福島原発の爆風受け最初の被曝者になりながらも患者さんの命守る看護師の仲間(中央メーデーから) | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※きょう代々木公園で開催された第83回中央メーデーから、福島の仲間の発言と、全労連・大黒作治議長の開会あいさつ、「メーデー宣言」を紹介します。


 ※最初に、福島県厚生連労働組合の仲間で看護師の方の発言を紹介します。


 私の勤務していた双葉厚生病院は、震災の日まで同じ双葉郡にある、大熊町の病院との統合に向け、準備に追われていました。


 3.11の東北大地震の規模は想像をはるかに超え、津波による甚大な被害をもたらしました。津波が来るという知らせに患者さんを病院の高い所に移動しました。津波は病院から500メートルのところで止まりましたが地震でひどく損壊した病院を見て途方にくれていました。そこへ、避難指示が出て、情報もまともに得られない中で、患者さんを近くの高校のグラウンドに搬送し、自衛隊のヘリを待っていました。


 その時です。第1原発の1号機が爆発しました。そこは、原発から、3キロメートルのところにもかかわらず、体が後ろに動くほどの衝撃を受けました。白い煙が見え、空から何かが降ってきました。その時、命の覚悟をしました。最初の被曝者と報道されました。しかし、家族との連絡も後回しにし、患者さんを避難所に移動し必死で看護にあたりました。除染を受けながら、自分も避難したいという葛藤の中での看護でした。その屈辱と辛さは忘れることができません。


 その後、内部被曝検査を受けに行きましたが、「自然界に存在する量とほぼ同量であり問題ない」と言われました。しかし、自然界と体内と比較することもおかしいし、科学的根拠も確立されていない段階で「問題ない」と言われても安心できません。将来何かあったとしても補償は無いだろうと言われました。


 今回の震災で、福島市にある厚生連本部も大きな被害を受け、一時、指揮・命令機能が失われました。しかし、震災直後から、労働組合が動いてくれました。物資・精神両面からの支援は大きな心の支えになりました。やめようと思った看護師を続けられているのも、そういった支えがあったからです。現在、当労組は脱原発に向けての運動を強化しているところです。


 いま、私は将来のビジョンがまったく描けません。故郷に帰りたいけど帰れない。お墓もそのままです。現在の住まいに落ち着くまで転々と移動をしました。いっそいろんなことを吹っ切って、まったく別の土地に根を下ろしたいとも考えます。でも、バラバラになった双葉厚生病院の仲間とまた一緒に働きたい。家族ともバラバラになってしまった今、どこに行ったらいいか分からないのです。無くしたものは、大きすぎます。


 今回の事故で初めて「福島第1原発は大きな震災に対応できない」と言っていた専門家の意見に、政府と東電の上層部が対応してこなかったことが明らかになりました。そのことを知らされず安全神話を信じた住民が犠牲になりました。決して同じ過ちを繰り返してはいけないことはハッキリしています。それなのに原発ゼロや、自然エネルギーについて真剣に考えず、なし崩し的に原発の再稼働をすすめる政府に憤りを感じます。また同じことを繰り返そうとしているのか、どうして政局や消費税についての話ばかりしているのか。政府や東電に対しては不信感、怒りしかありません。


 私は本当の居場所がまだ見つかりません。しかし、同じことを繰り返さないために、私に出来ることをしたいと思っています。これからもみなさんと一緒に力を合わせて頑張っていきたいと思います。



 ※つづいて、全労連・大黒作治議長の中央メーデー開会あいさつを紹介します。



 第83回中央メーデー開会あいさつ(全労連・大黒作治議長)


 第83回メーデー中央集会の開会にあたって、実行委員会を代表してご挨拶申し上げます。


 昨年の3.11東日本大震災から1年2カ月近くが経過しました。ご承知のように被災地の復興は遅々として進まず、福島第1原発の収束がままならない中、仮設住宅をはじめ全国に避難されている方々も含めていまだに34万人以上が避難生活を余儀なくされています。私たちは、1日も早く被災者本位の復興に尽力し、放射能汚染による除染や損害賠償などを政府と東京電力が全責任を果たすよう強く求めるものであります。


