レビュー:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族(βテスト版)」をやってみた(若干追記有り | 滅多斬り!ゲーム徒然【語る狛犬】

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国内外を問わず良作を追い求める社会人ゲーマーの視点から繰り広げる、主張の偏ったゲーム批評。

※2012/8/6 狛犬追記※

このレビューはベータテスト版のものです。

製品版はかなり印象が異なり、楽しくプレイ中。以下のレビューは「ベータテスト当時感」の説明と思っていただければ。





Wiiで2012年発売予定、Wii Uでも開発中と言われる、ドラゴンクエスト最新作「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族」。
シリーズ初のオンライン専用RPGということで大注目の作品なんだが、先日お伝えしたとおり、そのベータテスト版を入手したので早速プレイしてみた。

あくまでベータテスト版のレビューだからね。

あとベータテストという趣旨上、スクリーンショットのアップはしない。

 
 
《解説・導入》
 

ネットワーク環境と、事前にスクウェア・エニックスのオンラインIDが必要。
Wiiは標準でワイヤレスLANに対応した機器だが、動作安定性を鑑みて有線LANアダプターを使用し、ハイスピードな有線接続で検証開始。
 
コントローラはWiiリモコン+ヌンチャク、あるいはWiiリモコン+クラシックコントローラ(Pro)に対応。
右スティックのカメラ操作が必要な方なら、クラコン一択でいいだろう。ZR、ZLも頻繁に使用するため、出来ればProで。
あと、他人とのコミュニケーションを重視するプレイヤーならUSBキーボードもあったほうがいい。
Wii専用を謳ったものも販売されているが、市販の安物キーボードで充分。
 
今回届いたのはベータテスト版のインストールディスク。ゲーム自体はUSBメモリーにインストールする必要がある。
ラッキーなことに、USBメモリーはWiiオリジナルのもの(ゲームの周辺機器っぽいデザインは好き!)が同梱されていたが、市販のUSBメモリー(16MB以上)でも使用可能だ。
ちなみにWiiのUSBポートは2つ。有線LANアダプターとUSBメモリーとキーボード…となる場合は、USBハブが必要。
 
…まったく、オンラインRPGでHDDも有線LANも標準装備してないマシンとか勘弁してくれや。
そういえばWii UにもHDDは搭載されていないらしいが、大丈夫なのか?
 
で、USBメモリーへのインストールに15分くらい、その後、起動時に更新ファイルのインストールに20分以上。
俺のようなせっかち兵にはつらいね!
 
 
《キャラクターメイキング》
 
選べる種族はオーガ、エルフ、ドワーフ、半漁人、チビの5種類。人間はいない。
説明書の職業紹介にあるイラスト群はどう見ても人間なので、なんでデミヒューマンばかりにしたのか意味がわからない。
キャラクターの外見カスタマイズはさほど多様ではない。
グラフィックが粗すぎて、メイキング中のキャラの顔自体がグチャっと見えるのはプレイ前からもう残念。
 
 
《グラフィックスについて》
 
キャラクターは多数を同時に表示できているが、その分背景やオブジェクトが犠牲になりすぎていて寂しい世界。
NPC含め、キャラクターの表示にリソースが取られてしまうのはわかるつもりだが、それを差し引いても簡素で、PS1初期の新参ソフトハウスが作ったフルポリゴンゲーくらいのテクスチャ感。

基本的には平べったい大地に枯れ木が数本。

 
これを仕方ないと許すか?いや、俺はWiiではなくPS3でやるべきだったんじゃと強く思うね。
しかし、こうも自分の周りに他人のキャラが居ると処理落ちするものとは…つか、いくらマルチプレイとは言えここまで背景や処理を犠牲にすべきものなんかな?
 
