総選挙の最大の争点は原発?消費税?TPP?外交・安保?_02 (前半) | Hidy der Grosseのブログ

総選挙の最大の争点は原発?消費税?TPP?外交・安保?_02 (前半)

総選挙の最大の争点は原発?消費税?TPP?外交・安保?_02 (前半)

 

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20121216日投票の総選挙。   私たちが投票先を選ぶにあたって最も重視するべきなのは、各候補者・政党の原発・エネルギー政策でしょうか?   それとも、消費税率引き上げやTPP交渉参加への賛否、あるいは景気浮揚策といった、経済・財政に関する姿勢でしょうか?   はたまた、各党の外交・安全保障政策でしょうか?

 

上に挙げたいずれの政策分野も、重要です。   けれども、ある1人の有権者が理想としている政策の組み合わせが、ある政党の政策の組み合わせと、完全に一致するとは限りません。   ある1人の有権者の意見が、経済・財政政策ではX党の公約に一番近いけれども、しかし、X党の外交・安全保障政策は、その人の考えとは正反対。   そして、外交・安全保障政策で最も一致するのはY党だけれども、Y党の経済・財政政策は、この人の望む方向とは真逆を志向している。   こんなことは、あり得るでしょう。

 

01」では、もう少し具体的に、国防・安全保障重視のAさん、という有権者を想定して考えてみました。   今回は、原発廃止派のBさんという有権者を仮想して、シミュレーションしてみましょう。

 

「現在停止している原発の再稼働を一切認めず、原発を即時に0とする」ということが可能なのか、Bさんは疑問に思っています。   たしかに、データ上は、原発の再稼働がなくても、今年(2012年)の夏の電力を賄うことができたようです。   ですから、原発維持派・推進派が言いたてている、「原発がなければ、日本の経済は大混乱に陥る」「高度成長以前の生活に逆戻りだ」という主張に対しては、批判的です。   意図的なデマなのか、それとも、無知のなせる業なのか、Bさんには決めかねますが、いずれにしても、「『反原発=亡国』論は、現実とはかけ離れた空論である」と、Bさんは判断しています。   さらにBさんは、「『原発が無くなれば電気代が暴騰』論も、噴飯ものだ」と考えています。   放射性廃棄物の処理費用を無視して「原発は安上がり」という見かけを取り繕っている電力会社に対して、また、原発賛成派の政治家・学者に対して、Bさんは「この人たちは、子や孫、さらに、それに続く世代のことを真剣に考えてはいないのではないか」という危惧を抱かざるをえません。

 

けれども、「すべての原発を直ちに廃炉に」という政策には、本当に何の問題もないのか、今一つ腑に落ちないところもあります。   電力需要がピークとなる時間帯に操業を停止していた工場などがどのくらいあったのか、そして、それがどのくらい従業員に負担をかけていたのか。   また、経済的な損失がどの程度の大きさだったのか。   あるいは、電力消費を控えるあまり、熱中症になって病院に担ぎ込まれた人、さらには、亡くなってしまった人が、例年に比べてどれくらい多かったのか。   そういったデータもなしに、「今すぐ原発をなくしても大丈夫だ」と断言するのは軽率ではないか、とBさんには思えるのです。   原発容認派による「脱原発を主張しているどの政党も、脱原発のための具体的な方法論を提示していない」という宣伝が誤りであり、再生可能エネルギー普及のための手立てをそれなりに詳しく示している政党があるということを、Bさんは知っています。   しかし、元々「数10年かけて原発をなくそう」という大枠の中で組み立てられた構想を「今すぐ」と前倒しするのには、無理があるのではなかろうか。   Bさんはこの点が不安です。

 

「経済的な損失と原発事故を秤にかけるな」という主張があることは、Bさんも重々承知しています。   けれども、人の命を軽視するのではなく、むしろ、人の命を大切に思うからこそ、Bさんは冷静な比較考量が必要なのだと考えます。   放射線を浴びれば、健康に害を受け、程度が甚だしければ、急性障害で死に至ります。   他方、貧困も人の寿命を縮めます。   所得の低い人ほど早死にするということは、各種の統計が明らかにしています。   原発廃止に起因する電力不足が原因で日本の工業生産が落ち込み、ひいては失業者や過重な労働を強いられる人が増え、彼らが長生きできないとなれば、それは、脱原発による間接的な健康被害といえるでしょう。

 

原発賛成派の「原発停止→経済大混乱」説は、悪質な誇張だ、今年の夏の現実によって完全に破綻した、とBさんは結論しています。   しかしBさんは、「原発即時廃棄による小規模な悪影響はありうるかもしれない」とも考えています。   原発稼働によるリスクと原発即時廃止から生じるデメリット、その両者を比較しないことには、「即時0」と「段階的廃止」のどちらが良いのか、決定を下せない。   これがBさんの意見です。   片方に、「めったに犠牲者を出さないけれど、100年に1度、1000人の犠牲者を出すような、方法X」がある。   他方には、「一遍に大量の犠牲者を出すことはないけれど、恒常的に少数の犠牲者を出す、具体的には、年平均20名の犠牲者を出すような、方法Y」がある。   このケースでは、方法Xを採用するべきだ、というのがBさんの立場です。   「ふるさとの町を追われて未だに不安を抱えた生活を送っている避難者たちの気持ちになってみろ」と言われると、Bさんの胸は痛みます。   それでもなお、「ものごとは、情緒的にではなく、合理的に決めなくてはいけない」というのが、Bさんの信念です。

