東北関東大震災に関する当面の緊急要望(全労連) | すくらむ

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 ※全労連の「東北関東大震災に関する当面の緊急要望」を紹介します。


                               2011年3月25日
内閣総理大臣 菅 直人 殿
 (緊急災害対策本部・本部長)
                              全国労働組合総連合
                              議長 大黒作治


   東北関東大震災に関する当面の緊急要望


 大震災と原発事故の対策に、昼夜を分かたず奮闘されていることに敬意を表します。


 私たち全労連も大震災直後から現地にはいり、支援の活動を開始しています。かつて経験したことのない被害の甚大さと被災地住民の窮状に強く心を痛めおり、より迅速な被災者支援と被災地域の復興・再生に力を傾注することが必要です。同時に、今回の被害の甚大な被害に加え、エネルギー・輸送問題など日本全体を襲った状況の深刻さをみたとき、日本社会のあり方そのものが鋭く問われていると考えます。


 そうした先を見すえた視点を持ちつつ、被災者・住民の声と要望を踏まえた、いのちと人権、暮らし・雇用を最優先にした当面する対策を迅速かつ適切にすすめていかれねばなりません。そのためには、憲法に定める生存権や勤労権を保障する国の責任、役割発揮が強く求められています。私たちは、以下の4つの視点を基礎に据えた対策が重要であると考えます。


 ① 過去に経験したことのない甚大な災害であるという事実を踏まえ、現行法の枠組み、先例に縛られない大胆かつ効率的な(新法を含む)対策・態勢を確立するという視点


 ② 憲法に定める基本的人権、勤労権を基礎にした国の役割発揮を中核に据えて、被災者・住民の切実な声と要求にもとづき、いのちと人権、雇用・暮らしを最優先にした被災者支援と復興対策をすすめていくという視点


 ③ 住民要求にもとづく被災地域の早期復興・再生をはじめ、震災にも強い持続可能な日本社会への転換、豊かな地域づくりという視点


 ④ 技術の未確立、危険性が明白になった原発政策の転換など、安全・環境問題を踏まえたエネルギー政策の転換を強く迫り、その基本に安定した良質な雇用の実現による内需中心の日本経済への転換、大企業の横暴に対する社会的規制の強化をすすめるという視点


 以上の趣旨から、被災者支援と復興の当面する課題について、以下のとおり申し入れ、貴職の誠実な対応を求めます。


                   記


1.被災者支援・復興対策をすすめる緊急体制・システムの確立


(1) 集団避難や支援活動が全国におよんでいる実態を踏まえ、緊急災害対策本部と原子力災害対策本部を改組・拡充し、地方公共団体や指定公共機関等の参画のもとに「大震災等総合対策本部(仮称)」を設置し、系統的・総合的対策を国の責任で迅速にすすめること。その際、被災地代表の参加を保障し、被災者の声と実態にもとづいた対策をすすめること。


(2) 特に被害が甚大な岩手・宮城・福島の3県については、「大震災等総合対策本部(仮称)」のもとに、地方公共団体等と一体となった各県「現地対策本部(仮称)」を設置し、系統的・総合的な対策を迅速かつ強力に推進すること。


(3) 被災地域の行政組織等の損耗と人出不足、職員の疲弊が深刻な状況を打開し、被災者・地域のニーズを把握して、迅速かつ的確な対策をすすめるため、全国の地方公共団体等の協力のもとに、大規模な支援の集団を被災地域の自治体に派遣すること。


(4) 被災地域の自治体と協力して、避難所・被災地域ごとに担当者網も整備して、自治機能を早期に確立し、ニーズの把握と系統だった支援ができる体制を整備すること。


(5) 被災地のニーズに基づいた支援物資と民間ボランティアの受け入れ・活用を系統的かつ大規模にすすめるため、「現地対策本部(仮称)」のもとに「ボランティア・支援センター(仮称)」を設置すること。


(6) 上記(3)から(5)の被災地自治体支援が系統的・効率的にすすむように、被災地域ごとに支援する都道府県を決めること。その担当割は、集団避難との関連も意識して決定すること。


