労働組合つくると監視カメラ17台で組合員に嫌がらせ、委員長を「容疑者」扱い、社長が社内のルール | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2013年8月20日付No.8757)の「ブラック企業事例紹介」で、JMIU(全日本金属情報機器労働組合) のブラック企業とのたたかいを紹介しています。以下転載します。(★「連合通信」の購読申し込みはこちらまで)


〈ブラック企業事例紹介〉
 監視カメラで組合員に嫌がらせ
 ナノテック 委員長を「容疑者」扱いも


 労働組合を結成 すると、「監視カメラ」が設置され、職場内に警察が介入する──。そんな驚くべき現実が金属加工機器メーカーのナノテック(千葉県柏市)にある。


 ●立ち話で突然出向


 「組合員に対し計17台の監視カメラがある」。JMIUナノテック支部 で委員長を務めるFさんは、昨年5月の組合結成からの激しい組合弾圧の一端について切々と説明し始めた。


 結成の動機は、2008年秋のリーマン・ショック後に止まった一時金の復活だ。同社はそれまでほぼ社長個人用にヘリコプター2機やクルーザー1台を購入するなど資金に余裕があったが、経済危機で一転。当時次長だったFさんを含む管理職の賃金が約3割カットされ、一時金もストップして年収が大幅にダウンした。減給は当初、「景気が回復するまで」を条件にした緊急避難措置だったが、賃金カットは今も続く。


 組合結成以降、監視カメラは増え続けた。以前は玄関や施設の外など敷地内にカメラは計4台程度だったが、組合員のデスク正面などにも設置された。会社は「社内にある顧客の財産や機密書類を見張るための防犯カメラ」としているが、Fさんは「書類のない製造現場にカメラがあるのに、社長室と経理の部屋には一切ない」と首をかしげる。団体交渉で問い詰めても、「それは会社の判断だ」と一蹴された。


 カメラにはマイク機能もある。女性社員が立ち話でカメラに不満を漏らしたところ、翌週に関連会社の製造現場に出向を命じられた。Fさんは「社員はみんな言葉を選んで世間話をしている」と明かす。


 ●組合攻撃で事業に影響


 嫌がらせは、Fさんが「容疑者」扱いされるまでに及んでいる。


 昨年11月下旬、社長は事務所内の自らの机上に手紙を突然放置した。手紙はFさんが9年前に昇進した際、社長個人に宛てた礼状だが、誰にでも読める状態だった。社長に内線で撤去を求めたが、連絡が取れない状況が1カ月半続き、今年1月にやむなく回収した。ところが、社長は「重要書類が紛失した」と警察に被害届を提出。社員全員が事情聴取を受け、Fさんは窃盗容疑で出頭させられた。


 「明らかに組合への精神的圧力をかけたもの」とFさんは怒りを隠さないが、警察はFさんを書類送検する方針だという。激しい攻撃で結成当時19人いた組合員は8人に減少。大半が会社のやり方に嫌気をさして職場を去った。人手不足のため、製造ラインの稼働率が低下するなど事業に影響も出ているという。


 7月には被害届の撤回や一時金の支給などを求めて断続的な時限ストライキで望んだが、全てゼロ回答。今も街頭宣伝やビラ配りなどで会社の不当性を訴えているFさんはこう嘆く。


 「2年前まで私は普通の中間管理職だった。そんなに組合をつくることが悪いのか。社長は収益を上げることよりも、組合敵視ばかりで人材まで流失している。自分の首を絞めていることになぜ気付かないのか」



〈ブラック企業事例紹介〉
 「社長が社内のルール」
 ジャパンメインテナンス 法律通じない職場


 法律ではなく、社長が会社のルール。そんな非常識が自動車整備を行うジャパンメインテナンス(千葉県柏市)でまかり通っている。


 ●あいさつなしで賞与減額


 バスやトラックの燃料噴射ポンプの整備を担当するTさんは、昨年度の決算賞与を2割減らされた。仕事中に数秒間顔を見せた社長に対しあいさつがなかったことが理由だ。Tさんは「機械を相手に作業をしており、急にあいさつはできない」と抗議したが、「あいさつが一番。しないのは減給だ」と開き直られた。


 同社は2007年、自動車部品などを販売・修理する高輪ヂーゼルに買収され、親会社の社長が同社社長職も兼務し始めてから「従業員の待遇が激変した」という。買収後に賃金の3割カットを提示。応じなければ職場を去るしかなく、残った社員はやむなく契約書にサインした。ある社員は父親が亡くなったため年次有給休暇を申請したところ、「前例がない」と断られた。東日本大震災の際、賞与の1割を強制的に「募金」させられ、支給日の当日に「天引き」を知らされたこともあった。


 社長の横暴に耐えかねて昨年末に社員8人で「JMIU高輪ヂーゼルグループ支部」 を結成。Tさんは委員長に就いた。


 ●「違法」指摘に逆ギレ


 組合は労働環境の改善を図ろうと、会社に三六協定が整備されていないため残業できないことを問いただすと、社長は「仕事があるのに残業をさせるなという組合の方がおかしい」と逆ギレ。全社員の前でTさんの頭を下げさせた。Tさんは「社長は法律やルールを全く気にしない」と嘆く。


 社長の意に逆らえば厳しい制裁が待っている。受付業務を担当するOさんは、駅前で大声を張り上げる研修への参加を断ったため、社長賞10万円の返金を命じられた。昨年末には仕事上のミスを理由に賞与50万円を10分の1にまでカットされた。


 ●「将来のハードルは社長」


 組合によると、賞与の査定は主に残業時間と年休の取得日数で判断されている。Oさんは「社長は現場にほとんど足を運ばない。仕事ぶりを評価しているわけではない」と内情を明かす。社長のさじ加減で賞与の額が決まるため、5歳と2歳の子どもを育てているOさんは「月給が低過ぎてそれだけでは家計は赤字。賞与を当てにした生活が怖い」と訴える。


 組合は7月末までに2回目の団体交渉を終えたばかり。労働条件の改善は進んでいない。Tさんは「このままでは若手は育たない。会社にとっての最大のハードルは社長だ」と漏らした。