野田政権によるショック・ドクトリン-震災利用し消費税増税・TPP参加・国家公務員大幅賃下げ狙う | すくらむ

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 『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』(岩波書店)と題した著作をもつナオミ・クラインが、2011年10月6日にウォール街のリバティ広場で行ったスピーチの一部と、雑誌への寄稿文の一部を紹介します。(※スピーチはYouTubeで見ることができます。→ナオミ・クライン「ウォール街を占拠せよ 今世界で最も重要なこと」


 ▼ナオミ・クライン「ウォール街を占拠せよ 今世界で最も重要なこと」
 Occupy Wall Street: The Most Important Thing in the World Now
 (2011年10月6日 リバティ広場でのスピーチから一部抜粋)


 昨日、労働者のデモで講演者の一人がこう言いました。「我々はお互いを見つけたのだ」と。この感想は、今まさにここで形成されているものの美しさを捉えています。より良い世界を望むすべての人々が、お互いを見つけるために、大きく開かれた空間を。同様に、どの空間も収容することができないほど、大きなアイディアを。私たちは大きな嬉しさに包まれています。


 私が知っていることが一つあるとすれば、1%の富裕層は「危機を愛している」ということです。人々がパニックに陥り、絶望し、何をすればいいのか誰も見当もつかない、その時こそ、彼らが企業優先政策の「欲しい物リスト」を押し通す、理想的な時なのです。教育と社会保障を民営化する、公共サービスを大幅に削減する、企業の力への最後の制約を取り除く。この経済危機の最中、これが世界中で起こっていることなのです。


 そして、この戦略を防ぐたった一つのものがあります、幸いにもそれはとても大きなものです。それは99%です。残りの99%がマディソンからマドリッドまで通りに繰り出し、「ノー! 私たちはお前たちの危機に金を払うつもりはない」と言うことです。



 十年という時がもたらした最大の違いは、1999年には私たちは熱狂的な好景気の絶頂時に、資本主義と対決していたということです。失業率は低く、株式のポートフォリオは急騰していました。メディアは金融緩和政策に酔っていた。当時それは操業停止ではなく、新設企業に関するものばかりでした。


 私たちは、熱狂の背後にある規制撤廃が相当の犠牲を払うものであることを、指摘しました。それは労働基準に損害を与えていました。それは環境基準にも損害を与えていました。企業は政府よりも強力になろうとしており、民主主義に損害を与えていました。しかし、あなたたちに正直に言うなら、良い時代が過ぎる中で、貪欲に基づく経済システムに挑むことは、困難な説得でした。少なくとも豊かな国々ではそうでした。


 十年後の今、もはや豊かな国などないかのようです。ただ、たくさんの豊かな人たちがいるだけです。公共の富を略奪し、世界中の天然資源を使い尽くしながら、豊かになった人たちです。


 論点は、今日では誰もが見て取れるように、このシステムがとてつもなく不公正で、制御不能なまま疾走していることにあります。足かせをはずされた貪欲は、世界経済を破壊しました。


 私たちの時代の課題は、これをひっくり返すことです。私たちには、まともで包摂的な社会を構築するだけの余裕があるのだ、と主張し続けることです。


 今度は私たちの運動は、出来事によって気を逸らされても、分断されても、燃え尽きても、一掃されてもなりません。今度こそ、私たちは成功しなければなりません。私が言っているのは、銀行を規制し、金持ちに増税することではありません。それらも重要なことではあるとはいえ。


 私が言っているのは、私たちの社会を統治している根本的な価値観を変える、ということです。それは、メディア好みの一つの要求事項にぴったり収めるのは難しいし、どういう風に成し遂げればいいのか把握するのも難しいことです。しかし、難しくてもなお緊急を要することなのです。


 私はそれを、この広場で起こっていることに見ているのです。互いに食べ物を与えあい、互いに暖めあい、自由に情報を共有し、無料の医療や「瞑想のクラス」と呼ばれているものを提供し、エンパワーメントの訓練を施すというやり方の中に。私がここで気に入ったサインは、「私はあなたを気にかけている(I care about you)」と言っています。お互いの視線を避けるように人々を訓練する文化――言うなれば「奴らには死なせておけ」の文化――において、これは深遠でラディカルな声明です。


 私たちは、経済的にも政治的にも地球上で最も強力な勢力に、喧嘩をふっかけました。それは恐ろしいことです。そしてこの運動が、ますます強力に成長するにつれ、もっと恐ろしいことになるでしょう。そこには小さな目標へと移行する誘惑があることに、常に警戒しておいてください。例えば、この集会であなたの隣に座っている人に対して、のようにです。結局のところ、それは勝つのが容易な闘いなのです。


