原発震災のなか迎えた「こどもの日」-福島の子ども救おう(広瀬隆氏) | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2011年5月3日付No.8455)からの転載です。きょうは、「原発震災」のなかで迎える「こどもの日」です。福島の子どもたちの命を守ることはもちろんのこと、すべての子どもたちの命を守るために「原発震災」を二度と繰り返さない決意を私たち大人一人ひとりが胸に刻む必要があると思います。【★「連合通信」の購読申し込みはこちらへ】


 「原発震災」を繰り返すな
 福島の子どもたちを救おう 作家・広瀬隆氏


 福島の子どもたちが危険な状況で放置されていることに激しい怒りを覚える。


 福島県の調査では、県内小中学校の75.9%で年間5.2ミリシーベルト(msv)以上の放射線量が出ている。国が一般人の立ち入りを制限してきた値を超えており、放射能の蓄積は明らかだ。児童生徒は一刻も早く疎開させるべきなのに、政府は年間20msvを基準にすることを決めた。


 ●危険は去っていない

  ――今後10年以内に数万人が発がん


 欧州議会内の科学者グループ「ヨーロッパ放射線リスク委員会」は、福島原発事故によって、334万人が住む100キロ圏内では今後50年間に19万人ががんになり、うち半数は10年以内にかかるとの予測を出した。この数字は、国際原子力機関(IAEA)と日本政府の発表資料から出したものだ。


 最悪の事態もあり得る。


 東京電力は、核燃料を冷やすために、原子炉を囲む格納容器を水で満たす「水棺」をつくるという。しかし、容器は満タンの水の重量に耐える設計にはなっていない。大きな余震が来れば、衝撃で原子炉もろとも破壊されるだろう。


 私の知る専門家たちは、福島原発の原子炉1基が助かる可能性を「半々」とみる。ということは、危険な状態にある4基すべてが助かる確率はわずか6%の計算だ。大量の放射能が日本中を覆う恐れは相当残されている。


 ●「安全論」はウソ


 それでも、政府やテレビに出る「専門家」を名乗る学者は「安全だ」とか「直ちに人体に影響はない」と繰り返している。「直ちに」とは、広島と長崎への原爆投下のように急性放射線障害で亡くなることを指すのだろうが、末期的状況と比べるとは何事か。5年後、10年後に子どもや若者が発がんするかどうかを考えるべきだ。反戦を訴えたフランスの作家ロマン・ロランは「理性の感情とは、愛である」との名言を残した。日本人は理性だけでなく愛にもとづいた怒りをもって行動しよう。(4月30日、たんぽぽ舎・週刊金曜日共催の講演会で)


 ひろせ・たかし 1943年生まれ。メーカー技術者を経て原発の危険性について執筆を続ける。最近の著書に「原子炉時限爆弾」(ダイヤモンド社)など。