枝野行政刷新相、大企業は「内部留保を切り崩すべき」(1年前の国会質問)-内部留保こそ「仕分け」を | すくらむ

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 行政刷新会議の枝野幸男担当大臣が、ちょうど1年前の国会で、大企業製造業は派遣切りの前に「内部留保を切り崩すべき」と政府に迫るすばらしい質問をしています。その上、国会に日本経団連の御手洗会長を呼んで、直接問いただしたいとまで発言しています。枝野行政刷新相には、この1年前の自分の質問をぜひ思い出してもらって、「第2弾の事業仕分け」のターゲットを、大企業の内部留保にさだめ、真の“埋蔵金”を掘り当ててもらいたいと思います。(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)


 ▼2009年1月9日 第171回国会 衆議院予算委員会の枝野幸男委員の質問議事録より内部留保に関する部分を抜粋


 枝野委員 今の現状において、今派遣を切っている、請負を切っている大手企業の、もちろん企業によっていろいろ、強いところ、弱いところありますが、多くの部分のところが、今派遣を切る、雇用を切る、こんなことをする立場にあるのか、しなきゃならない状況にあるのか。その大前提を御理解されていないのか、それともそこにおもねっているのかわかりませんが、その話を指摘したいと思います。


 法人企業統計を担当しているのは財務大臣ですので、財務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、大企業製造業の2001年、2002年における配当金、つまり日本の大企業製造業、10億円以上の大企業の製造業トータルの数字です。個社は出してくれませんからトータルで結構ですので、その2001年、2002年の配当はそれぞれトータルで幾らしているか、お答えください。


 中川国務大臣 2001年が1兆7,376億円、2002年が2兆2,805億円でございます。


 枝野委員 では、直近2年間、2006年、2007年の配当金は幾らですか。


 中川国務大臣 2006年の配当金が7兆2,529億円、2007年が5兆6,690億円でございます。


 枝野委員 数字でお聞きになっている方はわかりにくいと思いますが、2倍以上に株主には配当をふやしているんですね。


 では、利益剰余金。利益剰余金というのは、企業に残って積み立てられている、企業の中に資本金があって、資本剰余金があって、それ以外にいつでも取り崩せる積立金ですね。いわゆる内部留保と言われている部分ですね。この利益剰余金、同じように2001年、2002年、大企業製造業トータルで幾らですか。


 中川国務大臣 利益剰余金の2001年が56兆1,699億円、2002年の利益剰余金が55兆973億円でございます。


 枝野委員 では、これは2006年、2007年でどうなっていますか。


 中川国務大臣 2006年の利益剰余金が74兆4,304億円、2007年の利益剰余金が76兆3,640億円でございます。


 枝野委員 これも20兆ですか、増えているんですね。


 この間、大企業製造業で従業員の賞与、給与、これはもう私の方から申し上げましょう。2001年は21兆7,000億円余り、2002年は20兆3,000億円余り。これに対して、2006年、20兆9,000億円余り、2007年、21兆3,000億円余り。つまり、これだけ株主にはばんばん配当する金があり、それでも余って社内に積み立てた金が20兆もトータルでふえたのに、従業員の給与、賞与はほとんど増えていないんですよ。


 この利益をもたらしたのはだれですか。この間、確かに、経常利益はべらぼうに増やしました。当期純利益もべらぼうに増やしました。2001年などはマイナスですよ。それが10兆もの当期純利益プラスになっていますよ、直近では。もうかりましたよ。そのもうけを生み出したのはだれですか、総理。


 麻生内閣総理大臣 生み出したのはだれか。それは社員みんなであるでしょうし、それは企業によって事情がそれぞれ違うと思いますので、一概には答えられないと存じます。


 枝野委員 そうなんです。株を持って売買していただけの株主だけでこんなことにはならないです。もちろん、株主が資金を出してくれているから、株式会社、資本主義が成り立つ、そのことは否定しませんよ。会社の経営者も、正しい経営判断をしたからもうかっているところはもうかっているので、正しい判断をしなかったところは、つぶれているところはこの間だってあるわけですから。