あと、モーションは作り直したほうがいいくらいヘボい。走る、ジャンプといった基本動作すら不完全。

 

それから装備品も必要レベルが4レベル単位くらいに設定されているせいで、同じ位のレベルのプレイヤーと大体同じ見た目になってしまうのも残念。
 
 
《操作性・フィールドについて》
 
あまり良くない。
非戦闘時のメニューは、周りに人が多いとカーソルの動きまでが処理落ちに巻き込まれて、若干たどたどしくなる。

酷いときにはメニューボタンを押した後5秒くらい砂時計が表示されて、メニューすら出ない。

 
右スティックのカメラはかなり鈍重でセンスの無い動き、普段海外のゲームで遊んでる人には辛過ぎる。
左スティックを倒さなくてもまっすぐ走り続けられるボタンは便利だが、せめてカメラを向けた方向に走ってくれないと使いにくい。
 
オンラインゲームの定石か、マップはバカみたいに広い。
簡素すぎるテクスチャの非常に寂しいフィールドで、景観の悪さと無駄な広さにかなり辟易する。よくこんなクズマップで皆平気そうに遊んでるな…。
たまに宝箱があったりするが、プレイ時間の引き伸ばしにしかなっていないので、もう少し狭くてもいいと思う。
 
 
《戦闘について》
 
ターン制コマンド戦闘。コマンドを入力しなくても敵は時間と共に行動するのでFFっぽい。
フィールドから戦闘への切り替えはシンボルエンカウント式。
シンボルに触れるとよくあるエンカウントのグニャ画面→敵の内訳画面、まではソロプレイのRPGと同様。
その時点でフィールドに魔物数体が配置され、コマンド戦闘に移行。
ちなみにフィールドに再配置された魔物はそのプレイヤーが「手をつけた」状態になっており、
他のパーティーもしくは野良のプレイヤーが戦闘に加わることは出来ない。
見分け方は「名前のついていない敵はエンカウントシンボル」、「名前のついた敵は誰かと戦闘中の敵」。だが見た目は同じ。
 
戦闘中、プレイヤーキャラクターは移動できるが、敵から離れたからといって攻撃は食らう、近距離も遠距離も無い理不尽系の距離感。
仲間と敵の直線状に割り入って仲間をかばう程度の戦術性しかない。
意図的に行動を遅らせられるため、補助や回復の呪文を待ちで投射することは可能。
わざとコマンドを入力していなくても、さらにその次のコマンドの入力までのカウントダウンはしてくれているみたいなので、
行動順を遅らせたらすぐに次の行動が出来るようだ。
 
戦闘コマンドはドラクエらしく簡素。行動オプションがあまりに少ないので飽きる。
「たたかう」以外にも多少の技や呪文は覚えるが、MPがすぐ枯渇するので結局「たたかう」中心。
 
 
《成長・報酬について》
 
これでもかと露骨な引き伸ばし具合。
経験値、ゴールド共に1回の戦闘で得られる量が乏しく(1体1~2ゴールドとか)、最初の町で購入できる高いほうの武器(大体240G)を買うには
文字通り100回くらい戦闘する必要がある。
そこから防具(頭、胴体、腰、手、足、アクセ、盾…)まで合わせると、いわゆる初心者のレベル帯だけでも10時間単位で必要なことがわかる。
オンラインRPGって、ほんとこういう引き伸ばし仕様なんだよなぁ。。このドラクエもここまで露骨に倣ってるとは。

 

昨今の和製シングルプレイRPGは50時間やれば充分、丁寧に終わらせても100時間やれば長いほうだ。

オンラインだから満足にプレイするには何ヶ月もかかるようにするのが当たり前だとか、俺はおかしいと思うぞ。時間あたりの密度が無さすぎてつまらないことを「オンラインRPGだから仕方ない」などと、メーカーに都合のいい理解は示せない。
 

 
つか…ほんと、眺めてても皆延々とシンボル追いかけて「たたかう」中心のコマンド入力の繰り返し。ずーっとだよ?
要はコレ、全プレイヤーが軽く足元を見られているだけのことなんだけど、こんなつまらないものを皆が当たり前に受け入れるからこそ成立してるんだと思うと、
改めてヒトの価値観の多様性を知らされる思いがする。
 
