ハローワーク前アンケート中間報告-依然として厳しい雇用情勢、困難な状況に置かれる失業者 | すくらむ

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 ※全労連のハローワーク前アンケート中間報告を紹介します。


 ハローワーク前アンケート2010 中間報告


                               2010年11月18日
                               全国労働組合総連合


 全労連は、雇用情勢が厳しさを増すなか、①失業者・求職者の実態と要求を集約し、制度要求や世論喚起のための客観資料を得る、②失業者・求職者の生の声をつかみ、運動に活かしていくという2つの目的のもと、昨年に引き続いて「ハローワーク前アンケート2010」にとりくんでいます。11月12日までに17都道府県64ハローワークの3,517名分(昨年最終4,209名分、2009年12月10日現在の全労連集約分)が集約されました。「中間報告」として発表し、政府・自治体に対して雇用対策への反映などを求めていくものです。


 なお、政府・自治体が年末に向けて「住居・生活応援プロジェクト」にとりくんでいるもとで、ワンストップ・サービス・デーに呼応したとりくみを追加実施していく予定です。また、


 今回の「中間報告」は単純集計のみですが、雇用形態(最後の仕事)別などでのクロス集計した分析や記述回答に加え、調査票に連絡先等を記入した回答者を対象に実施する第2 次調査結果などを加え、来春に報告書を発表する予定です。


 「中間報告」の最大の特徴は、全体的にみて昨年の集計結果と大差ない結果となっているということです。つまり、依然として厳しい雇用情勢が続いており、失業者等が困難な状況に置かれていることをあらためて裏づける結果となっています。


 「失業・離職の原因」で、解雇や経営不振等による希望退職、倒産、派遣切りなど有期契約の中途解除が計33.4%と3分の1に及んでいます。その他を選択した人の記述内容をみても、賃金の大幅低下などを理由にあげている人が多く、雇用破壊の一端が示されています。


 そのため、「切実に求めているもの」では、再就職先の確保62.0%、失業給付の支給期間の延長39.0%などとなっており、公的就労の確保を含めた実効ある雇用の拡大策を具体化することが急務といえます。


 「失業期間(失業・離職後の期間)」でも、6カ月以上が41.5%と4割を占め、3カ月以上でみると実に63.1%と3分の2近くに達しています。失業給付の期間延長をはじめ、雇用保険制度の抜本改正などセーフティネットの整備が求められています。同時に、解雇・雇止めを止めさせることなど、大企業に雇用責任を果たさせ、雇用の安定・創出をはかることが求められており、政治の責任が問われています。


▼ハローワーク前アンケート2010 中間報告の主なポイント

回答者の年代 50歳以上が46.0%、一方で39歳以下も33.8%
業種(最後の仕事) 製造業21.3%、サービス業18.1%など
失業・離職後の期間 6カ月以上41.5%、3カ月以上63.1%
離職の理由 解雇・経営不振など33.4%+α
失業給付の受給は 46.6% ハローワーク来訪者なのに半数に届かず
切実に求めているもの 再就職先の確保62.0%、失業給付の期間延長39.0%
仕事を選ぶ基準 仕事の内容(慣れた仕事等)27.4%、長く働けるか21.0%、賃金14.4%……


 1.有効回答は3,517名、女性が4割超


 11月12日までに全労連に集約された有効回答は、北は北海道から南は鹿児島まで、17都道府県64ハローワークの3,517名分(昨年12月最終4,209名分。以下、カッコ内は特に断りのない限り、昨年の最終結果)となっています。


 問1「性別」では、「①男」が56.2%(60.0%)に対して、「②女」が43.6%(39.8%)と4割を超えています。


 2.厳しい50歳以上の雇用、若年層も非正規化で失業増


 問2「年代」では、最も多かったのは「⑤50代」の24.8%(26.4%)です。続いて「③30代」20.7%(20.7%)、「④40代」20.1%(20.1%)、「⑥60代」20.0%(17.5%)、「②20 代」12.4%(13.2%)などとなっています。


 50歳以上でみると46.0%(44.9%)となっており、中高年者の失業・雇用問題の深刻さが表れています。「自由記載欄」(問14)でも、「年齢制限ではねられる」という声が多数寄せられており、中高年者の雇用対策の強化、働き口の確保が求められています。


 特に、60歳以上が21.2%(18.5%)と2割を超えたことは重大です。定年退職後も暮らしていけない層が多数いるということであり、最低保障年金制度の早期整備など、年金制度の充実とあわせた対策の強化が求められています。


 一方で、39歳以下も33.8%(34.8%)となっています。非正規化の進行が「雇用の調整弁」として、青年層でも雇用破壊を進行させており、若者の仕事も確保しえない雇用の先細りが進行しているといえます。


 3.最後の仕事は製造業やサービス業多く、不況を反映


 問3「最後の仕事」では、最も多かったのが「③製造業」の21.3%(25.2%)で、続いて「⑬サービス業」18.1%(15.4%)、「⑦卸売・小売業」9.1%(8.5%)、「⑪医療・福祉業」8.8%(6.9%)、「②建設業」8.8%(9.6%)などとなっています。


 昨年から若干減ったとはいえ、製造業がトップを占めたことは、製造業における非正規切りの一端を示すものです。同時に、サービス業と卸売・小売業の割合が高いことなど、深刻な不況の影響をみてとることができます。


 なお、「⑭その他」が11.2%(10.3%)を占めていますが、内容が記載されていたものをみると、「清掃」「警備」「自治体の臨時職員」などが目立ちました。


 4.雇用形態は正職員が52.1%、あらゆる層におよぶ


 問4「雇用形態」では、「①正職員」が53.2%(51.7%)と過半数を占め、続いて「②パート」18.7%(16.2%)、「④期間・契約社員」11.3%(11.2%)、「③アルバイト」6.9%(6.1%)、「⑤派遣」9.1%(5.5%)などとなっています。


 「①正職員」が過半数を占めたことにみられるように、雇用破壊が全体にひろがっていることがわかります。ただし、全体の就業構造からみれば、非正規労働者の割合は高くなっており、非正規労働者が「雇用の調整弁」として使い捨てられていることがうかがえます。


 5.失業は長期化 6カ月以上で41.5%、1年以上は18.7%も


 問5「失業・離職後の期間」では、「④6カ月以上~1年未満」が最も多く21.8%(27.5%)を占め、続いて「③3カ月以上~6カ月未満」21.5%(24.6%)、「②1カ月以上~3カ月未満」21.0%(19.1%)、「⑤1年以上」18.7%(12.6%)などとなっています。


 1年以上が昨年から5割増となり、2割近くに達したことは、厳しい雇用情勢の中で仕事がみつからず、失業が長期化していることを示すものです。6カ月以上でみると41.5%(40.6%)と4割を占めています。


 雇用保険の失業給付の給付日数は、相次ぐ改悪で短くされてきましたが、この結果からも支給日数の延長が必要なことは明らかです。特に非正規労働者の場合は、その多くが90日(個別延長されても150 日)であり、改善は急務です。


 6.解雇17.9%、経営不振による希望退職7.8%など雇用破壊浮きぼりに


 問6「失業・離職の原因」では、最も多かったのは「⑥自己都合(自らの意思)」の34.8%(29.9%)でした。続いて、「①解雇」17.9%(20.5%)、「②契約期間満了」12.9%(12.5%)、「④経営不振等による希望退職」7.8%(9.5%)などとなっています。


 集計結果は昨年末よりは若干改善しているとはいえ、①解雇」17.9%(20.5%)、「④経営不振等による希望退職」7.8%(9.5%)、「⑤倒産」5.3%(5.8%)、「③派遣切りなど有期契約の中途解除」2.4%(4.8%)をあわせると、33.4%(40.6%)に及んでいます。また、「⑧その他」が8.7%(8.2%)と割合が高くなっているのも、記載内容をみると、賃金や労働条件の大幅な低下などがかなりの部分を占めており、「②契約期間満了」も12.9%(12.5%)に達しています。


 雇用破壊と不況の長期化のもとで、一時期ほどの爆発的な解雇・雇止めという状況ではないにしても、依然として非自発的な失業・離職が多数を占めているのであり、深刻な事態が続いているということができます。


 7.会社都合を自己都合にされたことがあるが2割


 問7「本当の離職理由は会社都合なのに、自己都合にされたこと」では、「②ない」は74.0%(73.3%)と、4分の3に止まり、「①ある」が19.5%(18.7%)、「③あったが異議を申し出て訂正させた」が2.3%(3.0%)という結果でした。


 企業に対する指導・対策を強化するとともに、失業給付等の認定に際しても、実態をよく聞いた対応が求められています。


 8.失業給付の支給を受けている人は46.6%に止まる


 問8「失業給付の支給を受けていますか」では、最も多かったのは「①支給を受けている」でしたが、46.6%(49.9%)に止まり、半数に届きませんでした。続いて、「③支給期間が過ぎた」15.4%(13.8%)、「②待機中」15.1%(14.2%)、「④受給資格を満たせず、もらえない」9.3%(9.0%)、「⑤雇用保険に未加入」7.3%(7.3%)などとなっています。


 リーマン・ショック以降、政府は数次の雇用保険制度の改正をおこなってきましたが、この集計結果からも改善はみられないということです。また、一般の統計では失業給付の受給は2割強ですが、実際にハローワークを訪れている人では4 割台ということは、非正規で退場外となっている人々のかなりの数がハローワークを利用できないその日暮らしの生活に追いこまれているということでもあります。


 “高失業時代”という認識のもと、失業者の生活を支える総合的な所得補償制度を確立していくことが求められます。支給日数の増や対象の拡大に加え、手続きの迅速化などの運用改善など、雇用保険制度の抜本改善は急務です。


 9.生計を支えているのは、家族の収入、預貯金の取り崩し、失業給付……


 問9「現在の生計は、何で支えられていますか(主なもの2つ以内)」では、「③家族の収入」40.7%(38.1%)、「②預貯金の取り崩し」39.9%(42.1%)、「①失業給付」39.6%(44.2%)の3つが主な収入になっています。また、「⑤年金」9.0%、「⑦臨時のアルバイト」8.6%(9.8%)、「④借金」4.7%(6.5%)、「⑤生活保護」3.2%(3.0%)などとなっています。


 この結果からも、現在の失業給付が失業者の生活を支える上で十分でないことは明らかです。


 支給対象・期間の拡大に加え、切り下げられてきた上限額の引き上げなど失業給付の額の増額が求められています。


 10.3分の1が私の収入だけで家計を支えていた人


 問10「失業以前、あなたの家の家計は主に誰が支えていましたか」では、「①私の収入だけで支えていた」34.5%、「③主に私以外の家族の収入で支えていた」31.4%、「②主に私の収入で支えていた」20.9%などとなっています。


 この点でも、失業の影響の大きさは明らかであり、対策強化が求められています。


 11.厳しい雇用情勢、希望する求人はあまりない


 問11「希望する求人はありますか」では、「①たくさんある」はわずか2.4%(2.7%)に止まり、「③ほとんどない」43.8%(46.3%)、「②いくらかある」37.7%(34.5%)などという結果でした。


 雇用情勢の厳しさが示された結果といえます。


 12.仕事を選ぶ基準は、仕事の内容、長く働けるか、賃金……


 問12「仕事を選ぶ基準」では、最も多かったのが「④仕事の内容(慣れた仕事等)」の27.4%で、続いて「③長く働けるか」21.0%、「①賃金」14.4%、「②労働時間」9.6%、「⑤仕事のやりがい」7.0%、「⑥勤務地の場所」6.2%などとなっています。


 こうした希望を踏まえた雇用創出策の具体化が求められています。


 13.再就職先の確保が最も切実な課題


 問13「切実に求めているもの、重要だと思うもの(3つまで回答可)」では、最も多かったのは「④再就先の確保」で62.0%(57.3%)を占めました。続いて、「①失業給付の支給期間の延長」39.0%(41.5%)、「⑤公的な就労・仕事の拡大」34.0%(32.0%)、「②失業給付の支給額の引き上げ」31.4%(31.3%)、「⑦失業給付が受けられない人への支援の実施」18.7%(17.7%)、「⑧離職防止や解雇規制の強化」18.4%(20.5%)、「⑥職業訓練の機会拡大」16.5%(19.0%)などとなっています。


 公的な就労確保を含め、雇用の場の創出が急務だといえます。同時に、雇用保険制度の改善が求められています。


 14.自由記載欄について


 問14の「自由記載欄」には、多くの切実な書き込みがありました。来春の「報告書」の段階では、手記として整理し発表する予定です。

                                      以上