消費税10%で1世帯16万円増税 - 給付つき税額控除で軽減しても貧困は拡大する | すくらむ

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国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 ※一昨日、連合通信社から労働組合のブロガーとして取材を受けました。そのときに、連合通信社の方から、「連合通信の配信記事をすくらむブログでもっと活用してください」とお墨付きをいただきましたので、ブログで使うのはよくないんじゃないかと遠慮していたのですが、今後はどんどん使わせていただきます!ってことで、早速、消費税シリーズ第3弾は、「連合通信・隔日版」(2010年6月24日付No.8340)からです。(※消費税シリーズ第1弾は「失業・生活苦の自殺が急増し富裕層資産が激増する世界第2位の富裕層大国ニッポン」 、第2弾は「日本のみ貧困層収奪の税・社会保障を完備 - 消費税は貧困層に上位層の2倍の負担強いる貧困推進税」 です。byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)


 ▼「連合通信・隔日版」(2010年6月24日付No.8340所収配信記事)

 「消費税10%」を考える/参院選の重要争点/本当に高齢者福祉に寄与?


 菅首相が、消費税率を現行の5%から10%に引き上げることに言及した。にわかに参院選の争点となった消費税について考える。


 ●引き上げ際限なし


 首相は「消費税の使い道は基礎年金、高齢者医療、介護が中心」と述べた。


 確かに、現在の消費税収では、この高齢者福祉3分野をカバーできない。今年度の消費税収は約12・1兆円が見込まれるが、地方分を除くと、国の手元に残るのは6・8兆円だ。今年度予算の3分野の支出は計16・6兆円で、不足は国の借金などで補う。


 財務省によると、消費税を1%上げると2・4兆円の増収になる。10%にすれば、単純に引き上げ分だけで12兆円が入り、3分野を賄える。だが、高齢化で3分野の支出は、年間1兆円ずつ増える見通しだ。仮に現時点で10%にしても、数年で3分野の支出が上回る計算だ。つまり、いったん消費税を引き上げると、すぐ次の税率アップが待っている。


 その一方で、政府の「新成長戦略」では法人税引き下げが明記された。福祉財源を消費税に頼る傾向が強まれば、税率は際限なく上がる恐れがある。


 ●家計圧迫は確実


 消費税引き上げが家計に与える衝撃は大きい。
 第一生命経済研究所の試算によると、夫・専業主婦・子ども2人の家族世帯では現行の5%で年平均18万円を負担しているが、10%になれば、負担は35万円とほぼ倍増。年収200万円台前半の世帯でも、負担額は年13万円から25万円に増え、月換算で約1万円の負担増だ。生活費を切り詰めて生活する人に重くのしかかる。


 同研究所は「家計発」不況の可能性を指摘する。 「消費の減少や、それに伴う企業の売り上げ減少で景気悪化を招く」――1997年4月に消費税が3%から5%に上がった直後、個人消費や民間投資が鈍り、景気悪化の一因となった前例もある。


 ■消費税10% 家計を大きく圧迫!(単位・万円)
  年 収  5%の負担 10%の負担 負担増
   ~250    13.1    25.0   11.9 
 250~300    11.2    21.5   10.3
 300~350    12.1    23.2   11.1
 350~400    14.0    26.7   12.7
 400~450    14.7    28.0   13.3
 450~500    14.6    27.9   13.3
 500~550    14.6    27.9   13.3
 550~600    16.4    31.3   14.9
 600~650    17.3    33.0   15.7
 650~700    18.9    36.0   17.1
 700~750    19.7    37.7   18.0
 750~800    19.5    37.3   17.8
 800~900    20.7    39.5   18.8
 900~1000    24.9    47.6   22.7
  平均     18.1    34.6   16.5
モデルは夫・専業主婦・子2人の4人家族世帯
 第一生命経済研究所が総務省・家計調査より作成


 ●軽減しても庶民いじめ


 首相も負担軽減策の必要を認め、その準備のために「引き上げ時期は早くても2、3年かかる」としている。軽減策の柱になりそうなのが「給付つき税額控除」。一定以上の所得の人に税額控除を行いつつ、所得税を免除されている人に現金を給付するものだ。


 民主党の玄葉政調会長は6月20日の講演で、給付額について触れた。生活必需品にかかる家計の費用を月5万円とし、そのうち消費税10%分の5000円、年間で計6万円を給付するとしている。


 しかし、家計調査で最も年収が低い352万円未満の層を見ても、1カ月の消費支出16万円のうち、食料や住居など生活必需品の相当分は12万円だ。「月5万円」という設定は実生活を十分見ていない。


 そもそも、国民の経済力が引き上げに耐えられるのかという根本的な課題もある。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、全世帯の61・5%が平均所得を下回り、その多くは400万円未満だ。軽減策を取ったとしても、安易な引き上げは「庶民いじめ」につながりかねない。


 ●国民の懐が管理される


 消費税引き上げは、国民のプライバシーをも脅かす。


 「給付つき税額控除」を設けるには、国が各世帯の所得を正確に把握しなければ公平性を保てない。そこで必要となるのが「国民共通番号制度」だ。これは、国民一人一人に番号を与えて、国が各人の税や社会保障の状況を管理するものだ。


 行政手続きを優先し、国民の懐具合を国に監視されることが社会にとって良いと言い切れるか。慎重な論議が必要だ。