客観的に見れば、僕とGさんは釣り合うはずだった。だからこそ、双方納得した上でお見合いをしたのである。さらに、その1年少し後には偶然にもお見合いパーティーで出会った。約30人お見合いした中でそんな偶然が起こったのは、このGさんだけである(お見合い後に別の相談所でその人の釣り書を見たことが一度だけあった)。それでも、彼女は僕を選ばなかった。婚活が終わった今振り返ると、僕はGさんのような「中の上レベル(アッパーミドルクラス)」の女性と、数多くお見合いをしたが、ほとんど交際を断られた。つまり、客観的には釣り合っているといくら僕や仲人さんや親が思っても、「中の上レベル」の女性側がことごとくお見合いで僕にダメ出ししたのである。もちろん、僕にも何か悪いところがあったのだろうと思うのだが、「中の上レベル」の女性たちにも問題があったと、僕は思っている。


 彼女たちは、世間的に見て釣り合うと思われる自分と同じレベルの男性では満足せず、さらに上位レベルを目指しているようだった。しかし、お見合い市場にはもともと上位レベルの男性は少ない(できる男は20代でさっさと結婚している)のに加え、上位レベルの男性はもちろん同じような上位レベルの女性と結婚するので、自分と同じレベルの男性で満足しない「中の上レベル」の女性たちは、永遠に婚活市場を漂い続けることになる。


 それならそれで漂っていただいて結構なのだが、なぜ「中の上レベル」の女性が次々と僕とのお見合いを了承しながら、交際を断ってきたのかが、いまだに分からない。お見合いの申し込みを断られるのは、仕方がない。僕の年収は普通程度だし、長男だし、特にイケメンというわけでもない。先方にだって、条件はあるだろう。それなら最初からお見合いを断ってくれればいいのだ。お見合いを受けられた上で交際を断られるというのは、非常にダメージが大きいのである。


 何度もお見合いをしている婚活者としては、お見合いの申し込みを受けてくれた時点で、「今度こそは」とかなり期待している。ここに至るまで、仲人さんから釣り書・写真を郵送してもらい、選んで、申し込んで、OKが出て、お見合いするまでの時間、お見合い料などの費用、労力が、過去にお見合いしてきた人数分だけかかっているのである。そして、お見合いでは、誠意を持って相手の話を聞こう、自分のことも話そうと、かなり気を使っているのである。実際のお見合いが終わった後では、「写真ほどかわいくなかったし、特に会話が盛り上がったというわけでもないし、釣り書・写真的には僕の方がやや上ぐらいなのだけれど、あれこれ言っていたのではいつまで経っても結婚できないので、それでも構わない。何とかこの人で決まって欲しい、いや今度こそ決まるだろう」と思っていると、先方があっさり断ってくるのである。


 お見合いを断るのに理由は言わなくて良いので、なぜ断られたのかは永遠に分からない。考えられるとすれば、釣り書・写真の時点ではOKが出たのだから、実際に会った僕の印象が悪い(身だしなみ、表情、しゃべり方、態度など)か、話した内容がまずい(相手の気に入らないようなことを言った)ということになる。つまり、僕の態度やしゃべりが悪いということだ。しかし、僕自身は仕事柄、態度やしゃべりが悪いわけはなく、むしろ良いと思っている(少しおしゃべりな面は確かにある)。それでも、親や仲人さんから見ると、悪いのは女性から断られるような男(僕)だ、ということになってしまうのである。以前にも少し書いたが、母親からは「男のくせにしゃべるからだ」「言わなくてもいいようなことをペラペラしゃべるな」とよく注意された。また、仲人Bさんからは「高圧的な態度で女性に接しているのではありませんか。女性にはやさしく接しなければいけません」と、全く根拠のない憶測で(仲人Bさんは僕のお見合いに同席したことは一回もない)、僕を批判した手紙が来るなど、男としてのプライドをズタズタにされたのである。


 お見合いして交際を断られるというのは、失恋に似ている。どちらも、理由はよくわからないまま、同世代の異性から自分の存在を真っ向から否定されたように感じるからだ。その精神的ショックと自信喪失の度合いは大きい。特に、僕のように30回もお見合いをしたとなると、そのような失恋的お見合い断られショック(さらに自分より「格下」と思っている人に断られるとショックが倍増する)が、数ヵ月に渡って5~6回連続して襲って来るようなこともあった。だから、婚活中の人たちにお願いしたいのは、男も女も、一旦お見合いを受けたら、基本的には交際も断らないという姿勢で臨んでもらいたいということである。釣り書・写真を見て納得したのだから、後は欲深くあれこれ言わないことである。それに、あなたがお見合い相手との交際を断ると、ブーメランの法則で、次のお見合いではあなたが断られることになるだろうと、僕の経験からアドバイスしておく。


 それでは、なぜお見合いは受けてくれるのに、交際は断られてしまうのか。考えられる理由としては、以前にもこのブログに書いたが、以下の3つである。①「マイペース型」説(結婚するのかしないのかあいまいではっきりしない女性は、お見合いは受けるが交際は断るという傾向がある?) ②「中の上レベル」説(理由は分からないが、「中の上レベル」女性は、それほど気に入っていない相手とお見合いをした挙げ句に断るという傾向がある?) ③仲人Bさん作成の僕の釣り書の推薦コメントが誉め過ぎで、実際に会った相手ががっかりした というぐらいしか考えられない。


 結局、僕は「中の上レベル」の女性とは縁がなかった。この後、現在の結婚相手を含めてお見合いで出会った4人、お見合いパーティーで出会った2人と交際してかなりいい線までいったが、いずれの人もどこかに「弱点」を抱えていたのである。結局のところ、お見合いとは、相手の「弱点」をどこまで許せるか、そして自分の「弱点」も許してもらえるかが成功の鍵を握るのだが、「中の上レベル」女性は、なまじ自分に大きな「弱点」がないものだから、相手に「弱点」のあること自体が許せないのであろう。しかし、人は、「弱点」を通じて、みんなとつながっているとさえ言えるのであって、人間の弱い部分や人生の暗い面から目をそらし、強く明るく美しいものばかりに目を向けていると、いつかは自分が足元をすくわれることになる。次回は、婚活の行き詰まりと10回目のお見合い。