この日は、9:30~16:30のスケジュールで、更新研修が二宮にある心泉学園で行われました。

途中に休憩が入るものの5時間みっちりの内容に少々疲れましたが、前回20年に行われたものよりずっと内容も良く、里親どうしの交流がしやすいプログラムで、深い部分の共有ができて、参加して良かったと思います。私なりのまとめと感想を書きとどめておきたいと思いました。

(講師を務めていただいたのは、Ⅰ・Ⅱは佐藤隆司氏、Ⅲは宮島政人氏)

 

プログラムは           Ⅰ 児童福祉制度論 

Ⅱ 里親養育演習(養育上の課題への対応)

Ⅲ 発達心理学

Ⅳ 里親養育研修(グループワーク)

 

Ⅰ 児童福祉制度論 

児童福祉制度論は、「里親」の起源が平安時代にあること。里親制度が最初にできたのは昭和23(1948)年、里親家庭養育運営要綱という今の制度の元になったものが出来たようです。その後、1988年に特別養子縁組制度が生まれ、2002年里親制度改正里親の種類を4つ(養育・親族・短期・専門)に分け、レスパイトケアが誕生し、2004年児童福祉法改正を経て、2008年のさらなる里親制度改正によって、養育里親と養子縁組希望里親の区分、支援の法制化、研修の義務化、里親手当の引き上げ、ファミリーホーム制度の誕生となったとあります。

話を聞いて、やはり歴史認識も大事だと思いました。ただ、ずっと説明を聞いていると、例えば専門里親資格に「虐待された子ども」だけでなく、徐々に「障害をもつ子ども」も加えられ、付加される条文は里親の了承も得ないまま、里親にいろいろなことを押しつけているようにも感じられ、行政人の身勝手さを感じないでもなかったです。特にグループワークで「措置後の子どもをどう支えるか」という最も大事なことに多くの不安や子どもへの思い、心配があることを伝えたいと思います。行政の縦割りの隙間を埋めるのは、横のつながりであり、その役目を里親はもちろん、里親専門相談員に期待するところです。もちろん、児相と共に。

 

Ⅱ 里親養育演習(養育上の課題への対応)

次は、制度ではなく、日々の家庭養育についての注意点を中心に具体例を○×のクイズ形式でグループ別に対抗戦で行いました。内容は、家庭養育運営要綱、里親等家庭養育運営要綱、児童福祉法、里親委託ガイドラインなどからで、最低限意識しておいて欲しいことを中心に出題されていました。里親の多くは、活字の多いこうした条文や冊子をもらってもほとんど読むことはないと思うので、今後の研修では、児相として言いにくい注意点や罰則をサクサクと具体的にわかりやすく解説してほしいと思います。また、法令と「児童福祉マニアル」や「里親制度ハンドブック」などの位置づけや出来た過程を説明してほしいです。くれぐれも本を一冊渡したからといって「読まない方が悪い、もしもの時は里親に非がある」ということにならないように、児相には普段的な意識向上の指導と、里親も報告義務などへの点検を再度した方がいいと思いました。

 

出題のポイントは、「里親が行う養育に関する最低基準」を里親は満たすことや、手続きや資格用件だったように思います。「社会的養護の課題と将来像」の話もありましたが、これはあくまで国の理念や方向性を示すだけのものであって、具体的なものはほとんど出来ていないのが現状のようです。

 

Ⅲ 発達心理学

お昼をはさんで、児童心理士、子どもの代弁者として子どもの支援に当たっている宮島氏は、「子どもへの理解」を中心にお話しされました。大事なのは、「ポジティブシンキング」。日本の教育が、100点からマイナスしていく減点法であることから、日本人の意識は「欠点探し」へ向かい気味、プラス思考・加点方式の外国とは違うことを気付かされました。

子どもの発達段階と欲求ピラミッドを解説してありました。乳幼児は生理的欲求や安全欲求、小学生になるにつれて愛情や所属欲求、中高生になると承認欲求や自己実現欲求を持つということです。見守る大人はそうした理解があった方がきっと自分も余裕を持って子育てに当たれると思います。

後半は、2人ペアになって自分の欠点を3つ挙げ、それを相手にポジティブシンキングで褒めてもらう演習をしました。他に先日の傾聴講習でも言っていた「話を遮らず、最後まで聞く」ことも子ども対話で大事。子どもにとって「理解してもらっている」という安心感が、自尊心や自己肯定に繋がり、さらなる意欲の発展の元になっているようです。