(7) 広範囲におよぶ被害の甚大さと復興・再生事業の長期化を踏まえ、新法(例えば「東北関東大震災・福島原発事故被災者支援、地域復興・振興法(仮称)」)を早期に制定し、住民の声と要望にもとづく被災者支援と復興・振興事業を、国が責任を持って総合的にすすめていく態勢を確立すること。


(8) 被災者支援と復興事業の財源を確保するため、法人税率の5%引き下げを撤回するとともに、高速道路の無料実験や子ども手当の新年度増額分の中止、思いやり予算や不急の公共事業の凍結など、来年度予算の大幅な見直しをおこなうこと。庶民大増税の消費税率引き上げはおこなわず、大企業や大金持ちに対する税負担、資産課税の適正化など、生計費非課税・応能負担原則にもとづいた必要財源の確保をおこなうこと。


2.いのちと人権を最優先にした被災者支援の緊急強化


(1) 避難所をはじめ被災地域のすべての住民に、そのニーズに即した食料や燃料、生活必需品等の必要物資をきめ細かく届けることを最優先課題とし、例えば民間ヘリによる空輸を可能とすることなど、あらゆる手段を駆使して全力でとりくむこと。大規模避難所だけでなく、自宅等に孤立した被災者などへの支援を整備すること。


(2) 被災地域の隅々までの輸送・物流体制を一刻も早く再構築すること。そのため、被災地と周辺地域に、必要量の燃料(ガソリン等)を安定供給する体制を即刻確立するとともに、鉄道やバスなどの公共交通機関を早期に完全復旧すること。また、自家用車の流失等を考慮し、例えば地域コミュニティ・バスなど、代替交通手段を整備すること。


(3) 疾病や障害を持つ人々のいのちと被災地域住民の健康を守るため、必要な医薬品・医療機器・材料等を早急に充当するとともに、全国的な支援体制を確立し、医療機関・福祉施設等の維持・活動強化に必要な支援・交替要員を大規模に派遣すること。現状では必要な医療・ケアを十全に提供できない重篤な患者等については、他県の医療機関等に緊急避難させる移送を即刻おこなうこと。


(4) 保健師等の派遣を拡充し、避難所と被災地域ごとの健康・メンタル相談体制を早急に整備するなど、保健衛生・医療・メンタル対策を抜本的に強化すること。避難所等での集団生活を余儀なくされるなかでも、人権とプライバシーが最大限保障されるよう措置し、病弱者や障害者、高齢者、子ども、女性、外国人など、いわゆる「災害弱者」への必要な配慮や、防犯のための措置がきめ細やかに実施されるようにすること。


(5) 医療・介護等の一部負担金・利用料については、広域に及ぶ被害の甚大さに即して、すべての被災者(県外の避難所等へ緊急避難を含む)を対象に直ちに免除すること。免除した一部負担金や利用料、保険料等については、その全額を国庫で補てんすること。


(6) 行方不明者や遺品等の捜索をいっそう強化すること。被災地域に住んでいたすべての住民の状態、居所を早急に把握し、例えば「被災者カルテ(仮称)」の作成など、支援の基礎資料を早急に整備すること。


(7) 死者の埋葬に関しては、「墓地・埋葬等に関する法律」の特例的運用を確保しつつ、遺族等の意向を最大限尊重した対応が取られるよう措置すること。遺族等がすぐに見つからない場合も、遺骨や遺品、死亡時の状況等を親族・関係者に渡せるよう措置したうえで火葬・埋葬等をおこなうこと。


3.復興への着手と生活保障・再建のための制度整備


(1) 生活道路や電気・ガス・水道等のライフラインの完全復旧、生活必需品等の供給・販売網の整備に全力をあげること。また、東北新幹線の完全復旧を大至急実現すること。


(2) 仮設住宅の大量建設の促進、宿泊施設の活用などによって、人権やプライバシーの保てる住環境を速やかに保障するとともに、倒壊・半壊を免れた家屋の耐震診断等を促進すること。また、がれきの撤去や地盤整備、防災対策の推進など、復興の基礎づくりを早急かつ大規模に開始すること。


