは、発信地。

自分の畑で作ったものを自分のお店で販売する、
「自園・自製・自販」にこだわってこれからも。。。

 

「長峰園 川越札の辻店」

 

川越市元町2-2-5

10:00~17:00

定休日なし


 

 

 

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