「財政悪化の要因は社会保障費の膨張だ」(朝日新聞社説)の大ウソ-日本の社会保障は先進国最低 | すくらむ

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 昨日に続いて3月31日付「朝日新聞」の社説「税制改革の法案提出―やはり消費増税は必要だ」に書かれていることへの反論です。


 この「朝日新聞」の社説の中で、「財政悪化の最大の要因は、社会保障費の膨張だ。」と断定していますが、本当でしょうか?


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 上の表は、国立社会保障・人口問題研究所のホームページに掲載されている「社会保障への税負担(国民所得比)の国際比較」です。


 日本の税負担は70年代から80年代前半ぐらいまでは、イギリスの半分ぐらいしか税負担がありません。84年から92年までと2008年の税負担だけは、アメリカよりも高くなっていますが、他の年は6カ国の中で最低の税負担です。


 日本の税負担は一貫して、スウェーデンの半分以下です。そして、直近の2008年の数字を見ると、日本の税負担は、フランスの66%、イギリスの67%、ドイツの79%しかありません。2011年の日本の税負担を見てもむしろ減少しています。この客観的な数字の一体どこを見て、「朝日新聞」は、「財政悪化の最大の要因は、社会保障費の膨張だ。」などと言っているのでしょうか? まったくもって見識を疑わざるを得ません。


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 日本の社会保障の税負担は先進主要国で最も低いのですが、上のグラフと表にあるように、とりわけ貧困を解消するための公費支出が低いというのも特徴の一つです。そして、貧困層ほど負担の重い消費税を増税してきたことも加えて下のグラフのように「貧困率」「子どもの貧困率」は増大する一方です。


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 それでは、「財政悪化の最大の要因」は何でしょうか?



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 上のグラフは、総務省「行政投資実績」の「日本の公共事業投資の推移」です。1986年までは年間20数兆円だった公共事業投資が1987年から増え始め、1993年と1995年には年間50兆円を超え異常に膨張しました。1980年代の公共事業投資の合計が291兆3,439億円であるのに対して、1990年代の合計は460兆2,869億円と1.6倍にも増えているのです。


 この90年代、社会保障費は年間20兆円程度しかなく、「大型公共事業費50兆円」に対して「社会保障費20兆円」というのは、国民の暮らしに背を向ける「逆立ち財政」だと私たち労働組合は批判していました。


 上のグラフにある「海部・ブッシュ430兆円のとりきめ」というのは、日米構造協議で、アメリカ政府が日本政府に対して、公共事業投資を大幅に拡大することを要求し、海部内閣が10年間で総額430兆円を使う「公共投資基本計画」を1990年に決定したことをさしています。また、「村山・クリントン630兆円のとりきめ」は、アメリカ政府の要求でさらに200兆円上積みして630兆円としたことをさしています。この問題について、1997年2月の衆議院予算委員会で当時の橋本首相は、「当時、アメリカ側が構造協議で求めてきたことは、わが国の公共投資の総枠を飛躍的に増やすことであり、同時にアメリカ企業の参入しやすいと思われるいくつかの分野に、その公共投資の相当部分をシフトせよという要求でありました。要求の背後にあったのは、当時の貿易収支でのわが国の大幅な黒字であり、アメリカ側の赤字であります」と述べているのです。



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 上のグラフは、財務省のホームページに掲載されている「GDPに占める先進主要国の公共事業費比率」です。


 公共事業費が年間50兆円を超えて、GDP比でも一番多かった1995年を見ると、日本の公共事業費6.4%というのは、イギリスの2.0%の3倍以上という異常な膨張ぶりで、全国各地にムダな道路やダムなどの巨大開発が次々と進められたのです。



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 そして、上のグラフは、昨日も紹介した財務省のホームページに掲載されている財政赤字の推移です。90年代に膨張した公共事業費にあわせたように財政赤字は急カーブで増えています。


 イギリスの3倍以上も税金をつかった公共事業費と、イギリスの半分しか税金をつかっておらず、今後も先進主要国で最低の税金しか投入されない社会保障費。「財政悪化の最大の要因は、社会保障費の膨張だ。」などとウソの断定をした「朝日新聞」は、間違いを認め、「訂正記事」を書くべきです。


(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)