 だけれども、従業員が一生懸命しっかりと働いて国際競争力のある物づくりをしなければ、製造業はこんな利益を上げられてないわけですよ。にもかかわらず……(発言する者あり)社員株主どうなるんだって、派遣社員なんて社員株主になんかなっていますか。請負が社員株主になんかなっていますか。正社員のごく一部じゃないですか、社員株主になれている従業員だなんというのは。


 その人たちのところは全くワーキングプアの状態で、不安定な状況にしておいて、配当金だけは2倍以上にふやして、利益剰余金も20兆もため込んで、さあ景気が悪くなったから、ばっさり、あしたから来ないでください、住むところもなくて、どこへ行ってもいいですよ、これが矜持のある経営者のやることだと思いますか、総理。


 与謝野国務大臣 枝野議員が御指摘のように、一時期、会社は株主のものであるという、私にはとても理解できないような思想が広がりました。やはり、会社というのは従業員のものであり、下請のものであり、お客様のものであり、株主だけのものではない、私はそういつも思っておりました。


 この10年間の傾向というのは、労働分配率が下がってきた。1つの傾向。それから、配当性向が高くなってきた、内部留保が高くなってきたということで、人を安く使おうという傾向が企業に見られるというのは大変残念なことであって、そういう中で、非正規社員と正規社員が同一労働を同一現場でやりながら、容認できないような格差が生じているということは、やはり政治としては正義の問題としてこの問題を取り上げなければならない、そのように思っております。


 ましてや、何兆円にも及ぶ内部留保を持っているところが時給千円足らずの方の職を簡単に奪うということは本当に正しいのかということは、当然のこととしてあるわけでございます。


 枝野委員 だったらやらせてくださいよ。皆さんのカウンターである日本経団連の会長企業が率先して首切りしているんですよ、事実上の。


 企業によって状況が違う、そのとおりです。企業によって状況が違うので、だからあえて、日本経団連会長、財界のトップで、そこの発言がワークシェアリングと言えば新聞に載る、そういう影響力の大きい人ですよ。しかも、ついこの間まで、皆さんの政府の、自民党政府の経済財政諮問会議の議員ですよ。経済政策の決定をする最もある意味では権威ある機関のメンバーだったんですよ。そうですよね、経済財政諮問会議というのは。


 ここは個社で見ると、2003年から2007年の5年間で、キヤノンは売上高43%増加。頑張ってたくさん物をつくったんです。その結果、経常利益は72%増加。72%のうち、売上高との差額部分は、経営努力であったりとか経営者の努力とかいろいろなものがあるかもしれません。配当は4.6倍ですよ。もうけは72%しか伸びていないのに、配当は4.6倍ですよ。


 そして、2007年末、直近の財務諸表に基づいてはじき出すと、内部留保、利益剰余金は1.8兆です。ちなみに、キヤノンの従業員給与、賞与は大体トータルで2,000億円ぐらいですから、9年分ぐらいの賃金を、ただ賃金を払い続けるだけでも、これは利益剰余金ですからね、お聞きになっている、テレビを見ていらっしゃる方はおわかりにならないかもしれませんが。資本金があって、資本準備金、資本剰余金などがあって、その上のまさにもうけをとりあえずため込んでいる金が1.9兆あって、従業員に対する給与、賞与をトータルしたって2,000億円しか年間に使っていないんです。当然のことながら、まず内部留保を切り崩すべきじゃないですか、派遣を切る前に、請負を切る前に。


 それが、この間こんなにべらぼうにもうけてきたのは、先ほど来厚生労働大臣とやり合ったとおり、ワーキングプアの派遣や請負を便利に使ってきた、そのおかげで労働分配率が下がって、労働分配率を下げて、その分もうけをたくさんつくって、こんなにため込んできたんじゃないですか。それをまず吐き出すのが、少なくともこんなに利益剰余金を抱えている会社、ずっと雇い続けろなんて言いませんよ。少なくとも、寮に住んでいて、派遣を切られたらあしたから住むところがないという人たちがたくさんいるんですよ。


