派遣労働者の8割容認し使い捨て温存する政府法案 - 民主党は公約違反やめ派遣法の抜本改正を | すくらむ

すくらむ

国家公務員一般労働組合(国公一般)の仲間のブログ★国公一般は正規でも非正規でも、ひとりでも入れるユニオンです。

 昨日、労働者派遣法の抜本改正をめざす院内集会が、全労連、労働法制中央連絡会、自由法曹団の主催で行われました。院内集会での自由法曹団幹事長・鷲見賢一郎さんと、「派遣切り」され、三菱ふそうと裁判でたたかう首都圏青年ユニオン・鈴木重光さんの発言要旨を紹介します。(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)


 「改正」の名に値しない政府法案

  自由法曹団幹事長・鷲見賢一郎さん(弁護士)


 派遣法の抜本改正を求めるたたかいは、根本的には財界戦略とのたたかいです。財界戦略とは、日本経団連が打ち出している「雇用の柔軟化」などという名のもとの「労働者の非正規化」です。この「雇用の柔軟化」「労働者の非正規化」の中身は、企業が好き勝手にいつでも解雇できる使い捨て雇用の実現と、現在の正社員を含むすべての労働者の賃金を2分の1、3分の1に自由に切り下げることを可能にすることです。今回の派遣法抜本改正のたたかいは、そうした流れを許すかどうかの分かれ目となる大きなたたかいであると私は思っています。


 そもそも民主党は先の総選挙マニフェストで、「原則として製造現場への派遣を禁止する」「派遣労働者の雇用の安定を図る」「派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇原則を確立する」「期間制限を超えて派遣労働者を受け入れている場合などに、派遣労働者が派遣先に直接雇用を通告できる『直接雇用みなし制度』を創設する」などを明記していました。


 ところが今回、政府が閣議決定した法案は、事前面接の解禁は削除されましたが、自公政権時代の政府案を引き継いだ改悪部分も含む大きな抜け穴がある明らかなマニフェスト違反、公約違反です。政府の法案では、派遣労働者は救われませんし、改正の名に値しないものです。


 改悪部分は、雇用契約申込義務の撤廃です。法案は、「専門26業務」で3年を超えて働く派遣労働者に対する派遣先の雇用契約申込み義務を撤廃しています。これでは、派遣労働者は、派遣先の直接雇用に移行する道を閉ざされ、臨時的・一時的なものである労働者派遣が常用雇用を代替することを無制限に許すことになります。そもそも「専門26業務」は、パソコンなどを扱う「事務用機器操作」など専門業務と呼べないものになっている問題も抜本的な見直しが必要なのです。


 政府の法案は、登録型派遣と製造業派遣を原則禁止するとしていますが、大きな抜け穴が2つあるため、現在の派遣労働者の8割が容認され、これまでの「派遣切り」「派遣労働者の使い捨て」は温存されることになります。


 1つは、製造業派遣で常用雇用を容認していること。2つめは、登録型派遣で専門26業務を容認していることです。


 結局、政府の法案では、下の図のように実際には派遣労働者202万人の8割が容認され、派遣禁止となるのはわずか2割、44万人だけです。

すくらむ-派遣法


 さらに、法案にある「直接雇用みなし制度」では、違法派遣などで直接雇用されても労働条件が派遣労働者と同一とされており、これでは労働条件の格差もそのままだし、6カ月やそこらの有期契約の1回目で解雇されることにもなります。この点においても、民主党マニフェストの「派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇原則を確立する」の明らかな公約違反です。そもそも政府の法案には「均衡を考慮」するとしか書かれていません。


 また、登録型派遣を原則禁止するとして、一般業務への労働者派遣について、「常時雇用する労働者でない者について労働者派遣を行ってはならない」としている点も問題です。厚労省の労働者派遣関係業務取扱要領では、「常時雇用される者」、すなわち常用型派遣には、期間の定めなく雇用されている者の他に、短期雇用でも更新により1年を超えたり、1年を超えて雇用される見込みがあれば、常用型派遣になってしまうのです。結局、一般業務について有期労働者の派遣が許されることになり、労働者派遣契約の打ち切りと有期の雇い止めが連動する不安定雇用がはびこることになります。本来、一般業務については、期間の定めなく雇用されている労働者以外の労働者派遣は禁止すべきであるのに、この点でも抜け穴があるということです。


 上で紹介した図にもあるように、製造業派遣を原則禁止すると言っていますが、実際には製造業派遣労働者55万人の63%、35万人が容認されることになります。「原則禁止」される派遣労働者よりも「例外」として容認される派遣労働者の人数の方が多いという「改正」の名に値しない政府法案になっているのです。


 私自身、ホンダやいすゞ自動車を相手取った派遣労働者の裁判の弁護団にも参加していますが、いまの「派遣切り」の中でも製造業大企業がもっともやりたい放題です。08年10月以降に約25万人の非正規労働者が解雇されていますが、そのうち約6割が派遣労働者です。その派遣労働者のうち9割以上が製造業の派遣労働者なのです。「派遣切り」の9割以上を占める製造業派遣の6割以上を認める政府法案は容認できません。そもそも「例外」の方が6割以上も占めるという異常な政府法案ですが、例外なく製造業派遣は全面禁止する必要があります。


 こうした抜け穴だらけの政府法案は、閣議決定されてしまいましたが、まだ国会に提出されていません。いま全国で、派遣労働者の正社員化を求める裁判が多数おこなわれています。裁判の中で、「従事する業務は正社員と同一」「賃金は正社員の半分以下」「夜勤や労災の危険のある仕事を強制される」「何年働いても専門業務扱いで派遣社員のまま」など派遣労働者の過酷な労働実態が明らかになっています。派遣労働者は、正社員との均等待遇や正社員化を要求し、そのための労働者派遣法の抜本改正を願っています。派遣労働という働き方は例外とし、正規労働を基本とする抜本的な派遣法改正をめざしましょう。


 私は、政府の法案が容認する
 製造業の常用型派遣で「派遣切り」された
  首都圏青年ユニオン・鈴木重光さん


 私がいま望んでいることは、3つあります。


 1つは、製造業派遣の全面禁止です。2つめは、違法派遣の場合は期間の定めのない直接雇用とみなすということです。3つめは、派遣先の直接雇用の申し込みを撤廃しないことです。


 私は、三菱ふそうトラックバスで、登録型派遣でなく常用型派遣で働いていましたが、契約の中途で「派遣切り」されました。


 私は、三菱ふそうで4年間働いていましたが、その最後は今でもよく覚えています。私は、職場の敷地内にあるコンビニの中で、たった5分間の立ち話で解雇を言い渡されたのです。


 また、三菱ふそうで4年間同じ仕事を私はしていたのですが、所属する会社は4つも変わりました。「二重派遣」「偽装請負」「派遣」という形で変わっていったのですが、その都度、会社側からは働き続けたいのならこの選択肢しかないとされました。ですから、2つめの「違法派遣の場合は期間の定めのない直接雇用とみなす」というのはとても大事です。


 私が望んでいることは何も大それたことではありません。ただ、普通に働きたいということです。そのための法律をきちんとしてもらいたいということです。