対局者
可南(大三元)
石井あや(麻雀BULL)
土田小緒里(BIG WAVE)
佐月麻理子(ラブリースマイル)
あらかじめ断っておきますが、今回は魚谷侑未プロの観戦記ではありません。
このブログを開設して約2年、ずっと彼女の試合以外は一貫して書いてこなかったのですが、今回の夕刊フジ杯の準決勝、決勝は流れからいっても佐月・和久津両プロの対局も書かなければいけないと思い、筆を運ぶに至りました。
私自身非常に迷いましたが、「書きたい」という気持ちには勝てませんでした。
今回だけになるかもしれませんし、来年も同じチーム編成ということでまたブログを書くことになるかもしれません。
では、続きをどうぞ。
起家から
可南→石井→土田→佐月
さあ先ほどの試合、ゆーみんがトップを奪取したことにより敗者復活戦へと進出したラブリースマイルチーム。
その命運は現マスターズ、そして「あの仕掛けを成功させてくれるもう1人のプレイヤー」佐月麻理子に託された。
この敗者復活戦は半荘1回の頭取り。
単純にトップを取ったチームが決勝へ進むことができる。
1回勝負ならではの激しい叩き合い、好勝負が期待できそうだ。
東一局は親の可南が先制リーチを放つも不発。
そして続く1本場。
いきなり点棒が大きく動くこととなった。
親の可南は親満確定のカン6mテンパイ。
そこに持ってくるは5m。
ドラの8mを打って両面変化させるかと思いきや、ここはツモ切り。
ドラを打って気配を出すことを好まず、ヤミテンを続行する。
これが成功。
三色テンパイを入れていた石井がすぐに6mを掴んで放銃!
12000の大きな和了となった!
実績だけで言えばこの卓で佐月に次ぐ存在である石井。
その石井がいきなりの大失点!
波乱の幕開けとなった。
しかし石井も最高位戦を代表する女性プロ。
まるで冷静さは失わない。
次局に放ったリーチは流局してしまったものの、続く東二局の親番ではこの和了。
形式テンパイからタンヤオへ振り替わり。
そしてハイテイでドラの3mをツモ!
2000オールのツモ和了で一気に失点を取り返す。
石井は攻める手を緩めない。
東二局4本場。ダブ東、1pとポンしてこのテンパイ。
打点こそ安いがそれは全て見ることのできる卓外の意見。
ドラが使いやすい4sということもあり放銃したら5800は覚悟しなければいけない場面。
半荘1回の勝負だ。ここで石井に打つ訳にはいかない。
プレイヤーはそう考えてもおかしくはない。
佐月もテンパイを果たした。
しかし入り目は最悪。ドラではなく、タンヤオも消えてしまう1sツモ。
待ちは1枚切れのカン3m。形からしても、場況からしても決して良いとはいえないテンパイ。
しかし。
佐月はここでリーチに踏み切った!
1300の愚形テンパイ、ドラは1枚も見えておらず、リーチこそ入っていないが先制しているとは全く言えない場面。
まさにリスクしかないようなこのリーチ。
だがこれは半荘1回勝負の頭取り。
トップでなければ2着も4着も同じ。
1回勝負だからこそ…リスクに打ち勝たなければ勝利は掴めない!
この気迫と気合の入ったリーチが石井に打ち勝つ!
なんとこの3mを石井が掴んだ!
石井から佐月への1300の、しかし点棒の何倍も価値のあるような和了!
このリーチを無謀だと笑うのは簡単だ。
たまたま運が良かっただけ、こんなことを続けていたらいつかは負ける。そう考える人もいるだろう。
しかし、今はトータルではない。
この半荘を勝たなければ意味がないのだ。
そして佐月は見事結果を残した!
それだけが大事なことであるのだ!
このプレーが彼女に良い風を吹き込んだ。
東四局の親番。
ダブ東をポンしてドラの北単騎を石井から打ち取る。
12000の大きな和了。
石井も通常のリーグ戦等であればぬるいと言われても仕方のない放銃であるが、この局面なら致し方ないか。
一方佐月はさらに加速。
続く局も發を1鳴き。土田から2900を召し取る。
あっという間に2着目の可南と1万点以上の差をつけトップ浮上。
リスクを背負い込んだリーチから、鳴きによる速攻で2連続和了。
彼女のペースになってきた。
こうなればもう後はどんどん捌いて局を消化していくだけ。
勝ち上がり濃厚にも思えたが…
好事魔多しとは良く言ったものだ。
南一局。ドラは4m。
ドラ3の石井が白ポン、7sポンと2副露。
4pと發のくっつきのイーシャンテンに6pを引き入れカン5pテンパイ。
石井は現在大きく沈んだラス目。
当然、大きな手を和了したいところではあるがまずは2着目の可南の親番を流すだけという仕掛けも考えられる。
河もおとなしく、同卓者からは打点が読みづらい場面になっていた。
しかし佐月には58pの受け入れがあり、当面は放銃することはない。
そう安心していたが、佐月の手は縦によれる。
(服で見えないがツモってきたのは8m)
七対子のイーシャンテン。
そして何とここから5pを選んでしまう…!