(3) それらを実施するため、不急の公共事業等を全国的に一時凍結(そのための予算の繰り延べ措置を含む)するなどして、土木・建設作業員や重機等を被災地域に集中すること。津波等によって甚大な被害を受けた地域については、全額国庫負担によって復興事業をおこなうこと。


(4) 新学期を目前にしたなかで、地震や津波で壊された学校の再建・改修を早急におこなうとか、代替施設の確保などによって、児童生徒・学生の学習権を保障すること。経済的理由で就学の機会が奪われることのないよう、学費・入学金、給食費等の免除と関連費用の補助、給付制奨学金制度を整備すること。県外の避難所等にいるなど、転校が必要な児童生徒については、希望に沿った柔軟な転校・受け入れを徹底すること。


(5) 住民参加のもとに、今回の大震災を教訓とした震災・天災に強い街づくりをすすめる地域ごとの協議体制をできるだけ早い時期に立ち上げること。その前提として、道路や堤防、港湾、河川の整備・再建とともに、地震・津波の観測体制と警報システムなど、防災システムの確立を国と自治体の協力ですすめること。


(6) 住居や店舗、操業設備などの生活基盤に甚大な被害を受けるとか、就労・営業できない期間が一定長期にならざるを得ない者が大量に発生している事実を踏まえ、当面の「生活費」と住居や店舗、操業設備などの「生活基盤再建費」等を支給すること。そのため、新法(仮称:東北関東大震災・福島原発事故被災者支援、地域復興・振興法)を早急に制定し、現行の被災者生活再建支援法を大幅に上回り、当面する生活費と生活基盤の再建を保障する給付水準を整備すること。


(7) 当面、現行の制度や義援金などを最大限活用して、住居や生活基盤の流失・全半壊など甚大な被害を受けた人々を中心に、生活を維持し復興に着手するに足る費用(一時金)を支給すること。また、所持金も底を尽きつつある人々については、生活保護制度の迅速な活用によって当面の生活を保障すること。その一環として、資産等がすぐには活用できない状態にある人々については、その後の生活再建費を担保する見地から、同法第63条の「費用返還義務」を弾力的に運用し、現実に「処分可能となった」日から起算すること。


(8) 就労が可能な被災者については、被災者支援活動などで就労の場を提供し、その費用を国が負担すること。また、復興事業における優先的な採用を義務づけるとともに、金額を明示し生活を保障する適正な賃金を支払うこと。


(9) 広範囲におよぶ被害の甚大さを踏まえて、税・社会保険料、公共料金等の減免措置を大規模におこなうこと。また、個人・中小零細企業を対象とした借入金・ローン等の返済猶予制度を大幅に拡充すること。


(10) 農漁業や中小企業、商店等の再開のために、無利子・無期限の融資制度に加え、基礎的な給付をおこなうこと。特に、津波等で消失した広大な農地や漁港の整備、冠水地の土壌改良事業等は、地域の基盤産業を立て直す立場から全額国庫負担でおこない、被災に伴って就労の場を失った者の雇用の場とすること。


4.復興を見据えた避難対策と生活支援


(1) 広域にわたる被害の甚大さと県外を含む避難先の広域化を踏まえ、避難所等(県外等の一時避難施設を含む)にかかる費用は、関連経費をふくめ全額国庫負担とすること。避難が他県に及んだ場合においても、衣類・家財等を喪失するとか、着のみ着のままの避難が高い割合になっている実態を踏まえ、災害救助法の弾力的運用に関する通知の趣旨を徹底し、食事(1日3食)や飲料、寝具、衣類をはじめとした生活必需品が無償で提供されるように徹底すること。また、避難の長期化にかんがみ、洗濯や入浴、介護や子どもの遊戯などの充実に努めること。


(2) 他県等への避難は緊急・一時的な措置であることを基本にして、できるだけ早期に地元に戻って復興・生活再建にあたれるようにすること。そのため、原発事故の影響地域以外については、従来の居住地域に近接した地に仮設住宅などの代替住居を早期に用意すること。ただし、やむを得ず他の地域への避難・転居を希望する被災者については、代替地と住居をはじめとした生活基盤を保障すること。