 そうした誘惑に屈してはなりません。私はくだらないことで言い争うな、とは言いません。しかし今度こそは、これからの長い長い年月のために、私たちが協力して働こうと計画したかのように、お互いを取り扱いましょう。なぜなら待ち受けている課題が、まさにそれを要求するからです。


 この素晴らしい運動を、それが世界で最も重要なことであるかのように取り扱いましょう。なぜなら、実際にそうだからです。本当にそうなのですから。


 ▼ナオミ・クライン ロンドンの暴動について
  昼間の泥棒が夜の泥棒と出会う
  『amandla』amandla publishers 2011年8月19日


 「イギリスはラテンアメリカではない。そして暴動は政治的なものではない」――こうした台詞を、本気で語る人々がいる。大規模な銀行への救済措置と、その後に続くふてぶてしい記録的な額のボーナスなど行われなかったかのように。緊急のリーマンショック後のG8とG20の会合で、リーダーたちは、全体で次のようなことを決めた。「銀行家たちを罰しない」、「リーマンショックのような危機が再び起こるのを防ぐための真剣な対策を行わない」――そのかわり、リーダーたちはそれぞれの国に帰り、もっとも無防備で弱い層の人々に犠牲を強いた。公共セクターの労働者を解雇し、教師を身代わりの犠牲にし、図書館を閉鎖し、授業料を上げ、労働組合との協定を撤廃し、国の資産の私有化をものすごい勢いで行い、年金、社会保障を切り下げた。そして、テレビでこれら年金や社会保障の受給権を諦めるよう講義しているのは誰か? もちろん、銀行家やヘッジファンドのマネージャーたちだ。


 これが、グローバルな略奪、大規模な獲得だ。年金、社会保障を受給することに対する病的な攻撃に助けられて、この略奪はすべて、明かりがついた中で行われた。まるで隠す必要のあるものなど存在しないかのように。


 ――以上がナオミ・クラインのスピーチと寄稿文の一部です。日本においても思いあたる節がいくつもあることに気づくのではないでしょうか。


 ナオミ・クラインは著作『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』の中で、市場主義を貫徹する最善の時期と方法は、大きなショックの直後で、経済の崩壊でも、天災でもテロでも戦争でもいい。肝心なのはそのショックで社会全体の抵抗力が弱まり、人々が混乱して自分を見失った一瞬のすきを衝いて「経済のショック療法」=国家の極端な改造を強行するやり方――急進的市場経済改革の達成は大規模な危機なしにはありえないと指摘しています。


 ケインズ主義に反対して徹底した自由市場主義を主張したシカゴ学派の経済学者ミルトン・フリードマン。フリードマンは、投資家の利益を代弁し、「大きな政府」や「福祉国家」をさかんに攻撃し、国家の役割は警察と契約強制以外はすべて民営化し、市場の決定に委ねよと説きました。そして、フリードマンは、「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」と主張しました。


 このフリードマンの主張をクラインは「ショック・ドクトリン」と呼び、現代の最も危険な思想とみなしています。近年の悪名高い人権侵害は、とかく反民主主義的な体制によるサディスト的な残虐行為と見られがちですが、実は民衆を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画されたものであり、急進的な市場主義改革を強行するために利用されてきたのだ、とクラインは指摘します。


 こうしたクラインの指摘は、今の日本にもあてはまりそうです。たとえば、橋下徹大阪市長の“恐怖支配”を思わせる次々繰り出される市職員や教職員等への人権侵害が「実は市職員や教職員を震え上がらせて抵抗力を奪うために綿密に計画されたものであり、急進的な市場主義改革を強行するためのもの」だと言えるのではないでしょうか。


 そして、国政において野田政権は、東日本大震災・福島原発事故の惨事に便乗して大企業減税と消費税増税、TPP参加や、「財政危機と震災復興財源を口実」とする国家公務員の大幅賃下げを強行しようとしています。こうした野田政権のやり方は、東日本大震災という惨事に便乗したショック・ドクトリンと言えるのではないでしょうか。


 公務員労働者は99%の仲間です。99%による「公務員バッシング」は、ナオミ・クラインも指摘するように、1%からの分断攻撃であり、「あなたの隣に座っている人に対しての攻撃」です。


 99%の「私はあなたを気にかけ(I care about you)」、「我々はお互いを見つけなければなりません」。


(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)