銃をリロードする度に去来する違和感。人それをお約束と云う。 | 滅多斬り!ゲーム徒然【語る狛犬】

滅多斬り!ゲーム徒然【語る狛犬】

国内外を問わず良作を追い求める社会人ゲーマーの視点から繰り広げる、主張の偏ったゲーム批評。

どんなに映像がリアルになっても、ゲームらしさは失ってしまうべきではない。
 
これを大前提として掲げた上で、今日はFPSやTPS、いわゆるシューター作品で遊ぶ度に気になって仕方が無い仕様について語りたいと思う。
 
ズバ斬り!ゲーム徒然【語る狛犬】-Guns
 

ほとんどの作品でリロードシステムが同一
 
銃器はリロードするもの、これは万国共通の認識である。
弾が切れれば次のマガジン(弾倉)を挿入し、再度攻撃を可能にするものだ。

シューター作品においても、リロードは攻撃の合間に安全なポジションを確保して行う重要なアクションのひとつである。
 
ほとんどのシューターや、銃器を中心とするアクションアドベンチャーにおいては、以下のようなリロードシステムが用いられる。
 
(例)装弾数15発のハンドガンで、予備に30発所持。
 画面上では大抵15/30(装弾/予備)などと表現される。

 仮に5発射撃すると、表示は10/30となる。
 ここでリロードボタンを押してリロードを行うと、次は15/25(装弾5増/予備5減)になり、また15発撃てる。

 
この一般的なリロードシステムは、COD、ギアーズ、GTA、Fallout3、アンチャーテッドなど、銃器を用いたゲームならほぼ当たり前のように使われている。
 
装弾数を意識しながら、ゲームとして煩雑にならないという絶妙なお約束システムで、ジャンルを問わずわかりやすく、そして使いやすいという特徴がある。
 
 
現実世界におけるリロードとは
 
もちろん現実とゲームは大きく異なる。


先ほど例に挙げた、装弾数15発のハンドガンを例にわかりやすく紐解いていこう。
 
まず、そのまま15発撃てば銃のスライドが後退したまま止まり、チャンバー(薬室)が開放された状態となる。
15発マガジンを挿入し、スライドストップのリリースレバーを下げれば次弾がチャンバーに装填され、トリガーを引けばすぐに15発撃てる状態となる。
このリロードを「エマージェンシーリロード」と呼ぶ。
 
エマージェンシーリロードでは交戦中に不意の弾切れをおこし不利な状況を生むことが少なくないため、リロードができる任意のタイミングでまだ残弾がある状態のマガジンをリリース(排出)してしまい、予備のマガジンを挿入して撃てる弾数を回復させるという手法が用いられる。
この場合、チャンバー内には既に1発の弾薬が装填されているため、撃てる弾数は16発となる。
このリロードを「タクティカルリロード」と呼ぶ。
 
狭義にはタクティカルリロードとは、残弾があるままリリースしたマガジンはそのまま捨てずにマガジンポーチや素早く放り込める腰袋に突っ込んでそのまま携帯するものを指す。
いざとなれば残弾数の少ないマガジンも使わなければならないし、補給のままならない状況下ならばマガジンの再利用は必須だからだ。
 
シューティング競技や、一瞬の銃撃戦しか想定されていない任務に就いた特殊部隊の場合などは、マガジンをその場に落としてしまった上で予備のマガジンに交換する。
これを「スピードリロード」と呼ぶ。
多くのゲームで目にする動作ではマガジンを放棄しており、どうやらスピードリロードをしているようだ。
 
さらに狭義には、主に戦闘前から装弾数15発の銃を16発撃てる状態にして携行するために、マガジンを挿入してスライドを引き、チャンバーに弾薬を1発装填した上でマガジンをリリースし、
リリースしたマガジンに1発の銃弾をこめてまた銃に戻すという手法が用いられることがあり、
これを「コンバットリロード」と呼ぶ。
このコンバットリロードは、装弾数が7発と少なかった45口径コルトガバメントを8発で携行したがる兵士が多かった時代には一般的だったが、現代ではハンドガンの装弾数が多いこともあり、安全性の観点からも一般的ではなくなってきている。
 
蛇足ながら…
メタルギアソリッド3にも「タクティカルリロード」は存在する。
武器選択ボタンを素早く2度押しすればすぐにリロードが完了されるというテクニックを公式に「タクティカルリロード」と呼称してしまったという、紛らわしく浅はかなものだ。
とてもじゃないが、フランス外人部隊を経験した毛利元貞を軍事アドバイザーに迎えた作品とは思えない稚拙さである。

 
 
お約束システムとのギャップ
 
ゲームにおける一般的なリロードシステムは、現実世界に照らすとスピードリロードに属することは前項で説明したとおりだ。
そうすると、最初から例に挙げている装弾数15発で予備30発(表示では15/30)のハンドガンの場合、
5発撃ってからスピードリロードを行えば15/25(予備5減)ではなく、
16/15(チャンバーに弾があるので撃てる数は15+1発、最初のマガジンは放棄したので予備は一気に15まで減る)となるはずだ。
最初45発の弾があっても、5発撃ってスピードリロードすれば31発にまで少なくなってしまうのが現実なのだ。
 