 さてみなさん。今年のメーデーは、野田内閣が命をかけてと公言する「社会保障と税の一体改革」、さらには、大飯原発の再稼働、TPPへの交渉参加などの暴走を許さないために、これまで築いてきた到達を共有し、さらにたたかいを発展させる決意を固めあう場にしたいと思います。


 まず第1に、国民の暮らしぶりを見た時、この10数年の間に、可処分所得は1997年の596万円から、2010年には504万円と92万円も減り、消費支出は429万円から370万円へと59万円も減り続けています。しかも社会保障は、国民健康保険料や介護保険料、「姥捨て山」と言われた後期高齢者医療制度など負担増と給付の切り下げ、年金制度の改悪によって国民生活には耐え難い犠牲が強いられ続けてきました。収入減と将来不安が付きまとう中で物が売れない、仕事も減るというこの悪循環を断ち切ることが求められています。


 その点で当面の焦点が、消費税率10%に引き上げる庶民増税を許さないたたかいです。


 今回の消費税10%への引き上げと年金削減などを合せると新たに20兆円、1世帯当たり実質25.5万円もの負担増と所得減少になり、税収の落ち込みは97年の時よりひどくなることは目に見えています。財界やマスコミは、もろ手を挙げて消費税増税の後押しをしていますが、そういう中でも国民の6割以上は反対という世論結果であり、反対世論は日毎に高まってきています。


 私たちは、消費税をあげなくても、社会保障を改悪しなくても財政危機を打開する道はあると考えます。その方向は、「構造改革」で優遇してきたほんの一握りの大企業や資産家の税制を改め、憲法の精神に立脚した「応能負担」の原則と税の再配分機能を強め、改悪に次ぐ改悪でズタズタにされた社会保障制度を修復する。同時に軍事費や米軍の思いやり予算、大型公共事業など無駄を削減することに政治が踏み出すことだと思います。そして冷え切った国民の懐を温め、消費購買力を高めることです。国民の暮らし第一の内需拡大に向けて政治が大きく舵を切り替えれば、疲弊している地方経済も立ち直ります。この道こそ、確かな未来を切り開く鍵だと思います。


 第2は、春闘再生に向けた取り組みの強化です。経団連は、270万社と言われる法人企業のうち1%にも満たないほんの一握りの資本金10億円以上の大企業が266兆円もの内部留保をため込んでいるにもかかわらず、「国際競争力の強化」を旗印に賃上げを拒否し、定期昇給も企業の負担になっているから見直せと提言しています。そして、政府には消費税の引上げ、TPP参加、労働諸法制の見直しを求めるなど、その横暴さは目に余るものがあります。


 こうした中でも私たちは、今年の春闘を「雇用と仕事の確保、賃上げ、社会保障の充実で内需中心の経済、震災復興を」のスローガンを文字通り実現するために、取り組みを強めてまいりました。これまでの集計では咋年水準を若干上回り、中小や建設関係などは引き続き交渉が続いています。公契約適正化では、首都圏をはじめ多くの自治体で条例化の動きが広がってきました。未払い残業の改善など「働くルール」とILOが提唱する「ディーセントワーク」を追求し、賃金の底上げと最賃の大幅引き上げ、安定した雇用を確保するために公契約適正化運動をさらに発展させようではありませんか。


 日本航空の不当解雇と闘う原告団に対して、東京地裁はJALの言い分を丸呑みした「不当判決」を出しましたが、原告団は控訴し闘う決意を表明しています。旧社保庁職員の分限解雇も人事院の公平審理の中で、厚労省が「分限解雇」の回避努力をして来なかった事実が明らかになり、夏以降にも人事院の判定が出されるという局面を迎えています。また製造大企業が非正規労働者を使い捨てにした不当性を争ったホンダ、いすゞなどの裁判でも、企業経営優先の判決が続いています。


