株をしている人が会社を研究する時、どうしても損益計算書(P/L または income statement)ばかりに注目してしまいます。確かに予測PERを基準に株価が動く傾向があるためそうなるのは止むを得ませんが、貸借対照表(バランスシート)を見ないときちんとした企業分析にはなりません。それは個人の経済的なゆとりを見る時に、年収(損益計算書)がいくらよくても、莫大なローン(貸借対照表)を抱えていると決してゆとりがあるとは言えないようなものです。

 

貸借対照表を見ることにより、以下のメリットがあります。(そもそも上場企業が多くのコストをかけて細かい財務諸表を作成しているのは、我々投資家のためです)

 

①投資している会社がいきなり倒産するということを防げる。

②長期金利が上昇すると、有利子負債が多い会社の収益を圧迫するが事前に対策が打てる。

③M&Aの標的になりそうな会社が見つけられる。(保有している資産や現金と時価総額の比較で割安株が発見できる)

 

③のメリットにより発見したのが、2004/9/26に紹介した電響社(8144) です。ここは紹介時890円前後でしたが現在の株価 は、1070円と20%ほど上昇しています。さらにその間配当(25円/1株)があったので持ち続けていた株主はヴァリュー株の恩恵を受けていることでしょう。しかも、まだホリエモンのニッポン放送買収でM&Aが大騒ぎになる前にkonitablogはこの会社がM&Aの標的になる危険性を指摘していました。

 

電響社

 

ちなみに、昔のこの会社のホームページのIRは、手抜きもいいところでしたが今の電響社ホームページ IR は、以前よりましになっています。恐らく会社も時価総額を上げないとやばいと感じているのでしょう。

この会社がどれぐらい買収の危機にあるか検証します(2004/3月末のバランスシートより)。ここは、前回の記事にも書きましたが、有利子負債はゼロです。典型的なキャッシュリッチ企業で、現預金は89億円あります。(長期貯金16億円含む)。また現預金のみならず投資有価証券40億円あり、通常の営業で不要な換金性の高い資産は合計129億円もあります。でも時価総額は142億円しかなくなんとこの会社は理論的には13億円で買収できます。同じく2004/3月期の経常利益は11.7億円ですから、法人税住民税事業税を勘案したら恐らく2年で投下資金を回収できることになります。 M&Aコンサルティング(村上ファンド) の村上世彰氏はこの会社を狙わないのでしょうか? 

 

 

それと①はとても大事です。たとえば最近民事再生を申請した55ステーション(4702) ですが、Yahooファイナンスの株主資本比率は13.7%ありどうして倒産したんだろう?と私も不思議に思っていました。しかし、平成16年11月30日現在の同社のバランスシートを見ますと、営業権11億円 繰延税金資産11億円と資産性に乏しい資産が株主資本合計の13億円をはるかに超えており実質的には債務超過状態であったと考えられます。中長期投資をするならこのようないつ倒産するかわからない財務的に脆弱な先は避けるべきです。

 

このように、バランスシートを見ることで倒産しそうな会社を避けられますし、掘り出し株を発見することも可能です。

また機会があれば掘り出し株をご紹介します。  お楽しみに