Y.S.C.C.vsS.C.相模原:観戦レポート
それは無謀な挑戦なのか
先日行われたW杯アジア最終予選最終節「オーストラリアvs日本」を思い出す。日本が闘莉王のヘッドで先制をしながらオーストラリアに力負けしてしまう。日本代表の、サポーターの意識に世界の壁を感じさせた一戦だ。これから倒そうとする相手より格下の相手に抱いた壁に、我々は指揮官の目標に対して疑問視せざるを得なくなった。
Y.S.C.C. | 3-1 (1-1) |
S.C.相模原 |
前半40分23中村竜也 後半7分23中村竜也 後半27分27平田順也 |
前半28分10坂井洋平 |
早すぎる終戦、厚すぎた全国の壁
対戦経験の少ない両者は手探り状態で試合に入った。楔のパスを入れながらサイドに展開して崩すという典型的な中央突破のスタイルをとった両チームは共に決定機を作りあってスタンドの歓喜と悲鳴を演出する。関東1部上位のチームと神奈川県2部リーグのチームの対戦とは思えない接線ぶりに「S.C.相模原、なかなかやるではないか。」という雰囲気になっていた。
しかし、ひとつの軽率なプレーがS.C.相模原の運命を変える。前半22分にY.S.C.C.の土屋が浅い位置で最終ラインから抜け出してGK榎本と1対1になるシーンだ。慌てたGK榎本が不意に飛び出すと足をかけて倒してしまう。報いは当然、決定機阻止でレッドカード。早い段階で人数が少なくなってしまった上に、GKの交代に交代枠を消費してしまうという最悪の展開だ。
直後に斎藤の突破から坂井のゴールで先制して強さを見せるが、耐え切れずに3失点。10人でそれを覆すには到底無理があった。創立2年。そして2年目でJFLに昇格してやろうと半ば挑発するように挑んだ全社の関東予選はあまりにも無残な結末を迎えた。
軽率すぎたS.C.相模原
S.C.相模原のプレーは全体的に雑だった。技術的には見劣りしないのだが、たとえばシュートを打つタイミング。シュートに限らないがトラップしてからシュートやパスにいたるまでの間が異様に長く感じた。S.C.相模原の技術があれば県リーグレベルのチームに対してならそこから余裕で展開できるのかもしれない。しかしそれは全国レベルのチームを負かすためのプレーではなかった。パスまでの判断が遅いから詰められてポジションを修正されて、シュートまでの判断が遅いからシュートコースを奪われる。そして、これらはほんの一例に過ぎない。
退場となったシーンも「雑なプレー」に当てはまる。飛び出さずに構えていれば、ゴールは阻止できていたかもしれないし、たとえ得点を許しても人数が減ることはなかったので、まだ逆転は可能だったはずだ。
S.C.相模原は県リーグレベルのサッカーに慣れすぎていた。それはアジアトップクラスの代表チームが世界の舞台で全く勝てない理由と似ている。
Y.S.C.C.が『格の違い』を見せ付ける
「SCS?知らねぇなぁ(笑)『格の違い』を見せつけろ!!」Y.S.C.C.のサポーターにより配布されているフリーペーパーには大きくこう書かれていた。先制されながら逆転勝利を収めるという一見すれば苦しんだ試合だが、その内容は正に『格の違い』を見せ付けるものだった。それの『違い』とやらは時間の経過と共に如実に現れる。Y.S.C.C.は一つ一つのプレーを大切にして先制されても焦ることなく攻め続けることで得点を重ねて、S.C.相模原の逆襲を受けても冷静に跳ね除けた。
Y.S.C.C.の関東サッカーリーグでの順位は3位。1枠は日立栃木ウーヴァSCで確定しているため、もう一つの枠をさいたまSCとクラブ・ドラゴンズ、Y.S.C.C.で争っている状況だ。まだまだ余裕がないY.S.C.C.にとって『保険』としての全社の出場権は絶対に必要だった。JFLへ、Y.S.C.C.の挑戦は終わらない。
S.C.相模原が世界を驚かす!
Numberの732号に掲載されていた日本代表DF中沢佑二のインタビューを思い出した。中沢はワールドクラスの選手と対峙するために普段の練習やJリーグの試合から世界を意識したプレーをしているという。
S.C.相模原の今年のJFL昇格の可能性は消滅した。しかしこの段階で全国レベルのチームとガチンコ勝負が出来たのはチームにとって大きな大きな経験になったはず。この敗戦を決してネガティブに捉えることはできない。ジーコジャパンとは違って次の挑戦は4年後ではなくたった1年後となる。来年の挑戦のために、S.C.相模原はこの試合の感覚を忘れることなく、常に全国レベルを意識して腐らずに挑戦していってほしい。そして、岡田ジャパンが言うように、S.C.相模原も(少々狭いが)世界を驚かせてほしい。