 働く者は、何よりも安定した雇用、まともに暮らせる賃金・権利の確保を求めています。財界や政府による「解雇の自由化」を許さず、「空の安全」や「安心できる年金制度」を求めて、働く者の団結と連帯をさらに強め、全国的な支援を呼びかけるものです。


 第3は、野田内閣の原発再稼働ありきの動きに対して、原発なくせの全国的な運動がこれまでとは違う国民的運動として草の根から広がっていることです。


 震災・福島第1原発事故から1年目の3月11日、「被災地の早期復興、原発なくせ」の要求での運動が全国各地に広がりました。政治信条などをこえて青年や「パパ、ママ」、市民が声を出し、行動に立ち上がりました。その行動は変化し、政治を変えなければと国会にも目が向かい始めています。


 政府や財界は、福島原発事故収束のめども立たないのに、今後のエネルギー確保を口実に「原発推進・再稼働」を画策していますが、5月6日を迎えると日本の54基ある原発はすべて停止し、原発ゼロの日が実現します。「電力不足」や「安全神話」に基づく原発推進・再稼働をストップさせ、再生可能な自然エネルギーの活用などエネルギー政策の転換を求めていこうではありませんか。


 TPP(環太平洋連携協定)への交渉参加に反対する世論の高まりとJA中央会や日本医師会などとの中央・地方における共同も大きく広がっています。この間JA中央会は野田首相あてに「TPP交渉参加反対」の態度を表明しつつ、農業だけの問題ではないと署名活動、集会、シンポジウムなどを展開し、このメーデーには連帯のメッセージを頂いています。日本医師会も各地でJAや私たちとの共同を追求し、国民的な課題として発展させようとしています。


 私たちも雇用、仕事、公務・公共サービス、金融・サービス部門や働く者の賃金・労働条件などへの影響を明らかにしながら、対話と共同を繰り広げてきました。農業問題だけでなく、医療・金融・保険・雇用などの分野でもアメリカ政府や議会、自動車・電機など一部輸出大企業の利益確保と引き換えにTPP参加を推進する財界のいうがままになれば、国民生活は大きな打撃を受けます。TPP問題をきっかけに、21世紀の日本社会のあり方とも結んで、東南アジア諸国との主体的な関税自主権・食料主権を尊重した経済圏の確立を追求することが求められていると思います。


 今年は1952年に締結された日米安保条約60周年の年です。エネルギー主権を脅かす原発も、食糧主権を脅かすTPP参加も、沖縄の米軍基地建設も日米安保条約の存在が根っこにあります。今日のメーデーを機に、改めて安保条約廃棄の旗を掲げて日本の未来を見つめる機会にしていきましょう。


 みなさん。本日のメーデーを契機に、財界・大企業とアメリカに追従する野田内閣の暴走を食い止め、「貧困と格差」の解消、安定した雇用と社会保障の拡充をはかれの運動を強めようではありませんか。長い間続いてきた日本の社会経済の閉塞感を打ち破り、成長が止まった日本経済を立て直すために、今こそ労働運動が社会的役割を発揮できるよう奮闘しようではありませんか。


 消費税増税と社会保障改悪・TPP参加反対、そして世界が見つめる大震災からの早期復興、原発をなくして希望に輝く未来を語れる社会をめざして力を合わせてたたかいましょう。


 世界の労働者団結せよ。第83回メーデー万歳。



 ※最後にメーデー宣言を紹介します。



 第83回メーデー宣言


 私たちは本日、労働者・国民の団結と連帯の力で第83回中央メーデーを成功させました。


 国民生活の危機、日本の危機が進行し、歴史的な転換の時期にある今こそ、メーデーの原点に立ち返り、すべての働く者が連帯と共同の力を発揮したたたかいで、くらしと雇用・仕事が安定した憲法がいきる社会をめざすことを確認しました。