白ドラ3!
トップ目佐月から石井への満貫の放銃!
石井の上家の可南が数巡前に5pを切っており、それに石井は反応していなかった。
(鳴ける形ではなかった)
石井の最終手出しは發。トイトイまで睨んで残した牌ではあるが、ドラ3のくっつきテンパイであれば字牌よりも数牌を残したいと普通は考える。
この5pがよもやドラ3の満貫に当たるとは予想できなかったであろう。
佐月のまさかの満貫放銃により場は一気に平たくなった。
全員に可能性のある大接戦。
よもやの失点をしてしまった佐月は何を思うだろうか。
……彼女の表情は一切崩れることはなく、その目は卓上のみを見つめていた。
男が若い女性を見ていて応援したくなる。
これは変な意味などなく、極めて当然のことだろう。容姿が綺麗であればなおさらだ。
しかし佐月麻理子。彼女にはそれ以上に人を惹きつける何かがある。
予想できない仕掛け。
まさに「万感の思い」という表現がぴったりな摸打、リーチモーション。
そして「この世界には麻雀しかない」
そう思わせるかのような対局中の表情、まなざし。
俺がこの対局で彼女を応援しているのはゆーみんのチームメイトだからであるが、多分きっとそれだけじゃない。
だからこのリーチも…絶対に成就して欲しいと心から願ってしまう。
佐月麻理子特有の、誰よりも大きく振りかぶった、感情を込めたリーチ。
7mをツモってきた時、解説の和久津と共に「裏が乗れ!」
そう思わず叫んでしまった。
裏ドラは8p!
2000/4000の和了で再び大きく抜け出した!
見ている人の感情を揺さぶるこの和了。
石井の親番を終わらせ、可南とも2万点近く差をつけた。
後は南三局の土田の親番を流すだけ。
しかし土田もここから粘る。
3900、1人テンパイなど気づけば積み上げた本場は5本!
夕刊フジ杯決勝という晴れ舞台。
そう簡単にシャッポを脱ぐことはできない!
南三局5本場。親は土田。ドラは9m。
ここまで粘りに粘ってきた土田。
ついに大物手が入った。
平和ドラドラの69mテンパイ!
そしてリーチに踏み切った!
例えダマであってもドラの9mは佐月からは出ない。
仮に脇から6m出和了でも佐月を捲ることはできない。
ならばと思い切って抑えつけも兼ねたリーチに踏み切った!
しかしこの69mはなんと山に純カラ。
可南が5枚も抱えており、出る形になっていない。
それを知っていた訳ではないが佐月が攻める。
筋の1pを対子落とししている間に25mテンパイを果たす!
しかも役あり!リーチを打たずとも和了することができる形!
どこまでこの手で押していけるか。
次巡に持ってくるは2p。
土田の河に4pが早いが、無筋である。
万が一にも放銃したくない場面。
しかし彼女は躊躇せず打ち抜く!
前試合のゆーみん同様、何のためらいもなく一定のスピードで打ち抜ける。
これがトップ選手の素養なのか。
ほとんど通ると思っていても少しは考えたりしてしまうものだが、彼女らには全くそれがない。
そしてその迷いのない打牌が、和了を生んだ。
ドラドラの可南も追いついた!
カン4sを引き入れ69sテンパイ!
この手をツモればオーラス1300/2600条件という極めて現実的な条件が残ることとなる!
彼女も絶対に和了したいこの手!リーチのモーションも今までよりどこかこわばっているようにも思える。
さあそして2軒に挟まれた石井。
両者の現物、2mを迷うことなく打ち出していった。
だがそれは…
佐月の和了牌!
一定のモーション、速度で打ち続けていた彼女。
石井も佐月のことは完全に無警戒であった。
麻雀は打牌だけでない、全てを使って戦う競技。
そう、教えさせてくれるような決着の付き方であった。
オーラスは佐月が静かに牌を伏せ、ここにラブリースマイルチームの決勝進出が決まった。
1着 佐月
2着 可南
3着 土田
4着 石井
大本命ラブリースマイルチームが決勝へ進出!
苦しい道のりであったが、敗者復活戦を何度も勝ち残ったその底力は本物であると言えるだろう!
決勝はポイントがリセット。
4戦でのポイント勝負となる。
果たしてラブリースマイルチームが初出場・初優勝の栄冠を掴むことができるのか!?
決勝戦へ続く!!!