(3) ライフライン等の復旧の遅れなどから県外等へ避難した場合には、行政・自治機能と地域コミュニティが最大限維持されるように、被災行政区・地域ごとに受け入れ先の自治体を明確にして、集団的な避難を基本とすること。そのため、緊急避難などで、現在はバラバラになっている家族や地域が再結集できるように、支援の自治体を明確にしつつ、再結集のための移動を費用も含め柔軟に支援すること。


(4) 避難のための輸送手段と経費は国が責任を持つこととし、高齢者や病弱者、障害者等が取り残されることのない移動支援をおこなうこと。また、県外の避難所等においても、保健衛生・医療・メンタル対策やボランティア活用を含めた支援を確立すること。


(5) 他県等への避難が一定長期に及ばざるを得ない状況を踏まえ、児童生徒の避難先地域の学校への編入・入学や費用支給、医療機関・介護施設、保育所等の利用が円滑におこなわれるよう、柔軟な制度運用を確保すること。


(6) 避難が広域・大規模にひろがっている実態を踏まえ、全国どこの避難所、避難地域でも必要な支援が十全に受けられるよう、受け入れ自治体に災害救助法等の弾力的運用に関する通知の周知・徹底するとともに、場合によっては国が直接支援するなど、被災者支援の全国的な調整と統一的・系統的な実施を担保すること。


5.全国的な労働・経済活動にかかる事項


(1) 電力や石油・エネルギー施設等の損害の全容と復旧・再建計画を早急に国民に丁寧に説明し、国民的な合意のもとに、大企業等への操業規制など節電対策をすすめること。「計画停電」については、家庭への影響の大きさに加え、経済活動にとっても非効率であるとの指摘を踏まえ、業界団体などによる操業・営業時間規制を強化して、早急に止めること。


(2) 「計画停電」を継続せざるを得ない期間においても、最小限の地域にとどめることを前提に、事前に正確な情報を周知徹底すること。被災地は除外したうえで、地域偏在をなくし、医療機関や患者・障害者等へのエネルギー供給に十分な対策を講じること。


(3) 大震災や原発事故による生産縮小などを理由とした解雇や雇止め、内定取り消し、賃金カットなどをおこなわないよう、財界団体・企業に対してさらに強力に指導すること。震災に便乗した解雇・雇止めを防ぐため、大量解雇等の事前報告制と企業名の公表等を実施するとともに、特に雇止めや賃金カット等の影響が懸念される派遣労働者や請負、時間給労働者などの雇用と収入の維持を大企業等に強く求めること。


(4) 労働者の生活を守るため、「計画停電」による休業を使用者の責めに帰すべき理由にあたらないとして賃金カットを容認した3月15日付の通知「基監発0315第1号」を撤回し、そのために雇用と地域経済の主役たる中小企業に対して、雇用調整助成金の活用や補助をいっそう強化すること。計画停電や物流・公共交通機関の混乱、部品調達等の関係からの休業が全国的にひろがっている状況を考慮し、被災地域への特別対策に加え、それ以外の地についても雇用調整助成金の適用を拡大すること。


(5) 被災地域における事業場の流失や損壊、休業をはじめ、解雇・雇止めや休業等で収入が途絶えた人々に対して、失業給付や賃金立て替え払い制度の弾力的運用と周知を徹底すること。非正規労働者や零細業者など、その対象とならない被災地域の失業・廃業者に対する生活を支える現金給付を緊急的におこなうこと。


(6) 省エネ社会への転換、内需中心の日本経済への再生をすすめるため、大企業等への規制を強化し、深夜・休日など操業・営業時間の短縮、労働時間の短縮・残業規制を早急に強化すること。時短によって新たな雇用を創出するとともに、労働時間短縮による減収を来たさないよう、最低賃金をはじめ賃金の底上げを実施すること。そのため、中小企業等の賃上げに対する補助、補てんを十全に実施すること。

                                        以上