解雇・退職強要、賃金・残業未払い43.8%、昨年比27.9%増の29,057件(09年労働相談) | すくらむ

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 ※全労連の昨年1年間の労働相談活動のまとめを紹介します。


 解雇・退職強要、賃金・残業未払い43.8%
 昨年比27.9%増の29,057件
 東京・愛知・大阪で32.8%
 ―2009年労働相談活動のまとめ―

                          2010年2月23日現在
                          全労連・組織(局)


 1.全労連の労働相談活動の概要


 (1)大企業の「派遣・期間工」切りで激増する相談


 全労連に寄せられた新規の労働相談件数は、2001年から2006年までは1万件余りで推移していたが、07年18,829(前年比41.5%増)、08年22,526件(同19.6%増)、09年29,057件(同27.9%増)と、この3年間急激に増加している。


 相談件数の急増の背景には、不況の長期化とリーマンショック後の大企業を先頭とするリストラ・減量経営がある。同時に政府・財界の正規から非正規への置き換え、製造業派遣の解禁、「雇用と賃金破壊」によって3人に1人が非正規労働者となり、年収200万円以下のワーキングプァーと言われる貧困層が1067万人を超えるなど「貧困と格差」がかつてなく深刻化している状況を反映している。


 とくに、08年9月のアメリカ発金融危機を基点にした世界的な景気後退が広がり、日本のトヨタ、日産、キャノン、ソニーなどの製造大企業を中心とした、派遣・期間工の解雇・雇止めが強行された11月から急増し、09年3月には月別としては過去最高の3,404件の相談が寄せられた。この時期は製造大企業の派遣・期間工切りの解雇・雇止めや、下請企業での退職強要、賃金未払いなどの相談が激増し、非正規労働者からの相談が初めて正規の相談を上回った。


 いまや、製造業だけでなく中小企業を含め全産業分野にわたって解雇や賃金切り下げなどの攻撃が強まっている。その矛先は派遣などの非正規労働者から正規労働者、30代、40代の働き盛り世代に広がろうとしている。全労連はこうした厳しい雇用労働環境を改善するために、「攻勢的な相談活動」を展開し、「相談から組織化」の方針で取り組みを進めている。


 2.相談活動の内容分析


 以下、「不明」を除いた分析集計。( )内は前年の数字。


 (1)昨年は年間3万件近い相談


 2009年1月から12月までの労働相談件数は、47地方組織からの報告によると29,057件で前年より6,338件(3,697件)増加した。これは全労連が組織的に集計をはじめた1998年から12年目にして初めて3万件にせまる相談件数となった。なお、継続相談件数は4,529件(2,922件)で、新規の29,057件を合わせると、実際には33,586件の相談を受付けたことになる。


 相談件数の上位7地方は、東京4,283件(2,448件)、大阪3,119件(2,795件)、愛知2,124件(1,780件)、千葉1,474件(1,018件)、福岡1,251件(877件)、神奈川1,215件(1,215件)、兵庫1,014件(782件)であった。この7地方だけで全体の相談件数の49.8%を占めており、労働相談は東京、名古屋、大阪、福岡の大都市圏に集中している。


 09年の月別の相談件数は、2.3月が3,000件台、8.9.10月が1,000件台、それ以外の月が2,000件台となり、月平均相談件数は2,421件(1,877件)となっている。ちなみに08年の月別相談件数では12月が過去最高の2,758件であったが、09年はこれを2.3.4月で上回った。


 (2)相談者の性別・・・男性55.5%、女性41.5%


 相談者の性別は、男性57.2%(53.1%)、女性42.8%(46.9%)となっており、女性より男性の方が14.4ポイント(6.2%)多くなり、前年より男性が4.1%増え、女性が4,1%減ったことが特徴である。


 (3)相談者の年代・・・最多は30代、40.50代が増加


 年代別では30代29.9%(31.6%)、40代24.9%(22.7%)、50代18.8%(16.5%)、20代18.7%(22.7%)となっている。これを前年と比べると、20代4.0%減、30代1.7%減、40代2.2%増、50代2.3%増となって、相談者の年代が昨年の20.30台から40.50台に僅かであるがシフトしていることを窺わせる結果となった。


 (4)雇用形態・・・正社員が53.2%、非正規が46.8%


 雇用形態では、「正社員」が53.2%(52.9%)、「パート・契約・アルバイト」が22.3%(23.5%)、「派遣・請負」12.4.(14.0%)、「その他」7.4%(7.6%)、「臨時・嘱託」3.4%(3.3%)となった。対前年比では、正社員と非正社員でも、非正社員の内訳でも大きな変化がないものの、相変わらず正社員からの相談が過半数以上を占め、「派遣・請負」が1.6ポイント減ったことが特徴である。


