内部留保トップ10企業へ申し入れ「内部留保のたった1%で各企業1万人以上の雇用増可能」 | すくらむ

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 全労連・国民春闘共闘は、「内部留保トップ10企業申し入れ行動」を実施しました。国公労連は申し入れ行動に結集するとともに、下表の内部留保トップ10企業の取り崩し試算を行っています。以下、国民春闘共闘のニュースから取り組み状況を紹介します。

すくらむ-内部留保トップ10



 全労連・国民春闘共闘委員会は、今春闘のとりくみの一環として、内部留保額トップ10の大企業に対し申し入れ行動を実施しました。日産自動車、ソニー、三菱東京UFJフィナンシャルグループ、本田技研工業、キヤノンの5社には、3月5日に申し入れを実施し、日本電信電話(NTT)、NTTドコモ、パナソニック、東京電力の4社は申し入れ自体を拒否しました。そして、3月9日には、トヨタ自動車に申し入れを行いました。


 各企業に対する申入書の内容は基本的に共通しており、ため込んだ内部留保を活用して、①労働者の雇用確保、労働条件の改善、品質管理や人権擁護などのCSR(企業の社会的責任)を果たすこと、②関連子会社や下請け各社に対し、下請代金法など法律を遵守し、適正な代金・単価を保障すること、③日本の大企業はEU諸国と比べても税・社会保障負担が低いことから、憲法の精神にもとづいて応分の負担をすることなどを求めています。


 内部留保額“ナンバーワン”のトヨタは利益優先をあらためよ


 3月9日、全労連・国民春闘共闘委員会は、内部留保額“ナンバーワン”のトヨタ自動車(東京本社)に申し入れを行い、トヨタ側は担当課長2人が対応しました。リコール問題で大揺れのトヨタは、申し入れは真摯に受け止める姿勢を示したものの、内部留保の社会的還元と自社の責任については態度を明確にしませんでした。


 要請団は冒頭、今回の申し入れの趣旨について説明。安全を最優先すべき企業の社会的責任が厳しく問われている中での要請であることを重く受けとめ、13兆4,026億円に上る内部留保の一部を活用し、期間従業員の正社員化、下請企業の経営と地域経済を守るよう要請しました。また、国際的な問題となっている大量リコールについて、「利益優先、安全軽視の結果ではないか」と追及しました。


 これに対しトヨタ側は、「ご心配をおかけしているが、もれなく回収し対応していく」「いかんせん赤字であり、厳しい状況が続いているが、全社一丸となって黒字化めざしてがんばっている」などと述べました。


 要請団は「非正規労働者への置き換えで熟練労働者を大事にせず、技術の伝承が十分されていないことが、製品の劣化などを招いたのではないか」と指摘。トヨタ側は「指摘や不安については承知している。製造業はどこでもそうだと思うが、いいものを安く作り、買っていただくというスタンスで活動している」などと答えました。


 トヨタが下請部品納品企業に対し一方的な単価切り下げなどを行っていること、すべてのしわ寄せが下請労働者に押しつけられている事実をあげ、公正な取引関係を確立するよう迫ったのに対しては、「社会的責任は企業の大小に関係なくある」「黒字化し税金を納めることで社会的責任は果たせる。黒字化に向けてがんばる」など、大企業として負うべき特別な責任については言及しませんでした。


 要請団は、赤字のときにも内部留保を取り崩して株主配当を続けながら、一方で「派遣切り」など労働者へしわ寄せすることは断じて許されないと厳しく追及。全教が2月に実施した「授業料・緊急ホットライン」では、授業料が払えず卒業できない子どもなど、胸を痛める事態が全国に広がっていることをあげ、「従業員へのしわ寄せは家族と子どもに及ぶ。内部留保を雇用確保のために使い、子どもの将来を守ることがトップ企業としての使命ではないか」と述べました。


 トヨタ側は、「(内部留保は)すべてが現金ではなく、工場や建物などの固定資産、設備投資に向ける部分もある」「考え方はいろいろあるだろう。子どもの問題は大変だと思うが…」と述べるにとどまりました。