 
《コミュニケーション機能について》
 
これは及第点。
キーボードをお持ちでないプレイヤーでも楽しめるよう、プリセット文章も多いし自分で編集できる枠も多く用意されていて、リストは専用ボタン操作ですぐに呼び出せる。
設定した各定型文と「しぐさ(喜んだり落ち込んだりといったモーション)」を紐付けて、キーボードなしでも快適なコミュニケーションを取れる。
これは俺でも平気だった。
 
もちろん込み入った文章やチャット的なものも、よくあるMMORPGのように表示される対象を切り替えてキーボードで入力できる。
対象はそれぞれ、エリア内全員・パーティー内・フレンドのみの3種から選択できる。
 
また、戦闘中の他人に接近して「おうえん」することも可能。
声援を受けたプレイヤーキャラクターのテンション値が上昇する効果がある。

 

パーティープレイについて。

オンラインで仲間を募り徒党を組むのは他のMMORPGと同じだが、AIが操作する「サポート仲間」をゴールドで雇うことも出来る(これが結構高い!)。

このゲームでは一度装備したアイテムはそのキャラにタグ付けされるので、装備は変えられない。また、サポート仲間は雇った時点からレベルアップしない。

電源を落とす前に酒場へ登録しておけば、自分のキャラもサポート仲間としてオンラインに登録される。

自分が再プレイするまでに誰かに雇われていれば、再開時に若干の経験値とゴールドが入手できるが、現時点では微々たる報酬のようだ。

 

 

《その他の要素》

 

・素材を投入して火力を調節し装備品を作る鍛冶の要素がある。

 ゴールドを消費せず助かる気もする反面、結局素材探しの引き伸ばし要素でもある。

 まだやってないけど、2.1から追加された錬金釜も同じようなものかと。

 素材は市場を利用してプレイヤー間で売買可能ではある。

 

・特定の町で自宅の購入とインテリアの配置要素がある。

 自宅の購入がバカみたいに安く、よくあるSNSのアバター部屋みたいに長期間繋ぎとめる姑息な仕掛け。
 
 
《独断マトメ!》
 
現段階でまとめてしまうにはちょっと早いが…
 
まず、俺には無理なゲームだ。どうしようもなくダメだ。
普段HDマシンのグラフィックスを見慣れているせいもあり、ロースペックなWiiで、しかもMMOのため他人のキャラを表示するためにパワーを使っているせいで、
一般的なWiiのゲームでもこんなに酷いものは知らない、というくらい殺風景なフィールドにはこの先も慣れそうにない。
…ていうか、PCで無料で遊べる程度のオンラインRPGのほうがずっとハイクオリティだよ。
 

さらに、気の遠くなるようなレベル上げと金策の作業は、一日1~2時間のゲーム時間を捻出するのがやっとの社会人ゲーマーにはきつい。
そもそも、何時間もエンカウント用のシンボルを追いかけて「たたかう」連打するだけの薄っぺらいシステムでは退屈すぎる。

 

一言で斬るなら、

全体構造からは「とにかく長く金を払わせる仕組み」という魂胆が滲み出すぎていて、「時間あたりの満足感を確保しながら、より長く楽しんでもらいたい」という意識は感じられない。
 
もしこのゲームが「ドラクエ」じゃなかったら誰も見向きしないレベルの作品なのは断言できるし、

製品版が出たら、ネットのほうは信者とアンチでかなり荒れるんじゃないかなー。
 
だが、ドラクエは腐ってもドラクエ。ここが怖いところだ。

 
「ドラクエならやる。オンゲは初めて」というプレイヤーにとっては、他のゲームのクオリティなど判断基準にはならない。
そこで、他人がゴチャゴチャと同じ空間にいたり、ソーシャル要素があったりすることは、彼らにとっては実に新鮮に映るはず。

そして「つながり」「キズナ」に感化され、ひたすら課金に応じ、延々このゲームだけをやり続けるというケースは結構多くなるんじゃないかと思う。

 

 
かつてマニアのジャンルだったコンピュータRPGを、日本人向けにやさしくローカライズしヒットさせたのもドラクエだった。

だからこのゲーム、しょぼいけどドラクエである限り成功しそうだな。