日本の最低賃金は物価考慮してもオーストラリアの6割、働くひとり親貧困率は豪の3.5倍、富裕層2倍 | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 昨日の「マクドナルドの時給1500円で日本は滅ぶ? すでに30年実施のオーストラリアは滅んでませんが?」のエントリーに対して、「オーストラリアの物価は日本よりやたら高いのだから最低賃金もやたら高くて当然だ」というような指摘がコメントやツイッター等で寄せられています。

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 上のグラフは「安倍政権下でトップ0.7%の富裕層は増大、20歳代5割・単身4割は貯蓄ゼロになり貧困と地域間格差拡大」の中で紹介した富裕層トップ0.7%(個人資産保有額100万米ドル超)の内訳を見たものです。日本は世界第2位で8%、オーストラリアは第7位で日本の半分の4%です。オーストラリアの最低賃金が日本の倍あるのは物価が高いから当然なのだと言われる方は、オーストラリアの富裕層(個人資産保有額100万米ドル超)は日本の半分しかいないという事実をどのように説明されるのでしょうか? 日本はオーストラリアより最低賃金は半分だけど、日本の富裕層はオーストラリアの2倍いるというのは日本が「貧困大国」であり世界第2位の「富裕層大国」である格差社会だということの証拠だと思います。

 それから、OECDは、各国の物価水準も考慮に入れた購買力平価で換算した実質最低賃金とフルタイム労働者の平均賃金に対する最低賃金の比率という2つのデータも公表しています。

物価水準を考慮に入れても日本の最低賃金はオーストラリアの6割程度しかない

 まず、各国の物価水準も考慮に入れた購買力平価で換算した実質最低賃金を見ると、直近の2013年の数字で、日本は6.7米ドルで、オーストラリアは10.5米ドルです。物価水準を考慮に入れてもオーストラリアは日本の1.56倍の最低賃金額になっているのです。(※日本はオーストラリアの最低賃金の6割程度という水準になります)

 フルタイム労働者の平均賃金に対する最低賃金の比率は、直近の2013年の数字で、日本は39%、オーストラリアは54%です。ここでもオーストラリアの最低賃金は1.38倍になっています。

日本の子どもを持つ女性の賃金はオーストラリアの半分以下

ひとり親が働いている世帯の貧困率はオーストラリアの3.5倍も高い日本


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 こうした日本の最低賃金の低さが現実社会で最も過酷な形であらわれているのが上のグラフです。日本社会の現状の中で最も最低賃金に近いところで働くことを強いられる、子どもを持つ女性の賃金がフルタイム男性労働者のわずか39%になっています。ここでもオーストラリアの81%は、日本の39%の2倍以上になっているのです。

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 そして、上のグラフはこの世界最悪の賃金差別によって生み出されている惨状をあらわすものです。ひとり親が働いている世帯の貧困率で、日本の50.9%は、オーストラリアの14.4%の3.5倍にもなっているのです。

 以上、見て来たように、オーストラリアの物価水準がうんぬんなどと言う方には、オーストラリアより日本の富裕層が2倍も多く存在する一方で、ひとり親が働いている世帯の貧困率が3.5倍もオーストラリアより高いという、「貧困大国日本」の問題をまずもって考えていただきたいと思います。こうした深刻な貧困をもたらしている日本の最低賃金の異常な低さが日本の「反成長戦略」になっているのですから。

(国公一般執行委員 井上伸