 (5)相談者の事業所規模・・・30人未満が5割、100人未満は約8割


 事業所規模では、30人未満51.8%(55.7%)、30~99人未満22.9%(22.9%)、100~299人未満12.7%(10.9%)、300~999人未満8.4%(4.5%)、1000人以上4.4%(6.0%)となった。特徴としては、30人未満と1000人以上が減り、300~999人未満の中堅企業からの相談が増えたことである。「100人未満」は昨年の78.6%から74.7%と3.9%減ったが、相変わらず中小零細企業からの相談が4分の3を占めている。


 (6)相談内容(複数回答)・・・最多は解雇、次に賃金・残業未払い


 相談内容を多い順にみると、解雇19.4%(16.5%)、賃金・残業未払い17.4%(18.0%)、退職強要・勧奨7.0%(6.0%)、労働時間・休暇6.8%(7.8%)、労働条件切り下げ6.8%(5.2%)、セクハラ・いじめ6.4%(6.6%)、労働契約違反5.4%(6.3%)などである。昨年より、解雇、退職強要・勧奨、労働条件切り下げが増え、労働時間・休暇、労働契約違反が減っているが、解雇・退職強要・勧奨にかかわる相談が前年より3.9%も増え26.4%となり、雇用問題が深刻化していることを裏付けている。


 (7)相談の契機・・・ホームページが初めて半数を超す


 相談の契機は、ホームページ・メール50.2%(48.9%)で最も多く、次いで団体・知人の紹介17.1%(15.4%)、電話帳が13.1%(19.6%)、マスコミ8.6%(5.5%)、その他6.4%(6.4%)となった。前年よりホームページ・メールが増え初めて5割を超えたことと、団体・知人の紹介が1.7%増え、電話帳6.5%減ったことが特徴である。インターネットの普及により今後も「ホームページ・メール」をツールとした相談が増えることは明らかであり、いっそうの充実が望まれる。


 (8)相談結果・・・電話と面談で6割近く解決


 相談の結果は、電話・メールで一応解決50.1%(62.7%)、相談を継続16.8%(16.9%)、単産などへの紹介16.2%(7.6%)、面談で一応解決が7.9%(8.3%)となった。前年との比較では、電話・メールで一応解決が12.6%減り、電話・メール・面談を合わせた解決率は58.0%(71.0%)で昨年より7.1%減り、単産の紹介が8.6%増えた。単産などへの紹介が増えたことは問題解決の複雑化と「組織化」への意識的な取り組みの現われである。


 (9)組合加入3,294人、支部分会確立は78件


 昨年1年間の相談活動を通じて新たに労働組合に加入した人は3,294人で、前年の2,015人を1,279人、63.5%も上回った。相談件数比の労働組合加入率は11.2%(11.3%)で、過去3年間一割台を維持しており、相談件数の増加が労働組合加入者増とリンクしていることを示した。


 労働相談から労組加入に結び付けたのは44地方で、100人以上の加入者を迎えたのは、大阪429人(339人)、静岡374人(126人) 千葉182人(52人)、神奈川126人(162人)、群馬121人(26人)、長野114人(89人)、山口113人(78人)などで、これらの地方では派遣切りからの組織化が多い。


 労働相談の解決のためには、電話やメールでの相談を面談または単産紹介、あるいはローカルユニオンへと繋げ、解雇や賃金未払いなどを労組結成・加入により団体交渉で解決するのが最善の方法である。全労連の相談活動の基本は、相談者の苦難に正面から立ち向かい、労基法を始めとした労働法諸規を企業経営者に厳守させることにあるが、そのためには法的なアドバイスに止まらず、労働相談を組織化に繋げ労働組合として問題解決をはかる立場に徹することにあり、その努力が実を結びつつある。


 3.労働相談専用フリーダイヤル(0120-378-060)の活用状況


 全労連は、2005年以来、労働相談専用のフリーダイヤルを開設し、全国の専任相談員を配置しての常設労働相談センターで本格的に労働相談を受ける体制を確立してきた。昨年フリーダイヤルにかかった電話は67,058件(前年は40,748件)で、実際に着信・通話できたのは33,492件(21,094件)、49.9%(51.8%)である。


 今後、常設相談体制の充実強化を前提としつつ、全労連と加盟単産・地方・地域組織が発行・作成する全ての宣伝物に労働相談専用フリーダイヤル(0120-378-060)を宣伝掲載し、全労連のすべての労働者の苦難と悩みに応え、一緒に解決する存在と役割を広げる必要がある。


 なお、相談者の多くが、問題発生後に相談してくるため、個別事案であっても出来る限り問題が発生する前に相談を受けられるよう、全労連がすべての労働者・国民の立場に立ってたたかう姿を具体的な運動として広げる必要がある。