 

Bさんは、「原発の運転を再開して、その後徐々に減らすよりも、このまま全て廃炉にするほうが、デメリットが少ない」ということもありうるとは思っています。   けれども、「確かにそうだ」と結論付けるには、データが足りないと感じています。   原発維持派・増設派にしても、原発削減・廃止派にしても、「必要な調査を行い、結果を国民に公表しなさい」と、電力会社や政府に要求するべきだ。   政策を決めるにあたっては、まずは有権者に事実を知らせるということが前提なのに、その過程をすっ飛ばして答えを出そう・出させようというのは、民主主義の否定ではないか。   Bさんは、そこが不満です。   もちろん、情報公開が不十分であることの最大の責任は、総括原価方式というやり方によって公的な保護を受けているにもかかわらず、「企業秘密」を盾に何でも隠したがる電力会社にあり、また、それを容認する政府・与党にあり、さらには、それを追及しない最大野党にあります。   原発即時0派の政党は、「情報を出せ」と要求しても、勢力が弱小であるがゆえに無視されてしまっているわけで、同情の余地はあります。   が、だからといって、資料が足りないままに結論を急いで良いというわけではない、ともBさんは考えます。

 

にもかかわらず、Bさんは、「比例代表では『再稼働No。 全原発を直ちに廃炉へ』派の政党に投票しようかな」と思案しています。

 

というのは、段階的廃止派の諸政党が、今宣伝していることを選挙後にも本当に守ってくれるのか、信用ならないからです。   まず、与党ですが、前総理のときには比較的明確に脱原発路線に方針を切り替えましたが、現首相になってからは、雲行きがどうも怪しくなり、原発普及の方向で長年活動してきた人を新設された規制委員会の委員長に就けてしまいました。

 

次に、与党を抜けた(前)議員たちと県知事とが組んで結成された政党ですが、大手ゼネコンと親密な関係を保ってきた人々が本気で脱原発を実行できるのか、疑念を抱かざるをえません。   仮に、原発廃止に向けて真面目に取り組むとしても、今度は自然エネルギーが食い物にされるのではないかと、心配です。   原発即時0派のある政党は、“自然エネルギー事業を、過疎地域の経済再生の一つの柱に据えよう”“自然エネルギーを、一部大企業だけにぼろ儲けさせる手段としてではなく、地元経済を活性化させる手立てとして利用しよう”“山間部や海に隣した地域は、自然エネルギーの宝庫だ。 それを、地域の企業、地域で働く人々を豊かにするために生かすべきだ。 それが可能になる経済の仕組みをつくろう”という主旨の政策を主張しています。   けれども、独占的な巨大企業と密接な関係を持ってきた政治家はどうだろうか?   政府や自治体が再生エネルギー産業振興のために財政出動しても、中間搾取(ピンはね)で「上」ばかりが不当な利益を上げ、末端の労働者は相変わらず貧困なまま、そして、その不当な利益の一部が政治献金へ回る。   そんな構図が温存されてしまうのではないか?   「悪意の勘ぐりだ」と非難されるかもしれませんが、Bさんは、そんな懸念を覚えるのです。

 

「即時0路線が絶対に正しい」という確証はないものの、Bさんが即時0派の政党に投票しようという理由。   それは、もう1つあります。   「バランス」「均衡」という観点です。

 

世論調査では、原発に好意的な政党が、つまり、長期にわたって原発推進政策を実行してきた元政権党、そして、2人の()首長が中心となっている政党、この2党が支持率の第1位・第2位を占めています。   原発保持勢力が新しい政府の中心となる公算が、高いわけです。   このような情勢下では、最も明確に脱原発を示している政党になるべく多くの議席を与えることが、原発の存続を食い止めるための一番有効な手段だ。   Bさんはそんな構想を持っているのです。   右向きの矢印を、「原発維持・増設のために働く力」、左向きの矢印を、「原発削減・廃止のために働く力」とイメージする。   元政権党や二枚看板の党によって、右向きの長い矢印が書き込まれようとしている。   それを食い止めるのに有効なのは、その右向きの矢印に対するカウンターとして、最も長い左向きの矢印を当てることだ。   Bさんは、このような感じで、「即時0」を「絶対善」として捉えるというよりは、「原発温存政策に歯止めをかけるために1番効き目のある対抗力」として用いようとしているのです。

 

もちろん、「極端には極端で対抗すれば良い」という粗雑な考えを、Bさんは否定します。   たとえば、近隣諸国からの軍事的脅威が存在するという場合。   「ならばこちらも、軍事力で対抗すれば良い。 徴兵制だ。 核武装だ。 先制攻撃だ」というやり方では、緊張が却って高まるばかりで、むしろ事態は悪化するかもしれない。   あるいは、格差是正の問題。   「公による再分配機能を強化して、あらゆる世帯の可処分所得を一律にすれば(子どもの人数などを勘案しての調整あり)、問題は解決だ」というものではない。   そのようなやり方では、人々の勤労意欲が衰退し、生産性が低下し、結局は、現在以上に貧困問題が深刻化するだろう。   Bさんはそう考えます。   けれども、「原発即時0」政策は、現実に照らして既に考察したように、そこまで破滅的な過激路線ではない。   ポピュリスティックな極端主義とはいえない。   Bさんはこう判定しています。

 

(後半へ続く)


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