オリンピックの身代金(奥田英朗)


「犠牲者の上にしか繁栄を築けないのであれば、それは支配層のための文明です」


著者の社会派作品は初めてです。東京オリンピックに向かって一丸となっている最中のテロ。追うものと追われるもの、何が犯人をそのような行為に駆り立てたのか、一流国入りに熱望する空気に中てられました。『蟹工船』もだけど格差社会を知らしめる作品ではないでしょうか。


「おらたち日雇い人夫が人柱にされない社会にしてけれ」


昭和39年夏の狂騒は北京オリンピックで聞こえてきた国を挙げての必死さと全く同じ。そして今また東京へオリンピックの招致活動がなされています。これを読んで都知事がなんでまたオリンピックと言い出したのかがわかりました。過去の栄光、というとナンですが当時の熱気や一体感が忘れられないのかと。。。


「みんなで新しい街を作ったのだ」


(2009年2月15日読了)
内容(「BOOK」データベースより)
昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。

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