仮にタクティカルリロードだったということでマガジンを回収したとしても、例に挙げたハンドガンだと撃てる数は16発(15+1発)、予備マガジンは15発×1個、それから9発×1個となるはず。
だからといってこれを16/24と表示してしまってはおかしい。
3回目のタクティカルリロードで9発入ったマガジンが再び挿入されたときに、撃てる数が10発(9+1発)となっているならいいのだが、ゲームではそんなことにはならない。
 
マガジンに弾薬を詰めるというのはちょっとした作業である。


非戦闘時にやるもので、戦闘中に出来ているという処理ではおかしい。
 
 
もちろん全部がリアルならアクションゲームは成立しない

 
ゲームは遊んで楽しくてナンボである。
 
シューターではじっとしているか、ヘンな注射を打てばすぐに体力が回復する。
スネークはボスとの交戦中にレーションやラーメンを食べたり、ケガの手当てが出来る。
これらのお約束をやめて現実に合わせてしまえば、被弾した瞬間にゲームが続けられなくなるため非常に面白くないものになるだろう。
 
その辺は冒頭で述べたとおり、どんなに映像がリアルになっても、ゲームらしさは失ってしまうべきではないはず。
ゲームプレイ継続による楽しさは失われてはならない。


必要不可欠なお約束というのも存在するのは仕方ない(ひょっとしてその想像を超えるアイデアがあったら、そのときは改めて驚愕しよう)。
 
 
アイデア次第で打破され、長所になるお約束もある
 
かと言って、リロードシステムまでお約束でないと面白くなくなるだろうか。
例えば画面上の情報表示を工夫し、銃アイコンに撃てる数(例なら15発、あるいは15+1発)、マガジンを持っている数だけマガジンアイコンがあって、それぞれに入っている弾薬の数(例なら15発)が表示されている体裁なら見やすいかも。
タクティカルリロードを行うたびにマガジンがローテーションし、いずれは弾薬の少ないマガジンの順番が来るという仕組みだ。
 
こういう体裁ならば、マガジンごとの残り弾薬のマネジメントによる緊張感が面白いかも知れない。
Fallout3みたいなRPGや、アンチャーテッドみたいなアクションアドベンチャーには向かないが、緊張感のある現代戦のFPSやTPSならば面倒以前に長所になりそうな気さえする。
 
携行重量や体積を考え、メイン・サブ武器ごとにどれだけマガジンを持ち歩くかというセットアップ要素も面白いかもしれない。
成長要素があるゲームならば筋力を鍛え携行可能重量を増やしたり、軽量で済ませれば移動に好影響があるとか、
買い物要素やアンロック要素があるゲームなら、様々な種類の予備マガジンポーチをアイテムとして登場させるとか。
 
フィクションもののシューター作品ならば、貫通(AP弾)・対人(ホローポイント)、炸薬(HE等)といった弾薬種別や、バイオショックのようにもっとフィクションなら、電撃や氷結・毒といった属性弾なんかを
マガジンごとに詰めてリロードのたびに選択切り替えが可能にするとか、もう少しアイデアの幅も広がりそうなものだ。
 
今日の本筋とは異なるが、ゲームでも俺が好きなリロードがひとつあった。
ギアーズオブウォー2のアクティブリロードがそれ。
リロード中に表示されるメーターをドンピシャのタイミングで止めればマーカスが「ぃよ~し!」などと意気揚々になり、補充した弾数(減らしていた弾数)だけ攻撃力が上昇した状態となる。
タイミングを外せばマーカスが「…クソッ!」などとイラつき、リロードに手間取って銃をトントン叩いたりする。
ゲーム的ながら、リロードひとつを面白いものにする素晴らしいシステムだ。
 
 
冗長になってきたのでマトメ…
 
今回、リロードなんてちっぽけなことにいちいち拘って語りたかったのは、
「ゲームだからこんなところでいいでしょ」と当たり前になっているお約束はアイデア次第で打破できたり、逆にそのゲームの個性的な特徴にもなり得るということ。
 
普段俺がどうしても気になってしまう「リロード」を例に挙げてみたが、視野を広くすれば全てのゲームに当てはまる話だ。
 
昨今カバンも持たない美男美女が何百点というアイテムを所持したまま冒険や逃避行をするRPGが当たり前だが、
最大携行アイテム数の少なさがそのままアイテムのマネジメントというゲーム性に直結したモンスターハンターのようなゲームもある。
モンハンは他にも、アイテムを使用する際に当然存在するはずの隙の動作を盛り込んだことで、さらに面白いゲームになったという部分も諸兄がご存知の通りだ。
 
「ゲームだから…」というお約束を上手く打ち破れば、まだまだゲームは面白くなるはず!