レビュー:PSP「バクマツ☆維新伝(レボリューション)」をやってみた | 滅多斬り!ゲーム徒然【語る狛犬】

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国内外を問わず良作を追い求める社会人ゲーマーの視点から繰り広げる、主張の偏ったゲーム批評。

なんちゃってシレン+モンハン風味=???
 
ズバ斬り!ゲーム徒然【語る狛犬】-baku

6/25より配信の始まった、PSP用の本体無料ゲーム「バクマツ☆維新伝(レボリューション)」。
基本無料にアイテム課金という、PCゲームでは一般的なビジネススタイルをPSPに持ち込んだことで話題の作品をレビューしてみよう。
 
公式サイトはこちら。
http://bakumatsu.acquire.co.jp/
 
 
解説・導入
 
アクワイア販売、ゼロディブ開発のPSP用ローグライクゲーム。
ゲーム本体はPlaystation Storeよりダウンロードして入手できる。
ダウンロード容量は25MBと非常にコンパクト(なのが気がかり)。
 
本体以外の追加シナリオ、アイテム、アイテム保有量拡張などの補助機能は全て課金制になっており、必要に応じて資金を投入するスタイル。
 
 
世界観・独創性
 
舞台は幕末・維新時代の日本だが、新撰組の沖田は子供、西郷隆盛は頭の弱い巨乳女といった具合な、ラノベばりのアレンジを受けている。
 
幕末をチョイスした背景はよく知らないが、あって無いようなストーリーも作中のイベントも、動乱と革新の時代である幕末を描いた風味は無い。
キーワード程度の扱いだと思っておいたほうがいい。
 
 
グラフィック・演出
 
ドット絵のローグライクな画面。
マップパターンや全体感はSFC時代の「不思議のダンジョン」シリーズ、トルネコやシレンに酷似している。
ポリゴンが普通の時代にあってドット絵のゲームには温かみを感じるものがある。ただし、演出面もSFC時代と変わりなく地味。
 
サウンドについては、昨今遊べるゲームの中でも最底辺に位置するクラス。
音量が非常に小さなBGMには存在感が無く、効果音は総じてチープ。
キャラは萌え系のようだが、数種類の1枚絵にボイスも一切無いので魅力に乏しい(25MBだし仕方ない)。
 
無料だとは言え、ある程度の課金が前提とされている作品なのにグラフィックスもサウンドも数世代前のものというのはどうだろう。
 
 
操作性・ゲーム性
 
自動生成されるダンジョンに入り、移動も戦闘もターン制で、各階層は一方通行と、まんま「不思議のダンジョン」。
一応「ローグライクゲーム」とは書いてみたが、実際この言葉は便利すぎる。
 
それというのも、マップの自動生成やターン制の戦術バトル、主人公が倒れれば全アイテムを失うシステムはPCレゲーの「ローグ」に端を発するものだが、
チュンソフトの十八番である透過型ミニマップ表示、Rボタンを押しながらの斜め入力操作、□ボタンで向きだけ変更する操作など、ローグよりも不思議のダンジョンを下敷きにしたのは明白で、「ローグライク」と称せば不思議のダンジョンを丸パクリしても許されるジャンルだと勘違いしているかのようなデザインとなっている。
 
しかし、「トルネコ」や「風来のシレン」シリーズの持つ、アイテムの使い分けや頭を使う鑑定要素、パズル性豊かな戦術バトル、愉快なゲームプレイの雰囲気などまではパクれておらず、劣化した内容に留まっているようだ。
チュンソフトの場合、各アイテムが使うコマンド(使う・押す・置く・読む・投げる・入れる・出す)によって用途が異なったり、それらの組み合わせや位置取りなどで立ち回りが変わり、ピンチを頭脳で切り抜けるパズル性が熱狂的に支持された。ここが一番重要。
しかしこのゲームはチュンソフト作品から表面上の体裁を真似ただけで、ゲームデザインの要である戦術性はまるで無く、面白みをどこに見出せばいいのかわからない。
 
また、本作は装備どうしを混ぜ合わせるような合成強化ではなく、武器や防具の素材を大量に集めて作成するモンハン風のアイテム作成システムを採用している。
うまく手持ちのアイテムを駆使しながら危難を切り開くシレンなどと異なり、ゲームパートでは一切役に立たない素材アイテムを持って帰るのが主となるのが、このゲームを面白くなくしている最も大きな原因だろう。
 
おまけに、無課金状態では冒険中のアイテム保有量が乏しくかなり不便を強いられること、また、町に保管する倉庫の大きさも不十分すぎることもあり、アイテム保有量アップの課金アンロックを数段階ずつ行わなければプレイもままならない状態になる。
基本が無料なので多少の不便を伴うのは幾分仕方の無いことだとは思うが、無課金状態での締め付けがあまりに厳しく、ケチ臭いことこの上ない。
「課金すればさらに楽しくなる」のではなく、「課金しないとまともに遊べない」というのは観点からしておかしいのではないだろうか。ゲームそのものの魅力が乏しいので、このラインで妥当ということなのかなあ。わからん…
 
 
付加価値
 
Playstation Storeにおいて、追加シナリオ(追加ミッション)、死亡しても失われない装備品、属性付与などの各種アイテムなどがダウンロードできる。
このゲームをフルの状態で長く遊ぶためにはざっと2,000円~3,000円の課金が必要になるが、演出面がチープなだけでなく「不思議のダンジョン」系の作品に期待されるゲーム性も欠如しているため、その課金額は到底内容に見合ったものにはならない。
 
「基本無料」の謳い文句にほだされてプレイし、「無料だし、まあこんなもんか」と優しい気持ちでプレイし、元々アコギ過ぎる締め付け仕様を緩和するために無駄金を継ぎ込んでしまう、安直思考のプレイヤーたちが不憫なくらいである。
 
あと、一応PSP作品らしく4人までのマルチプレイにも対応している。
ただ、プレイヤーごとにキャラの強さが非常にバラつきやすく、アクションでカバーするゲームでもないのでマルチプレイとの親和性はあまり良くない。
アドホックパーティーでも、無課金組が去った後急速に廃れると思う。 
 
ところで、この作品はTwitter上で非常に高評価を得ている。
その理由はこのゲームのハッシュタグをつけてつぶやいた先着1500名にアイテムのプロダクトコードをプレゼントするほか、抽選でPSPのデコレーションステッカーがプレゼントされるからだ。
何を書くのも自由とあるが、ボロッカスに酷評して当選するものではないと考えるのが普通であり、ある程度は高い評価をつぶやくのが当たり前。
エサを用いて高評価の水増しをし、アピアランスを高めるというのはビジネスに則った考え方だが、元来Twitterはネット上の口コミ媒体として期待されるものであるし、有体に言えば汚いことこの上ない。
 
 
独断まとめ
 
正直このゲームをやるくらいなら、DS「風来のシレン4」をプレイするほうが遥かに賢い選択だ。
 
不思議のダンジョンシリーズ伝統の戦術性、多彩でそれぞれに意味深いアイテム群、バリエーション豊かなダンジョン(俺ではやりきれないくらい多い)、DSでもこれよりは格段に良いグラフィックスとサウンド、魅力的な世界観。
イニシャルコストはパッケージゲームと無料ダウンロードで大きく違うが、結局課金しないとほぼ遊べないばかりではなく、中途半端なゲームで無駄にする貴重な時間を鑑みても、初めからシレン4をやっていたほうが正解だと断言していい。
 
まさに「無料=商品未満」を地で行くダメなゲーム。