 消費税増税、TPP参加を推し進めようとする野田政権の悪政との当面のたたかいや、3.11東日本大震災からの早期復興と原発ゼロにむけたとりくみに力を寄せあい、要求実現をめざす決意を固めあいました。


 すべての労働者・国民のみなさん


 「3.11」から1年余が経過しましたが、被災地の傷跡は余りに大きく、くらしも生業も復旧にはほど遠い状況です。仮設住宅での相次ぐ孤独死、ゼネコン主導の復興による賃金ピンハネの横行、職を求め、ハローワークに列をなす労働者―いま被災地では生活の再建とそれを支える雇用の確保が喫緊の課題です。


 原発事故が未だに収束しない福島では、16万人もの方々が故郷を追われ、多くの方々が健康と将来に不安をかかえながらの生活を強いられています。政府の対応は、災害に比して不十分で政治災害の状況です。


 こうしたもとで野田政権は、消費税率を10%に引き上げる大増税の法案を提出し、国内産業に壊滅的な打撃を与えるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加表明を行おうとしています。福島原発事故の原因が未解明な段階で、「大飯原発再稼働」を押し進めようとしています。被災者と被災地域にさらなる負担を押し付け、その心情を顧みない悪政に、激しい怒りが沸き起っています。


 私たちは、その怒りに共鳴し、一部の大金持ちや輸出大企業の求める政治から「99%」の国民が望む政治への転換を求めます。生活危機突破の要求を高く掲げてたたかいを広げ、野田政権を追い詰めましょう。


 すべての労働者・国民のみなさん


 2000年代を通じ、日本の労働者の賃金は減少し続けてきました。不安定で劣悪な労働条件を強制される非正規労働者も増加し続けました。労働者の状態悪化が国内消費を縮小させ、日本は成長しない国になりました。一部の大金持ちと大企業に富が集中し、格差と貧困が拡大し続けています。大企業が元気になっても、労働者の雇用は安定せず、所得も増えず、地域経済も活性化しませんでした。国や地方自治体の財政も悪化の一途です。


 いま必要なのは、デフレ・スパイラル=負の連鎖を止め、内需中心の経済に転換させることです。賃上げと雇用の安定と適正な下請け単価の支払いのための規制を強め、被災者本位の震災復興に全力を挙げ、年金、医療などの社会保障を充実するなど、労働者・国民の懐をあたためる施策を大胆に進めることです。巨額な内部留保をため込む大企業などに応分の負担を求め、軍事費などの無駄を削減して内需拡大の財源を確保することです。


 今の生活を守り明日の日本社会に希望をつなぐたたかいに立ち上がりましょう。


 大阪・維新の会による憲法違反・競争主義強化の二条例制定や組合攻撃とのたたかいなど、憲法をないがしろにする逆流とのたたかいを強めましょう。


 すべての労働者・国民のみなさん


 日本でも世界でも、変化がおきています。6割の国民が「脱原発」を切望し、さる3月11日には全国で10数万人以上が「震災復興と原発ゼロ」を求めて行動に立ち上がりました。消費税増税や「TPP参加」反対のたたかいでは、要求の一致点での国民的共同が全国で広がっています。アメリカでは「ウォール街占拠」運動が世論を動かし、ヨーロッパでは投機のつけ回しによる財政緊縮策に反対するたたかいが国境をこえて広がっています。


 震災に便乗した期間社員の雇止めを撤回させる一方で、解雇・雇止めを容認する不当判決が出されるなど、労働者の権利と雇用をめぐる状況も複雑です。しかし、働くものすべてが力をあわせ、明日への希望を持ってたたかいつづければ、攻撃は必ず跳ね返すことができます。それは、世界の動きとメーデーの歴史からも明らかです。


 今日を機に、「99%」の力の総結集で「雇用と仕事の確保、賃上げ、社会保障拡充で、内需中心の経済、震災復興、原発ゼロ」のたたかいを飛躍的に前進させましょう。


 働く者の団結万歳! 世界の労働者万歳! 第83回中央メーデー万歳!


 2012年5月1日
 第83回中央メーデー集会