子どもの被曝軽視、福島住民切り捨ての原子力規制委員会の政府人事案は原子力ムラ再興をめざすもの | すくらむ

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 20万人が参加した7月29日の脱原発国会大包囲行動。日比谷公園での集会で、青山学院大学の小島敏郎教授は要旨次のように訴えました。


 政府が原発の安全規制を一元的に担う原子力規制委員会を「原子力ムラ」のメンバーで発足させようとしています。この原子力規制委員会が発足すると、たとえば、野田首相は「こうした抗議行動は、もう首相官邸に来てはいけませんよ。もう首相官邸で抗議してもしょうがないですよ。私、何の権限もないですから。これからは、原子力規制委員会が再稼働するかどうか決めるのです」と言えることになります。


 もう政治は関係ありません。なぜなら、原子力規制委員会は政治から独立した委員会ですから、という状態が今後5年間は続くわけです。選挙で政権が変わろうが何をしようが、国民から独立した原子力規制委員会が決めるというわけです。


 この原子力規制委員会の政府人事は、「原子力ムラ」の村長さんと、その仲間がメンバーです。大飯原発再稼働を果たした関西電力の社長が「次は高浜原発の再稼働だ」と言いました。枝野経済産業大臣は「それは原子力規制委員会が発足してからにしてくれ」と言って不快感を示しました。


 政府の考えている原子力規制委員会のメンバーは「原子力ムラ」の方々です。関西電力の仲間です。すぐに原発再稼働がなし崩しに進みます。しかし、今度は首相官邸前に抗議に行っても、「決めるのは原子力規制委員会だ」「もう政治は関係ありませんよ」ということになってしまう危険性があります。


 いまパブリックコメントもあります。これは形を変えた国民投票です。みなさん、ぜひ、パブリックコメントで原発ゼロという意見を出していただきたい。原発ゼロの意見が100万通、あるいは500万通と来れば、これはもはや国民投票です。こうしたことで、政治家を動かして行かなければなりません。
 ▼パブリックコメント送付方法(PDFファイル)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120702/20120702.pdf


 原発ゼロの声を広げ、この5年間、「原子力ムラ」の人たちのやりたい放題になってしまわないように、原子力規制委員会の「原子力ムラ人事」をやめさせましょう。


 以上が小島敏郎教授の訴えです。この訴えの中で述べられている原子力規制委員会の「原子力ムラ人事」というのは具体的にどうなっているのか、ちょっと調べてみたものが以下です。


 9月に発足する原子力規制委員会の国会同意人事案は、田中俊一氏、更田豊志氏、大島賢三氏、中村佳代子氏、島崎邦彦氏の5名。


 原子力規制委員会の人事案で「委員長」として指名されている田中俊一氏は、日本原子力研究所副理事長、原子力委員会委員長代理を経て、高度情報科学技術研究機構顧問などを歴任。『東京新聞』7月24日付の「こちら特報部 規制委員長内定 田中氏の『素顔』市民派より『ムラ人』被ばく楽観、帰還後押し」という記事によると、田中氏は「委員を務める政府の原子力損害賠償紛争審査会の議論では、自主避難者に賠償を求める方針に異を唱え、国が住民帰還の目安となる年20ミリシーベルトという基準への賛意を強調してきた。」、「昨年12月6日の会合では『放射線被ばくの恐怖と不安は個人差も大きく(中略)、賠償という形で対応することが、克服する最も適切な方法であるとは考えていません』と発言している。」「被災者たちの間では田中氏に対し、『東電を助けるために住民を切り捨てている』といった批判の声も上がっている。」とのことです。


 また、田中氏は、低線量被曝のリスクについての認識がなく、「100ミリシーベルトというのは健康に大きな影響がないということ。このあたりをどう今後住民に、折り合いをつけていただくかということが大変大事」と発言しています。(2011年8月23日第32回原子力委員会議事録)


 同人事案で「委員」の一人として指名されている中村佳代子氏(日本アイソトープ協会プロジェクトチーム主査)は、『読売新聞』7月22日付の「原子力規制委員に起用予定 中村氏、いわきで講演」という記事によると、「低線量被曝では子供と大人で発がんリスクに差がなく、原発事故による住民の被曝線量も十分に低い」と講演したとのことです。


 それから、『朝日新聞』7月27日付の「原子力規制委候補2人に報酬・講演料 電力会社、数年前」という記事では、「新たに原発の安全規制を担う原子力規制委員会の委員として野田内閣が衆参両院に人事案を提示した5人のうち、日本原子力研究開発機構の更田(ふけた)豊志・原子力基礎工学研究部門副部門長(54)と地震予知連絡会長の島崎邦彦・東大名誉教授(66)の2人が、原発を持つ電力会社から報酬や講演料を受けていたことがわかった。」と報じられています。


 こうした報道を見る限り、『東京新聞』の「こちら特報部デスク」の以下の危惧はもっともだと思います。


 この人事は、首相官邸前行動や17万人の脱原発集会に対する政府の回答なのだろう。再稼働のため、大飯原発以外にも、約20基が安全評価(ストレステスト)の1次評価を終え、規制委の始動を待っている。国会がこの人事を通せば、結果は火を見るより明らかだ。原子力ムラの再興は許されない。(『東京新聞』7月24日付の「こちら特報部 規制委員長内定 田中氏の『素顔』市民派より『ムラ人』被ばく楽観、帰還後押し」の「デスクメモ」より)


(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan