非正規労働者であっても声をあげてたたかうことによって大企業に法律を遵守させることができる | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※首都圏青年ユニオンの声明を紹介します。――近時、「ワーキングプア」「格差」「貧困」といった問題が起き、このような状況下で苦しむ非正規労働者が多くいることが社会問題化している。この問題が引き起こされている第一の原因は、企業が労働法令を守らないことにあり、特に、非正規労働者への賃金未払いや紛失金の強制立替えはめずらしくないといわれている。今般の勝利は、非正規労働者であっても声をあげてたたかうことによって大企業に法律を遵守させることができるという道筋を示したという点で非常に重要である――感動的な声明です。


 すき家事件 認諾による訴訟の終結及び中労委命令についての声明


                       2010年8月27日
                       首都圏青年ユニオン


 1 2008年4月、牛丼すき家仙台泉店で働くアルバイト従業員3名が、株式会社ゼンショー(以下「会社」という)に対して、未払いの本給、時間外割増賃金および紛失立替金の支払いを求めて裁判を提起した。この訴訟で、結審日として予定されていた本年9月10日を前に突如、会社が8月26日に原告らの請求額合計994,777円をすべて認諾して、訴訟は終了した。


 また、アルバイト従業員3名が加入する東京公務公共一般労働組合(以下、「組合」という)が2007年1月に上記のお金の支払いやシフト差別等の問題について団体交渉を求めたところ、会社は同年2月に団体交渉を拒否した。そのため組合が団交拒否の不当労働行為救済申し立てを行い、東京都労働委員会は組合の申し立てを全面的に認め、2009年10月に会社に団交に応じること等を命じる命令を出したが、会社がこれに対し中央労働委員会に再審査を申し立てた。8月26日、この件につき、中労委は、本年7月21日付の命令書を交付し、会社の再審査申し立てを棄却した。


 2 会社は、2007年2月以降、会社との連絡、交渉を担当していた組合の青年一般支部(通称「首都圏青年ユニオン」。以下、支部を「首都圏青年ユニオン」という)や組合について、労働組合といえないなどと主張して組合との団体交渉を拒否し、解決を引き延ばした挙句、訴訟提起後はアルバイト従業員の労働者性を否認する主張を行うなどして、無用な争点を増やして訴訟進行を遅延させた。


 訴訟では本年4月23日、6月11日と原告本人及び会社の労務担当者、原告らの元上司の3名について証人尋問が行われ、9月10日が結審のための口頭弁論が指定されてそこに向けて原告ら及び会社がそれぞれ7月末日までに最終準備書面を裁判所に提出することとされていた。ところが、会社は7月末日になっても最終準備書面を提出せず、その後になって、突如として請求を認諾してきたのである。


 3 他方、中央労働委員会の手続きでは、会社が2009年11月に再審査申し立て後、本年5月10日に審問(訴訟でいう証人尋問)が行われ、首都圏青年ユニオンの河添誠書記長及び会社の労務担当者が証言した。中労委は同日審理を終結し、8月26日の命令交付に至ったものである。


 中労委の命令は、東京都労働委員会の命令した内容をほぼ全面的に支持し、営業中の店舗へのビラ配布という組合の情宣活動について、都労委の命令が「行き過ぎの面があったとも考えられる」としていた点についても、当該活動の態様、目的、必要性の観点からの検討を行って、「労働組合の組織、団結を擁護するという労組法の目的(同法1条)に反するところはない。」と組合の行動が正当なものであったことを明らかにした(命令書27頁)。


 4 以上の、会社の認諾による訴訟の終結、中労委命令について、首都圏青年ユニオン及び同顧問弁護団は、心から喜び、全面的に歓迎するものである。


 (1) 最終準備書面提出の手続きまで行う段階まで全面的に争い、およそ認められるはずもない論点を提示するなどして訴訟を遅延させて、原告らの生活を長期間にわたって不安定にさせてきたにもかかわらず、訴訟の最終盤になって判決を回避するために認諾するといった会社の訴訟態度は、ご都合主義的で不誠実極まりなく、私たちは決して許すことはできない。


 もっとも、会社がこの時期に異例とも言える認諾に追い込まれたのは、原告らと原告らの加入する首都圏青年ユニオン、そして弁護団の粘り強いたたかいの成果である。


 原告らは、労働組合に加入して全国で情宣活動を行い、会社への要請行動も繰り返してきた。また労働基準監督署に是正指導を求め、刑事告訴も行った。さらに、労働組合は、団交拒否に対して訴訟に先駆けて東京都労働委員会へ救済命令の申立てを行い、2009年10月には労働組合の主張を全面的に認める救済命令を得ている。


 訴訟においては、原告らは、アルバイト従業員が会社に従属しながら働く労働者であること、アルバイト店長には大きな権限はなく管理監督者とは到底言えないこと、紛失金立替えは公序良俗に違反し、仮に合意書が取られていても無効となることなど、すべての争点で会社の言い分を圧倒した。特に、証人尋問の中では、業界トップを走る牛丼すき家が、アルバイト従業員を劣悪な労働環境の中で酷使している実態が明らかになった。


 このような原告、労働組合、弁護団の活動により、会社は予定されていた判決で全面敗訴を覚悟し、それゆえ判決直前になって認諾を選択したと考えられる。


 (2) これに対し、会社は訴訟の裏で、組合員に対する卑劣な攻撃を繰り返した。原告らが賃金未払いの件で告訴をしたところ、逆にまかない飯を窃取したとの嫌疑で恫喝の手段として逆告訴したり、定期的な昇給を一切行わなかったりするなどの不当な差別を行った。


 また、会社は、前述の不当労働行為救済命令が出されたにもかかわらず、現在に至るまで組合、首都圏青年ユニオンとの団体交渉に応じない。


 中労委命令は会社の態度が労働組合法の観点から許されないものであることを改めて明らかにし、かつ都労委命令後比較的迅速に命令が下されたことで組合、首都圏青年ユニオンや組合員を励ます内容であり、高く評価できるものである。


 5 近時、「ワーキングプア」「格差」「貧困」といった問題が起き、このような状況下で苦しむ非正規労働者が多くいることが社会問題化している。この問題が引き起こされている第一の原因は、企業が労働法令を守らないことにあり、特に、非正規労働者への賃金未払いや紛失金の強制立替えはめずらしくないといわれている。


 今般の勝利は、非正規労働者であっても声をあげてたたかうことによって大企業に法律を遵守させることができるという道筋を示したという点で非常に重要である。


 会社は今回の認諾及び中労委命令により、原告らの主張を事実上全面的に認め、かつ団交拒否の違法性が再度明らかになった以上、原告及び組合、首都圏青年ユニオンの主張に反する労務政策を一切取ってはならない。私たちは会社に対し、ただちに原告ら組合員への差別的取扱いを中止し謝罪すること、組合、首都圏青年ユニオンとの団体交渉を開始しすみやかに労使自治のルールを確立するよう強く求める。


 今回の勝利を非正規労働者の権利擁護に活かすよう、私たちはこれからも奮闘する決意である。

                                     以上