裁判所の令状なく捜査対象者の車などにGPS(全地球測位システム)
端末を取り付ける捜査が違法かが争われていた刑事裁判で、22日に、
最高裁大法廷は、検察、弁護側の意見を聞く弁論を開きました。弁護側
が、監視社会につながりかねないとしたのに対して、検察側は、捜査で
有用だと訴えました。GPS捜査は、警察庁が、2006年に、「犯罪の疑い
や危険性が高く、速やかな摘発が求められ、他の手段で追跡が困難な
場合」、GPSを任意捜査で利用できるという通達を出しています。これを
基に、全国の警察が令状を取らずに無断で端末を取り付けてきました。
警察庁が対象としている7類型の犯罪は、誘拐や暴力団関係のほか、
危険性や社会的反響が大きい犯罪と規定されています。警察庁は、
全国の実施数を把握していない、としていますが、幅広く使われてきた
可能性がある、と報じられています。GPSは、人工衛星を利用して、
電波を受信する機器の正確な位置を測定するシステムで、技術の進歩
で数メートル程度の誤差で端末の位置を特定できる、ということです。
GPS端末取り付けは、強制的な捜査に当たるかどうか、その判断の仕方
によって、地裁や高裁の判決は、違法と適法に分かれていて、最高裁は、
審理を大法廷に回して、春にも統一判断を示す予定です。警察当局も、
最近になって姿勢を一部見直して、裁判所の令状をとったうえでGPS
捜査を行う例が見られるようになった、とのこと。少なくとも、こうした
第三者の目でのチェック体制を確立することが必要だと思います。
期限を限定せずに、多数回の位置情報が蓄積されると、それを分析する
ことによって、交友関係、思想・信条、信仰、趣味・趣向などが明らかに
なり、プライバシーが大きく侵害されることになります。GPSなど新しい
技術がさらに発達することも考えられ、通達ではなく、法律で、しっかり
定める必要があるのではないでしょうか。