労働局・労基署・ハローワークの都道府県移管は許されない -労働者の権利を破壊する地域主権改革 | すくらむ

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 ※働くもののいのちと健康を守る全国センターの理事会声明を紹介します。


 労働局・労基署・ハローワークの都道府県移管は許されない
 - 政府、知事会、財界の「地域主権」改革に反対する -


            2010年5月6日
            働くもののいのちと健康を守る全国センター理事会


 現在、国会では「地域主権戦略会議」の法制化や「国と地方の協議の場」法案などが審議入りしています。政府はこの法案の成立後の6月を目処に、国が自治体に使途を指定する「ひも付き補助金」や国の出先機関の整理統合などの方針を含めた「地域主権戦略大綱」を策定するとしています。これにあわせ政府や全国知事会で「地域主権」改革の論議が進んでいます。


 この狙いは①道州制の導入に向けた環境整備と位置付けること、②国から自治体への思い切った権限、財源、人員の移譲を図ること、③国による義務付け等を緩和し、自治体の政策に関する自己決定・自己責任の範囲を広げること、④規制改革や民間開放を徹底し、小さな政府をめざすこと等ですが、この内容はまさに日本経団連など財界の考え方であり、それに沿い民主党政府や全国知事会が議論を推進するという事態となっています。


 「地域主権」改革は、義務付け・枠付けの見直し、国の出先機関改革、基礎自治体への権限移譲、補助金の一括交付金化等多岐にわたりますが、この中で私たちに大いに関係あるのが国の出先機関改革です。


 全国知事会の「国の出先機関原則廃止プロジェクト」の中間報告(3月23日)は、国の出先機関である労働局、労働基準監督署、ハローワークの事務はすべて地方移譲すべきとしましたが、断じて許されない内容を持っています。ハローワークの担う無料職業紹介など勤労権の保障、労働基準監督署が担う最低労働条件の確保のための監督指導は国の重要な責務であり、働く者の人権を守る不可欠のセーフティネットとして、全国的なネットワークの下で効率的・機動的に実施されるべきものです。これは国が国民の勤労権を保障する憲法27条に違反し、日本も批准しているILO81号条約(労働監督)、88号条約(職業安定組織の構成に関する条約)に違反するものです。81号条約は「労働監督は、加盟国の行政上の慣行と両立しうる限り、中央機関の監督と管理の下に置かなければならない。監督官は、分限及び勤務条件について、身分の安定を保障され、政府の更迭と不当な外部からの影響に無関係である公務員でなければならない」とされています。またハローワークの都道府県移管は「職業安定組織は、国の機関の指揮監督の下にある職業安定機関の全国的体系で構成される」などとしたILO88号条約に違反します。厚生労働省の労働政策審議会さえ、憲法27条、ILO88号条約違反であることを指摘し、4月1日に全国知事会「国の出先機関原則廃止プロジェクト」中間報告に反対の意志を表明しました。


 都道府県に移管されれば知事の下に労働局、労基署、ハローワークが置かれ、労働働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償法、労働者派遣法、職業安定法等の履行確保のための監督指導の水準が地域ごとにバラバラになり、自治体ごとに制度が自由に改廃されます。雇用保険制度、労災保険制度を自治体ごとに運用するなら、労災認定の実務も都道府県ごとの労災財政に左右されたり、大幅な負担増に陥る自治体や破綻する自治体も現れるでしょう。また知事の下に置かれる労働基準監督官に対する反動的な知事や大企業からの圧力も強まります。まさに働くもののいのち、健康、権利を守る労働行政が根本から破壊されかねません。


 失業者が増え、長時間・過重労働に苦しむ働くものが増えている今日、政府、知事会は労働局などを含む「国の出先機関廃止」や、誤った方向での「地域主権」改革の検討をやめ、働くものの立場に立った人員増を含めた国の責任による労働行政の拡充こそ検討すべきです。


 私たちは働くもののいのちと健康、生活と権利を守るすべての労働組合、民主団体など諸勢力と連帯し、政府などがこの策動を断念するまでたたかうことを表明します。


 6月ごろを目途に政府の地域主権改革に関する「大綱」がまとめられますが、すべての加入団体は反対運動を強めましょう。総会などで決議をあげる、機関紙で取り上げる、宣伝物や署名用紙を活用して運動を広げる、労働局交渉にこの課題を取り上げ見解を正す、などにただちに行動に足を踏みだし、大きな反対運動としていきましょう。