 要請団は最後に、トヨタの経営のあり方は日本の“ものづくり”に大きな影響を及ぼすことを自覚し、申し入れ書の趣旨を受けとめ対応していくよう重ねて要請しました。


 ソニー「CSRは他社に引け取らない」


 3月5日、ソニーへの申し入れを実施。ソニー側は社員部労政企画グループの2名が対応しました。


 要請団は、ソニー側に申し入れ書を手渡したうえで、ソニーの内部留保額は国内第10位の3兆5,500億円に上ることを指摘。ソニーの正規従業員17万2,000人に対する月額1万円の賃上げに必要な額は約310億円、内部留保のわずか0.87%を取り崩すだけで実現できることを強調しました。


 また、内部留保の1%で、年収300万円の労働者1万2,000人の雇用増につながることなどを示し、応分の社会的責任を果たすよう求めました。


 ソニー側は、「申し入れをちょうだいし、社内で精査し適切な対応があればしていきたい」「CSRについては、他社に引けを取らない、業界ナンバーワンの企業としてとりくんでいきたい」などと述べました。


 また、今春闘での対応にかんしては、経営状況について「08、09年は相当厳しい状況で、現在回復途上にある」「春闘については、これから要求が出て協議となる」とのべるにとどまりました。


 このほか、中国やインドなどから研修の契約をし、仕事の希望があれば継続していること、「(男女差別につながる)総合職などのコース別人事はおこなっていない」「以前から学歴や性別にかかわりなく昇進するシステムを採用している」などと述べました。


 キヤノン「コメントできない」


 3月5日午前、キヤノンへの申し入れを実施。キヤノン側は人事課長が対応しました。


 要請団は、申し入れ書を手渡したうえで、キヤノンの内部留保額は国内第7位の4兆1,000億円に上ること、この内部留保の1%を取り崩すだけで、年収300万円の労働者1万3,000人以上の雇用増が可能になることなどを具体的に示し、経団連会長企業としての社会的責任をはたすよう求めました。


 これに対しキヤノン側は、「要請書そのものは確かに受け取りました。しかるべき経営陣にお渡しします」と述べ、申し入れ書の内容についてはコメントを避けました。


 要請団が、コメントできないのであれば文書回答をと求めたのに対しても、「回答するかどうかも含め検討する」など、いっさい口をつぐむという態度でした。


 ホンダ「税金で社会貢献する」


 3月5日、本田技研工業株式会社への申し入れを実施。ホンダ側は総務部が対応しました。


 冒頭、要請団が申入れの趣旨を説明し、「ホンダの内部留保額は国内第4位の7兆円。この1%を取り崩すだけで、2万3,000人もの雇用を生み出すことができる」「日本のリーディングカンパニーとして、イニシアチブをとってほしい」と訴えました。これに対しホンダ側は、「黒字を出して税金を納めることで社会貢献する」と述べるにとどまりました。


 要請団は、ホンダをはじめ、この間の企業業績の上方修正の要因としてエコ減税効果があることを指摘し、この点からも利益の社会的還元が求められると強調しました。また、下請中小零細企業に対し適正単価を保障し、単価たたきを行わないよう求めました。


 このほか要請団は、ホンダが増益予想の中、2011年度の採用について14年ぶりに600人を割り込む計画を発表したことなどをあげながら、「若年層はとくに雇用が深刻な状況だ。採用枠の拡大による社会貢献を」と訴えました。ホンダ側は、「海外生産比率がかなり高く、影響を受けやすい」「若年層に『車離れ』が進んでおり、販売でも苦心している」などと答えました。


 最後に要請団は、「日本を代表する企業として、CSR(企業の社会的責任)の観点に立って社会的還元をしてほしい」と再度強調し、要請行動を終えました。


 日産側は一切の回答を拒否


 3月5日、日産自動車に申し入れを実施。日産側は渉外部の担当者ら2名が対応しました。


 要請団は、日産自動車の内部留保額は国内第9位の3兆7,000億円に上ることを指摘。日産自動車の正規・非正規の従業員約17万人余りに対し、月額1万円の賃上げを行うのに必要な原資は約300億円で、内部留保のわずか0.81%にすぎないと強調しました。


 また、内部留保の1%を取り崩すだけで、年収300万円の労働者1万2300人の雇用増が可能になることを示し、内部留保の還元で庶民の懐を温め、景気の回復をはかるために、大企業としての責任を果たすよう求めました。


 これに対し日産側は、申し入れ書を受け取るのみで、一切の回答を拒否。申し入れの内容を社内で十分検討するよう求めたのに対しても、「扱いについてお答えできない」とのべるなど、不当な態度に終始しました。