 こういう人たちの生活を、本当は、この間に政治がきちっとセーフティーネットをつくっておく。こんな人たちが、切られたらすぐに住むところもなく、それから生活保護もすぐにもらえず、雇用保険もなくだなんという、こんな状況を放置してきた政治の責任もあるけれども、こんな経営を放置してきたのも政治の責任です。政治の責任で何とかさせるべきじゃないですか、総理。


 麻生内閣総理大臣 これは、今言われましたように、先ほど与謝野大臣からも言われたと思いますが、企業のいわゆる生産活動によって得られた価値、付加価値というものをどのように分配するかというのは、基本的には個々の企業において判断をする、これは、まず間違いなく自由主義のルールにおいてはそうされるべきだと思っております。


 ただ、一般論的に申し上げさせていただいて、いわゆる自律的な内需拡大というものを図っていくためには、これは、働く人、いわゆる労働者の手当てというものを厚くしないと消費は伸びていかない、基本的にはそうだと思っております。


 今、労働分配率の話というのは、30年前、私ども社長をしたころに比べても10%以上下がっているなと思って、何年か前に申し込んだことがあります。その大きな理由は、非正規雇用という方々のパーセントの方が伸びているということが大きな理由の一つだ、私自身もそのように思っております。


 したがって、パートタイムや非正規労働、労働者派遣法に基づくいろいろな非正規労働者の待遇の改善というもの、また、最低賃金法に基づきますいわゆる最低賃金の確保などというのを行っていくということが今後とも効果的な対策であると思います。


 ただ、よく労働分配率の話をされる方がいらっしゃいますけれども、この労働分配率というのは、枝野先生よく御存じのように、不況期になりますと、これは当然のこと利益が減りますので、労働分配率は逆に上がることになります。その意味では、今、こういう不況期になったからといって労働分配率を上げたというような手法にはひっかからないように我々はしておかにゃいかぬ。大事なところだと思っております。


 その意味で、十分配慮した上で、こういったような経営者の姿勢というものに関しましては、これは個々の企業の経営者の姿勢の問題でもあろうと存じますけれども、極めて大事な、みんなして一緒にやっていくという会社全体のいわゆる一体化、そういったものが企業の中においての企業の文化としてどのように育っていくか。これは、今後の企業にとっても日本の産業界にとっても大きな問題だと思います。


 枝野委員 1点だけ指摘をしておきたいと思います。労働分配率の話が出てきていますが、労働分配率が下がったのは大企業だけなんですね。中小零細企業は、この景気がいいと言われていた期間にむしろ労働分配率は上がっている。まさに大企業は、労働者に対してだけではなくて、下請、孫請などの取引先関係の中小零細との関係においても同じようなことをやってきて、結果的に、でも、中小零細は、頑張って何とか雇用を抱えなきゃならないということで、労働分配率をむしろ上げる方向にこの間努力をしてきているんです


 まさに、日本の大企業経営者の、全部とは言いません、立派な人もいるんでしょう、そのまさに矜持の問題ですよ、プライドの問題ですよ、モラルの問題ですよ。モラルでだめならば制度でやらせるしかない、内部留保を少し吐き出せと、配当よりも労働分配にしろ。モラルがだめだったらば制度でやるしかありません。


 いずれにしても、これは一種の欠席裁判に今なっていますので、これは、私、2年越しです、御手洗さんには、今の偽装請負の件を初め、労働分配の問題を初めとして、ぜひ直接話を聞かせていただきたい。ついこの間まで政府の一員だったんですから、経済財政諮問会議の議員という。当然、ここに出てきて、私と今の議論をさせていただきたい。委員長、よろしくお願いいたします。