あと、コミュニケーションの情報源について興味深い数値を紹介されました。それは、

「目からの情報」(身だしなみ、表情、視線、しぐさ)・・・55%

「耳からの情報」(声の質、大きさ、テンポ)・・・33%

「言葉」(言葉のもつ意味)・・・7%

 

半分以上は、出会って顔を見て受け取るものなのですね。ブログやメールなどの活字情報は7%に過ぎないわけで、ちょっとガッカリでしたが、(しないよりは発信した方が良いと思い直し)出来る限り足を使ってフットワーク良く出掛けようと思いました!

 

Ⅳ 里親養育研修(グループワーク)

2時間枠のグループワークは、今回参加の中央、相模原、小田原、川崎などからの参加者が入り交じって7,8人の5グループで各々「利用できる社会資源・制度について」「里親同士の様々なつながりについて」「関係機関との関わりについて」の3つの中から1つテーマを決めて、付せんを貼りながら意見集約をしていき、意見は「安心なこと」「心配なこと」「これからできたらよいこと」に分類され、最後に発表者が全体会で発表する方式で行われました。私たちのグループは、「里親のつながり」を選びましたが、全体的にも他2組が同じテーマ。残る2グループは「関係機関との関わり」でした。

全体会で、「里親のつながり」で「安心なこと」は、里親間の子育ての悩みや体験の共有が大事、所属地域の里親会だけでなく、隣近所の里親会との交流もいい。親戚付き合いみたいな交流、親父里親の飲み会、レスパイトをし合って互いの子どもを知る等々。多くの里親がつながりを求めていることがわかりました。「心配なこと」は、里親によっては仲間に入れないと感じる人もいて、養子縁組希望者や未委託の人にも配慮が必要だと思いました。また、中には中傷する人もいて、個人情報保護の規定を各里親会で考えた方がいいという意見も多かったです。「これからできたらよいこと」には、里父の飲み会は会の強化に繋がる。里親の拠点があるといい。レスパイト制度の活用。地域を越えた勉強会の開催。・・・などでした。小田原の里親会は、すでに拠点があり、月2回来たい人が来たい時に自由に集まれるそうです。 

一方、「関係機関との関わり」についての「安心なこと」は、児相の支え、学校や病院の理解ですが、これは同時に人や学校によって逆転して「心配なこと」になり、連絡・説明の不足、配慮の無さを示しているようです。「これからできたらよいこと」は、担当が変わるときの充分な引継、里親制度の教育機関や医療機関への研修を進めることであり、「社会が里親制度を正しく理解していくこと」であると結んでいました。

 

また、3年前にできた「里親専門相談員の役割が見えない」という意見についても「どんどん注文してください」とのことで、せっかくできた役割が機能しなければ無くなってしまう可能性も出てしまうそうです。里親専門相談員は、里親・施設・児相の接着剤役として、児相職員より長年この仕事に従事している専門性を生かして、さらなる情報の蓄積と発信を里親と児相職員にしてほしいと思います。里親会の会合にはでてくれていますが、会に所属していない里親家庭へも訪問をして、里親の心境の把握をしてほしいと思います。里親の孤立を防ぎ、子どもの安全と健全な成長には、人との関係性の構築が大事です。よろしくお願いします。

 

最後に、課題にはない大きな問題。それは、措置後18歳以降の自立支援の在り方でした。行政としては、範囲外としたいところで、あまり問題にしたくないところかもしれませんが、里親にとっては大きな問題です。それは、この時勢を思うと、感情的に「はい、さようなら」と言い難い環境だからです。これは、里親会がまとまって政府行政に発信していく問題だと思います。今回も本当になかなかできないような個人的支援をされている里親さんの話を聞き、「個人に頼るべき問題か?」とつくづく思いました。

 

社会的養護の子どもは、学力も乏しい子どもが多く、社会で生きて行くには厳しい状況なので、生活保護を受ける割合が多いと聞きます。一生納税者になることなく、税金を使う人をつくっていいのでしょうか?「社会的養護の課題」とは、目先の数値を追うことでなく、何十年か先を見据えた大きな視点で、多くの心ある大人が懸命に考えていく必要のある大きな課題だと思います。